42話 王都防衛戦。
パラシュートが完成した。リュックにして担ぐ。
ついでに小型にしたジェットエンジンも背負う。ジェットパックだな。緊急時にはこれで時間を稼げるかもしれない。
安全を確保できたなら、もう躊躇うことはない。俺は早速飛行実験を行った。
「で、どこまで行ったって?」
「王都です」
ほんの1時間足らずの出来事だ。
マイ・ジェットはボロボロで煙を出している。
ファーレンの街に行くのは不味かろう、とエスタ湖へ着水。フロートと車輪を併用した着水機構はうまく働いてくれた。
で、それを見た皆が集まって来たわけだ。
「王都まで行ったんですか? さっき出たばかりでは」
片道10数分ってところかな。空飛んでるしね。
「それが、なんでこんなボロボロになってるんだい?」
「いや、王都が見えてきたなーって思って、せっかくだから寄ろうかな、と思ったんだけどさ。そしたら、城壁の上から矢とか槍とか火の玉とかが飛んできてさ、酷くね?」
「……」
シンディは、なんか今日は疲れてるみたいだな。女冒険者なんて激務だしな。
「解った。城の方にはあたしから連絡しておく」
そうしてくれると助かる。ファーレンの方もよろしく。多分こっちでも同じかなと思って湖の方に来たんだ。
さて、試験飛行は良い感じだった。天候が良かったからというのもあるだろうが、そこそこ安定できてたのではないだろうか。
なので次は、海岸線にそって大陸を一回りしてみたい、と思う。
海に出るのはまだ怖いからな。
直径2000kmの円周だと、6283km。実際は正円でない分短く済むとして、12時間くらいで行けるだろうか? 王都までかかった時間を参考にすればそれくらい。時速で500km/hくらい出ている。
一日仕事ではあるが、早くに出れば日のあるうちに帰ってこられる。
途中一泊するくらいなら、予定変更しても問題ないだろうしな。
暗くなってから飛ぶのはさすがに嫌だ。早めに休むのを心がけよう。
「ってことで、明日不在にするな。もしかしたら2、3日に延長するかも」
「ちょっと待ちな。説明が足りてないんだよ」
「だから、明日マイ・ジェットで大陸一周してくるから、もしかしたら泊まりになるかもって」
何度も言ってるじゃないか。
「一日で回れるんですか?」
「一応、予定としては。最初に東へ港まで出て、そこから海岸線にそって北へ進んで、大陸北の半島については眺めるだけで突き抜けて、でもってそのまま西側を南下して、またウィステラソンの港までぐるっと一周する予定だ」
ちなみに、地面から離れてしまうとアースサーチは使えない。以前作って収納の肥やしになっていたコンパスが役に立つ。
まあ、一度着水して陸に上がれば、アースサーチで現在地の確認はできると思うが。
今回は単純な長距離テストだからな。途中で街を見かけても立ち寄ったりはしない。
港に遊びに行くのはまた今度までお預けだ。
「いや、それが必要だって言うなら文句を言う筋合いじゃないんだけどさ。大丈夫なのかい?」
シンディは心配性だな。
「それができたら、今度は外の大陸を目指すからな。そのときは最低でも4日くらいはかかると思うぞ」
一切陸地がなくて全て海、という可能性もあるからなぁ。最悪のパターンを想定して、星を一周するのに備えるならそんなもんだ。
「せめて誰か。いや、あたしが一緒に乗って行けるようにはできないもんかい?」
ジェット機の2人乗りか? そりゃ、機体もエンジンもサイズや数を増やせば出来ないことはないと思うけど。
「いえ、そういうことであれば、私が同行する方が良いでしょう。おそらくですが、体重が軽い方が負担にならないはずです」
まあ、その理屈は正しいよ。でも、欲望が駄々もれだぞ、アイリス。
「わたくしが同行してもよろしくてよ? エルフの森を通過するというのでしたら、わたくしがいた方が便宜を図ることもできるでしょうし」
珍しいな。エレメアが協力的とか。里帰りでもしたいのかな?
「それなら、獣人の森では私が一緒にいる方が良いと思うわよ?」
ユキもその理屈に乗っかってくる。
こいつの場合、珍しいどころではなく、絶対何か裏があるな。




