58話 外大陸情勢。
「外の大陸で、危ない事とかはないか?」
ニーナに一応聞いておく。
ドラゴンにとっても危険な所があるなら、赤で表記しておこう。赤い石って何だろう? ルビー?
「人族からすれば危険な生き物だらけじゃろ」
やっぱ、そんな感じか。
「広い場所には何かしら地域をまとめる存在が居るものよ。強ければ大抵会話は可能じゃ。お主なら話もできよう」
まあ、自動翻訳さんは優秀みたいだしな。
獣人の身振り言葉とかだと無理だけど。
「もっとも、会話が可能であることと、話が通じるかどうかは別問題じゃがの」
と言って笑う。
あーね。そういう問題もあるよね。
「このまま真っ直ぐ西に行くのに、危ない相手とかいる?」
取りあえず、目下の重要情報だな。
「ふむ、世界儀とやらを見せよ」
俺の手から世界儀を奪って行く。
なんか、気に入ったっぽいな。
「北と南は通らぬし、四方の大陸ともずれた位置を通ることになるのう。ならば、この先の海にある大陸くらいじゃな」
裏海の大陸か。そこが危ないと?
「まあ、今回は妾が一緒じゃ。向こうから手は出してこんじゃろう」
「おお、さすがドラゴン。さすドラ」
一人で来てたら実は危なかったのか。
「うむうむ、妾の有り難みが解ったのであれば、存分にもてなすが良いぞ」
まあ、そんなわけで、事前に用意した屋台飯も想定外に消費されているわけで。
安全には代えられないか。酒も石化収納には樽で持って来たのになぁ、ずいぶん減っている。
ここらで、一旦予定を見返そうか。
現在地が外周の北西大陸南部。此処まで二日かかっている。中継地に使った島や、途中で見かけた島も目算で世界儀に記載済みだ。
明日、反対側の海岸まで飛んで一泊。
その翌日に裏海の大陸が見つかるかどうかだけれど、ここでも二日かかると仮定。
裏大陸を確認したら対岸まで一日。
さらに二日で南東大陸北部に到着。南東大陸は縦に長く、赤道を越えているので今回の経路だと北東大陸よりも近くなる。
ここでも、一日で対岸まで移動。
そこからジェル島まで二日。
合計11日、か。
書き置きの日数は越えてしまうが、まあ誤差だな。
食料は余裕を持って来たけれど、屋台で買った分が大分減ったので、明日からは肉多めで行かないといけなさそうだ。
できれば現地調達も視野に入れるか? 収穫に時間が取られたのでは本末転倒だが、夜営の準備をしたあとに余裕があるなら探してみても良い。
「なあ、食べられる植物とかどんなのがあるか知らないか?」
「ぬ? 人族の食べ物かや?」
食べ物の話題には食いつくなぁ。
「どんなものが食えるのじゃ? 生憎と妾は自分では肉くらいしか捕らぬでな」
「そうだなぁ。ファーレンで手に入りにくいものと言うと……」
まずは米だな。秋になると粒状の実をつけて穂が垂れる穀物と言えば通じるだろうか?
次に味噌だが、大豆は見かけなかったけれど豆はあった。種類は違うにしてもそっちで味噌は作れるんじゃないかと思う。とりあえず、他の豆と大豆を区別して説明する自信がないので置いておこう。醤油も一緒だな。
鰹節は、魚があるから似たようなものは作れるのだろうけれど、作り方までは判らない。帝国あたりで作ってないだろうか? 昆布はあるみたいだし。
卵や肉類、牛乳っぽいものに葉野菜、根菜の類はファーレンでも買えるんだよな。もちろん小麦も。
あとは砂糖だな。甘味は果物、蜂蜜に樹液がメインだった。あと魔獣からとれるという何か良く判らないもの。
サトウキビがあったら持って帰って栽培するのも良いかもしれない。齧ると甘い太めの植物、とかで通じるかな?
砂糖、小麦粉、卵、牛乳が揃えば菓子類の幅が広がるね。
菓子類と言えば、あとは小豆とカカオがあると最強だな。
小豆は赤い豆で探せるか? まあ、小豆以外でも豆なら餡は作れるか。
カカオだと苦くてでかい実としか説明できないな。
香辛料は一応流通しているし、宿の味も悪くないが、生姜とか大蒜、山葵までは見てなかった。
香辛料の類いはどんな木にどんな実がなるかも知らない。種や根の類いを片端から味見するしか無さそうだ。カレーは遠いな。
あとは、果物関係も種類を揃えたいんだよな。桃、柿、蜜柑は欲しい。
「ほお、なにやら美味そうな思考が伝わってくるの。食べたことのない味を想像しておるではないか」
ニーナさん、よだれ垂れてますよ。
指摘されて、湯舟に顔を半分沈めて誤魔化した。
「お主の思考からイメージは伝わったぞ。妾の方でも探しておいてやろう。見つけた暁にはそなたが料理を作って振る舞うが良いぞ」
ああ、なんか食材を探して飛び回る黒竜が世界中で目撃される未来が目に浮かんだよ。
俺、作れるなんて言ってないのにな。
まあ、なんちゃってで作って、あとは本職の料理人に任せるか。シンディやマスター辺りに伝もあるだろう。




