4話 神通力を使ってみよう。
俺は次に、もう一方の手に持っていた木の枝を構える。
「大地変容」
イメージするのは木刀。地方の土産物屋に売っているやつだ。
「あれ、失敗か?」
木の枝は全く反応しない。
今度は石の方で木刀の形をイメージする。
大地変容。
言葉に出さず、頭で考えるだけ。それで石の串は石の刀になった。
極小サイズの。
「土産物屋のキーホルダーみたいだな。これじゃ武器にはならないか。石は変化するけど、木は変化しないってルールなのか。まあ、石長比売の神通力だしな」
できること、できないことを調べる必要がありそうだ。
とにかく、必要なのは身を守る術だ。獣なり、もしかしたら魔物なり、に襲われたときの攻撃手段が欲しい。
土魔法の攻撃というと、石を射出してぶつける攻撃だろうか?
手のひらにのせた石が銃弾のように飛んで行くイメージを念じる。
手のひらで石の形が円錐型に変化した。が、それ以上のことは起こらない。
「えーと、飛んではいかない、ってことかな。まあ、魔法じゃないしな。というか、あれってなんの力で飛んでくんだろうな?」
なんとなく不条理なものを感じる。
「じゃあ、次。アースニードル」
地面に手を付き、地面からトゲが出てくるイメージ。
「おお、出た」
今度はイメージ通りだ。地面から身長くらいまで真っ直ぐに、土でできたトゲがズズズっと目の前で延びるように生えた。まるで筍のようだ。
軽く叩いてみる。ぼろっと崩れた。まあ、土だしな。
もう一度地面からトゲを生やしてみる。今度は斜め45°に後ろの木に向かって。
土でできたトゲは木にぶつかって砕けた。
「ダメじゃん」
なんかこう、惜しいところで形にならない。
「トゲなんだからもっと固くなって欲しいんだよな。石みたいに。地面から石が生えてくるのっておかしい? いや、そんなことないよな。石長比売の加護なんだし、細石が岩になっちゃってもいいはずだよな。こういうのもイメージか?」
地面から石のトゲが出てきて、斜めに木に突き刺さるイメージ。
「出た。成功だ」
地面から生えた白いトゲは木の幹に届くと、そのまま切っ先3cmくらいが突き刺さった状態で止まった。
ストーンニードル成功の瞬間であった。
「おお、これはヤバい。感動ヤバい。なんか魔法って感じがする」
攻撃魔法の存在はやはり大きい。使うかどうかはまあ、置いておいて。
その後、落とし穴を作るアースホールも試したところ、こっちはあっさり成功した。目に映る範囲ならどんなサイズの穴も作れてしまう。さすがは神通力だ。
自然破壊になるからやらないが。




