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31話 ドワーフの工房。

そんなわけで、俺は城の中にある鍛治場へとやってきた。裁判が終わるまで外に出てはいけないらしい。


目の前にいるのは、長い髭を三つ編みにして腹が全周突き出している背の低いおっさん。


「ドワーフっ」


「おお、そうだが、どうかしたか?」


ファンタジー世界で鍛治場といえばドワーフ、まさか見られるとは。

いや、ダンジョンから助けた連中の中にも一人いたか。でも、あれはこんなに太ってなかった気がするな。似てただけだろうか?


「とにかく、お前さんの指示通りに物を作れと言われとる。詳細は知らん。すぐに始めろ。まず何をする?」


ああ、このおっさんに手回し式電灯を作らせないといけないわけか。

まいったな。

とりあえず、収納から磁石とコイルを取り出す。

工房の床は土間だったのでよかった。


「とりあえず、この二つを見てくれるか?」


「うん? これと同じ形のもんを作りゃいいのか? 鉄で良けりゃ、すぐだが。」


「いやいや、こっちのは磁石になってて、ほら鉄がくっつく」


立て掛けてあった剣に磁石を張り付かせる。


「ほう、ずいぶん小さな魔道具だな」


魔道具じゃねえよ。磁石無いのかよ。


「こっちはコイルって言って、銅の細い線を間に石を挟んで何回も巻いてあるものだ」


「石の部分は土魔法のクリエイトか? こりゃまた細けえな」


ドワーフは銅のインゴットを取り出してハンマーで叩いて伸ばす。


「こんなもんでいいか?」


引き伸ばして棒状にした銅を差し出してくるが。

太すぎるよ。10回くらいしか巻けねえよ、これじゃ。

前途多難らしい。




部品は俺が供給する、という形ではどうだろうか? と聞いても返事は否。すべて工房内にあるもので作れ、ということらしい。


工房に無いものを部品にしたいと言うと、ここに無いものはこの国のどこにも在りはしない、と不機嫌になられた。そんな変なプライド持たれても困るんだが。


せめて、銅線くらいクリエイトで作れないものか、と思ったのだが、土魔法のクリエイトでは金属は作るどころか加工もできない、と言われた。なんでも、このドワーフも土魔法が使えるらしい。

そういえば、土魔法が使える人は始めて見るのか。俺のは、なんちゃって土魔法だしな。


「本当は良くないんだが、何が作りたいのか聞いた方が良いのかもしれんな。どうも、お前さんの説明は要領を得ん」


と言われてもな。


「だから、コイルがあるじゃん? 磁石があるじゃん? 回すじゃん? そうするとバチバチするじゃん?」


最初に作ったエレキテルを見せる。収納魔法から取り出したことにして。


「なんじゃ。雷魔法の魔道具じゃったんかい」


だから、魔道具から離れようぜ。こんなだから、魔法がある世界は科学が発達しないんだ。


「雷魔法の魔道具なら、ほれ、これはどうだ?」


取り出してきたのは、小振りの杖。先端に石がついている。

ドワーフが杖をもって構えると、先からパチパチと火花が出た。


「魔道具工房の方から回ってきた試作品じゃ。使い道がないかと聞かれておったんじゃがな」


おお、これが魔道具か。魔道具見るのも初めてじゃないか?


「持てば使えるのか?」


「持って魔力を流すだけでいい」


……。

どうやって?

もしかして、あれか? 俺は魔力がないから、魔道具も使えないって話か? こっちの世界に来る前にそんなこと言われてたか。


仕方がないので、杖を持つのは任せて、火花の出ている先に銅棒を当てる。

作業する際には手袋を着けた。元は普通にファーレンの道具屋で買った皮手袋だが、表面に石で作ったパーツを張り付けることで強度アップしたものだ。感電も防げるだろう。

杖の先、石部分の左右に銅棒を当てることで電気の流れを取り出すことに成功する。石の表面ではなく、伸ばした銅棒の先で火花が出るようになった。

その状態で固定してもらう。


最後に、銅棒同士をフィラメントで繋ぐ。

フィラメントはタングステン製にパワーアップしてるぜ。


「うおっ」


ドワーフもびっくり。杖の先は煌々と光った。


「こいつはたまげた。光の魔道具か」


だから、魔道具じゃ……、いや、魔道具か、一応。

とはいえ、タングステンのフィラメントも俺が出したものになるな。

以前作った炭のフィラメントに取り替える。


「なあ、こいつは炭化させた木材なんだが、固くてまっすぐ伸びるような成長の早い木ってないか?」


竹とかが良いらしい。


「木材か? それなら倉庫から好きなもの持ってこい」


ドワーフは奥のドアを指差す。視線は杖の灯りから離そうとしない。

勝手に倉庫を漁ることにした。




倉庫の中は全く整理されていなかったが、竹っぽいものはすぐに見つかった。

壁にまとめて立て掛けてあったからな、釣竿みたいに。

一本持ち帰り、細い竹ひごにしてもらう。

あとは炭化すれば良いだけだ。


竹ひごをまとめて容器にいれる。鉄で作った容器で、きっちりと蓋を閉めることができる。密封できる精密さはドワーフの面目躍如だ。上部には少しだけ穴を開ける。

箱ごと火にかけて加熱。

穴から漏れ出てくる煙が無くなれば完成だ。

温度が下がるまで蓋を開けてはいけない。たとえ赤子が泣こうとも。


「竹炭フィラメント~」


中を見ると、崩れて使えないものもあったが、形を保っているきれいなものを選ぶ。

電灯のフィラメントを付け替えて、きちんと動作することを確認した。


「あとは、ガラスでカバーでも作れればいいんだがな」


「ガラス? 窓に使ってるようなのでいいのか?」


そう言われて初めて気付いたが、工房の窓にはガラスが使われていた。なるほど、確かに明るかったな。全く気にしてなかった。

小さな四角いガラスがたくさん、木枠に固定されて一枚の窓を構成している。

ステンドグラスなんかもあるのかな?

予備のガラスを一枚見せてもらう。


「おっと、落としちまった」


地面からガラスを取り上げて返却する。


「よかった。割れてはないようだな。すまんね」


こうして、こっそり一度収納に入れることで、俺は透明ガラスをゲットしたのだった。


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