5話 もっと神通力を使ってみよう。
さて、とりあえず身を守る術はなんとかなりそうだ。
他の神通力も試してみよう。
次は、大地収容、だな。
収容ということは、まさかこれは収納スキルということだろうか? アイテムボックスやストレージは異世界チートの定番だ。
手に持っていた石の弾丸に大地収容と念じる。
石の弾丸は手のひらから地面へと転がり落ちた。
「おっと。あれ、どこにいった?」
落ちたはずの石がどこにも見つからない。変なところに転がっていったのだろうか?
いや、脳裏に石つぶてが一つある、と判る。これはなんかストレージっぽい。
「石つぶてを出す」
声に出た。そうするとさっき持っていた石の弾丸が地面に現れた。地面の中に埋まるように収納されるようだ。
「収納。出す。収納。出す」
念じるのにあわせて、石は地面に沈むように消えたり、出てきたりする。
「これが大地収容か」
ストレージ能力ならマジ便利だが。
「収納」
今度は木の棒を収納してみる。
「やっぱな。うん、わかってた」
木の棒は収納されることはなかった。どうやら石でないと収納できないらしい。
「どっかで石たくさん拾っていくか。投げてもいいだろうし。川原でも見つかるといいな」
新しい目的ができた。
「さて、最後は大地知覚、か」
地面に手を当てて大地知覚、と念じる。
今までも別に手を付ける必要はなく、立っているだけでも神通力は使えているが、まあ気分だ。
力を発動すると、地面が土であることが判る。
「いや、それは見れば判るよ」
これもイメージだろうか。
「もっと深く、もっと詳細に。大地知覚」
すると、まるでソナーのように地面の構造が見えてくる。
50mほど先に大きな空洞があるらしい。空洞の下までは判らないようだ。空間が空くとダメなんだろうか?
空洞の手前には、石炭の層もあるようだ。貴金属があれば探せるのかもしれない。
「じゃあ広く調べたらどうだろうか?」
今度は横に広がるイメージで大地知覚を行う。
すると地形図が浮かんできた。
「おお、まるで立体マップだ」
頭に浮かぶマップは、広くしたいと思えば広い範囲が把握できる。その分細かくは見れないのだろうか?どうしても中心は自分がいる位置になる。離れた場所は縮尺を上げないと表示されない。
どんどん広くして行くと周囲が海に囲まれた大陸になった。海の先は見えないようだ。管轄が違うのだろうか?
大陸の形は北が狭くなっている涙滴型。某有名RPGの最弱モンスターのような形だ。
「現在地は右下、と。海までは結構遠いみたいだな」
現在地が知れたので、マップの縮尺を戻し、今度は周囲の地形を確認する。
「ここ、川っぽいんだよな」
谷のようになって南方向に下っている。ここからは西へ向かえば良さそうだ。
「うん、水が流れているのが判る。こりゃ便利だ」
地面の上に水があるのが判る。同じ様に木が生えていればその事も判る。ある程度大きな生き物がいればそれも知覚することができた。
「まずは水の確保だな。神通力凄いな」
サバイバルかと一度は覚悟したが、ずいぶんと楽ができそうだ。
「感謝いたします、石長比売様」
義嗣はどっちにあるか判らない元の世界に向けて、二拍手するのであった。




