64話 基本は箱作りから。
さて、これからマッターホルン内には自分の自宅を。壁の南側には村を作ることになるわけだ。
とはいえ、南側の村は基本的にドラゴンスレイヤー様の管轄。名前も好きに決めてもらって良いと伝えた。
なんか、何でも俺に聞いてくるのは、ヒグマから何か言われているんだろうか?
俺としては、敷地の玄関口に派出所ができたくらいの感覚なのだが。
何しろドラゴンスレイヤーの詰め所だ。安心感が段違い。
とはいえ、未開の森の中に村を作れと放り出すのも可哀想だ。
これからはお隣さんになるわけだしな。ここは協力してご近所付き合いを良好にしておこう。
といっても大したことをするわけでもない。
ある程度の広さの地面を平らに整地。
そこに生えていた木々は石化して収納。
最初に洞窟を抜けた瞬間に、いち早くそれを済ませている。
土魔法で洞窟を補強しながら進むから、と言って一人で先行したのが功を奏したな。
「……こんな森の中に、これ程の立地があったとは……」
まあ、ラッキーと思ってくれ、ドラスレ君。
「じゃ、平地を囲む形で壁だけ作っておくな。土魔法で。高さは5mくらいでいいか?」
城壁ってわけでもないし、あまり高いと作物の栽培に困るしな。
「……はい、それでお願いします……」
ドラスレ君は遠い目をしている。まあ、これから作ってゆく自分の領土に想いを馳せているんだろう。解るよ、その気持ち。
俺が同じ事をやってもボーッとしてるだけにしか見られないだろうが。本当に美形は得だ。
細かいところは後で好きにしてもらうとして、人が通行できるくらいの幅と落下防止の側壁込みで石壁を作ってゆく。
ストーンウォールの応用だな。
俺の場合は結局大地変容の神通力でしかない訳だが。
南側に馬車が通れるくらいの開口部。
そこからまっすぐ南へ向けて道を作る。
道はただ真っ直ぐ伸ばすだけで、ファーレンと港町ウィステラソンを繋ぐ街道のどこかに繋がることになる。
せっかくなので、地平線が見えるくらいの真っ直ぐな道を作ってやろう。
いいよね、どこまでも直線で続いてゆく道。それだけで絶景だよ。
塀の中での生活環境を先に整えてくれ、と伝えて、俺は一人で街道整備に行く。
「出でよ、マイ・カー!」
収納から出したマイ・カーに乗り、南へ向けて出発。
坂は削り、谷は埋め、立ち塞がる木は根ごと掘り出し石化収納。
地面は中央を膨らませる形で、雨が降っても水が溜まらないように。
神の力だよ、これが。
これだけ平坦な道なら、文字通り馬力の無いマイ・カーでも快適に走ることが出来るな。この世界には走り屋さんなんていないし。




