61話 帰還しました。
さらに海を飛ぶこと二日。ファーレンへと戻ってきました。
ニーナは例のごとく、途中で降りて山へ帰っていった。空中発着できるように何か作った方が良いだろうか?
いや、ドラゴンの姿で来られたら落ちるな、さすがに。天井から出入りできるハッチくらいか。
「帰ったぞー」
宿に戻って、マスターに一声。まあ、この宿が満室になったことなんて、件の冒険者帰還騒ぎの時くらいだと思うけど、いつもの部屋は空いてるだろうか?
「ちょっと、遅いんじゃないかい?」
出迎えには、シンディ達が4人とも揃ってました。
あれぇ? ちゃんと予定通りだった気が? 裏大陸の方が海越え込みで4日に短縮できたから、ちょうど10日のはず?
ああ、そうか。西に回ったから体感が10日でも実際は11日なのか。忘れてた。
「ああ、まあ誤差?」
「それでも、心配はするんですからね」
アイリスの怒った顔は、なにげに初めて見るだろうか。それをいうとシンディもだが。
ユキとエレメアはいつも怒ってる。
「大丈夫だ。ちゃんと収穫はあったぞ」
4人分のカップを取り出す。こんなこともあろうかと石化解除済みだ。
さあ、外大陸直輸入のココア擬きを食らうが良い。
一緒に肉丼も出してやろう。茶碗サイズしか残ってないが。
百言は一食にしかず。全員機嫌が直って良かった。
「それで、地図を作りに行ってたんじゃなかったのかい?」
そう言ってシンディが場を仕切り直す。
ほっぺたにはココアが付いている。
飲み終わったあと、カップを暫く舐めてたの見たぞ。
「うん? ああ、そっちもちゃんとできたぞ」
「そうかい、じゃあこれ」
そう言って、シンディから大きな紙を渡される。
何枚も持ってるのかな、この紙。
とりあえず、2枚受け取ってマイ・研究所へ。
テーブルを作ったら紙を広げて世界儀を取り出す。
「わあ、なんか色がついて全体が埋まってますね」
アイリスは世界儀の見方を理解してるのかな? 地動説に目覚めてしまうと面倒になりそうなんだが。
さて、で、地図の書き方をどうするか、だが。2枚に分けることにした。
両方に大きな正円を描いて、それを星の半球に見立てる。
ジェル島を東西の中心にして、南北極点を上下にする形でジェル島と表海、外周大陸を描く。円の外周が大陸に囲まれる感じになるな。
もう一枚には裏海と裏大陸を同様に描いた。
「何で二枚になるんだい? 円の端っこはどこまで続いてるんだい、これ」
シンディは地図の見方で惑っているようだ。
「円の端がもう一枚の地図に続くんだよ。裏世界、的な?」
なんかこの言い方だと地下に魔界でもあるみたいに聞こえるかなぁ?
「裏世界ですって?」
エレメアも難しい顔してるな。
「この大陸は地図だと何処になるんだい?」
「ん? ああ、ここだな」
一枚目の地図の中央上寄りの島を指差す。
「この、小さいのが? ……」
初めて地球儀で日本を見たとき、そんな感じになるよね。懐かしいなあ。
「周りはずっと海なんですね。一番近いのが北側ですか」
「陸続きになってない島は描けてないからな。飛び飛びの島になってたら見た目繋がるところも在るかもしれないな」
今回目視で確認したのは、あくまで東西一周分だ。島がたくさん集まっているところとかがあっても記載できていない。
ジェル島の北の半島とか、島で外周大陸まで繋がってそうな雰囲気有るんだよな。
エルフの魔法だかでおかしくなるから、あの辺り飛びたくないけど。
「まさか、こんなものが飛び出てくるとはね……」
「外の土地は全部森なの?」
獣人としては、そういうのが気になるのかな?
「今回見てきたのは、西の方にずっとまっすぐの範囲だけだよ」
ジェル島から左方向へまっすぐ指差す。
「で、ここの辺りは森だった。ココアの原料が採れたのもこの辺」
というと、4人とも目の色を変えて注視する。まだ説明途中だから下がりなさい。
「そのまま、西に行って」
で、二枚目の地図を指し示す。
「こっちの大陸は広い草原って感じだったな」
裏大陸の方を指す。
「でもって、さらに西に行って」
一枚目の地図に戻る。
「この辺はまた森だったぞ。ここに米があった」
東の外周大陸を指す。
「……外の大陸は美味い食い物の宝庫ってことかい……」
あれ、なんか間違ったイメージ伝えちゃっただろうか?




