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33話 ご褒美。

裁判が終わり、やっと宿で飯が食える。

少し早めの夕食だが、構わず食う。

同席している4人娘が食べてなかろうと、俺だけでも食う。


「いろいろご面倒をお掛けしましたが、雷光仗は発明品として認められました」


雷光仗ってのはあれな。雷の魔道具で電灯を光らせるやつ。

単に光の魔道具っていうと煩いらしい。どっかの子爵とかが煩いのだろう。


「残念ながら、ヨシツグさんの単独発明ではなく、王技研が開発した雷魔道具の使い方に対して新規性が認められた形になります」


実用新案ってやつね。

この世界に特許とかあるんだろうか?

いや、褒美を出して終わりなんだから、特許的な話にはならないのか。

褒美の有無は統治者の胸三寸。あとは真似して作り放題で、作った量に対してマージンとかは無いんだろう。

貴族社会みたいだしなぁ。

そうは言っても、俺にしか作れないからと毎日製作を仕事にされるなんてのは御免だからな。

今回のことは、これで良しとしたい。


「それで、どんな褒賞がよいか、希望はありますか?」


「え、お金じゃないの?」


「もちろん、お金でも良いですが、ヨシツグさんなら別の希望でもあるかと思いまして」


まあ、確かにもうお金って困ってないんだよな。

草原や山で散歩がてら狩りをすれば、十分手に入るし。

パソコンやスマホもないんだから、課金とかしないしな。

むしろ、俺の収納倉庫に貨幣を溜め込んだりして、市場で貨幣不足が起きても困るだろう。


でもな、アイリスに変に希望を伝えて、またトラブルにならないかが心配なんだが。

そういった部分を察してはくれなさそうだな。


「じゃあ、家とか持てたりするかな?」


「家、ですか? それでしたら、王都の商業区あたりなら……」


「いや、ファーレンの方で」


王都は肌に合わない。俺からすればどちらにせよ文化レベルが低くて不便な生活なのだから。それならせめて気楽な方が良い。

買い物関係は定期的に買い溜めしにくるとしよう。王都の身分証も手に入ったしな。


「それだと、普通にいつでも買えるのではないですか? ああ、そうですね。ヨシツグさん、国民としての戸籍が欲しいと」


「いや、いらん」


どうせ、税金とか面倒なんだろ?

あんまり柵があると、引きこもりもできやしない。


「ファーレンに日帰りできるような距離で、何処か街から離れた位置に家を建てたいなー、とか思ったんだが、そういうのってダメなのか?」


何かあるたびにゴミ捨て場ってのもね。


「いえ、そんなのは褒美に関係なくご自由に、と言いますか」


おお、それは良いことを聞いた。


「でも、街の外は危険です。何かあっても自己責任になります」


「そうだぜ。なんで街に外壁作って門番を立ててると思ってるんだい」


「まあ、住むかどうかは別にして、騒音とか出してもどこからも文句が来ない場所が欲しいというか、後から他人がやって来て、出ていけとか言われない場所が欲しいというか?」


山火事とか出したら、さすがに怒られるだろうか?


「いったい、何する気だい、あんたは」


「悪い予感しか、しませんわね」


うるさいよ。男には自分の世界があるんだよ。

流れ星とか、稲光とか。


「そうすると、統治者のいない未開拓地域に対して自治を認めさせたい、ということでしょうか?」


「ほお、そりゃ領地持ちの貴族になりたいって話かい?」


え、そんな大事?


「違う違う、単に街の外の土地で所有している保証が欲しいってだけだ。そもそも、ファーレンって誰が統治してんだ?」


「あそこは直轄地です。ダンジョンがありますからね。治めているのは王家、というか王家の一員というか」


まあ、街に偉そうな建物とか無かったしな。

でも、それなら外壁工事の依頼とか、誰が管理してるんだろうな?


「相も変わらず、要求する内容がずれてますわね」


「とりあえず、褒賞の希望はそのように伝えてみますね。それで、次の話なのですが」


「ん? まだ何かあるのか?」


「またまた、とぼけないで下さいよ。王都への移動に使った乗り物があるじゃないですか。あれも発明申請するでしょう?」


「却下で」


「何でですかぁ」


おいおい、よくそこで不満を口に出来るもんだな。


「あのな、今回のことだって下手したら俺は犯罪者扱いで罪になってたかもしれないんじゃないのか?」


「う、それは……。でも……」


「この国の刑罰とか知らんが、相手が貴族じゃ平民なんて簡単に死刑になったりするんじゃないのか?」


切り捨て御免とかな。


「いえ、まさか、そんなことにはならないように、なんとか」


なんとかって言ってる時点で、そうなる可能性あるんだろうが。


「だいたい、馬を使わずに動く馬車とか、すでに研究してたりするんじゃないか? どっかのなんとか研究所で」


アイリスは無言で目をそらす。


「なので、却下。そもそも俺的には未完成だしな、あれ」


もっとパワーがでないと坂道は登れないから、立ち往生するのが落ちだし、魔法で熱を出し続けないと動かない。燃料を載せて運ぶとか、それこそパワー不足だ。

火魔法使いとかなら可能性あるか? ……これはアイリス達には黙っておこう。

ま、坂道になったら収納して歩けばいいだけだから、俺は使うけどね。


ファーレンまで日帰りができる距離に住みたいとは言ったが、機動力が上がれば選択の幅も広がるというものだ。

どうせ長く生きるのだから、いずれは現代日本のように充実した引きこもり生活が送れる社会になってくれると嬉しい。


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