表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/35

29話 はるばる来たぜ王都へ。

夕刻到着、というには少し遅れたが、王都の門は開いていた。

先行部隊のキャラバンが手続きしていて手間取っているようだ。そこに合流した。

マイ・カーも収納する。ここからは歩きだ。


「王都も暫くぶりですわね」


エレメアが独り言ちる。


「こっちにはよく来るのか?」


今回は急ぎで来たが、普通に移動すれば数日かかる日程だろう。気軽に、とはいかない。


「あたしら、もともとこっちに住んでんだよ。あたしは実家がこっちだし、アイリスはまだ学生だしな」


ああ、一人だけ年が違うなとは思ってたが、学生なのか。魔法学院とか言ってたやつかな?

何で冒険者やってんだか。学校で単位取るのに実習がいるとかか?


列が減ってゆき、俺たちの番になる。

ファーレンで作った身分証を見せるが、その後は俺だけ別室に。

なんでも、街ごとに身分証は個別らしい。

とはいえ、ファーレンの身分証が無意味なわけではなく、見せることで手続きを簡略して王都の身分証が貰えた。こちらでも出稼ぎ扱い、とのことだ。


正門に併設する勝手口のようなドアを通り、俺は王都へと入った。


「遅いわよ」


そこに待ち受けていたのは、白猫獣人こと、ユキだった。




ユキに道を教えてもらい、泊まる予定の宿へ向かう。

他の連中は用事を済ませるとかで、ユキが残ってくれた形だ。

まあ、初めての街だし、ファーレンよりもさらに大きいし、時間も遅いしで、それはとても有り難いのだが。


「なあ、前歩いてくれればちゃんと着いてくぞ?」


「嫌よ。あなたに後ろからじろじろ見られたくないもの」


とのことで、俺が前を歩き、後ろからユキに指示を出される。

首輪とリードは無いものの、犬の散歩をされている気分だ。もちろん、犬役は俺。


「そこ、右に曲がって」


王都は広い通りだけでも縦横に組合わさっており、ファーレンのような区画整備された街並みとは違っている。


「なあ、横歩くとか……」


「冗談は顔だけにして? 通行の迷惑よ」


いや、街を縦一列で歩くとか、どこの勇者だよ。

周り見たって、そこまで混んでないだろ。

ほんと俺、何かしたか? してないよな?


「その先よ、見れば判るわ」


そう言われて目を向けると、そこにあったのはファーレンの街にある酒場と全く同じ建物だった。




手に馴染むスイングドアを押し開けて中に入れば、カウンターにはいつものマスターの姿が。


「いやいや、あんた今日の朝、ちゃんと店に居たよな? 何で先回りしてんの?」


「んあ? 何言ってんだ、お前」


相変わらずカウンターに嵌まっているような佇まいだ。ワープでもしてんのか?


「宿をお願いするわ」


「おお、お前さんか。なんだ、こっち来てんのか」


ユキは何事もなさげに流す気なのか?


「ってこた、あれか。ヨハンの店の客だな。俺はヨシュアだ。この店のマスターをしている」


「いや、だからマスターなんだろ?」


知ってるよ。


「解らない人ね。王都の酒場、笑福亭でマスターをしているヨシュアさんよ。あなたが知っているのはファーレンにある三遊亭のマスターでヨハンさん。ご兄弟よ」


「まあ、そういうこった。ファーレンからやってくる客はみんな同じ反応するからな、気にすんな」


は、なに? この店そんな落語家みたいな名前だったの?

ってか、マスターに名前あったの?

いやそれよりも。


「酒場って、全世界の街でおんなじ顔のマスターが経営してるシステムなの?」


「んなわきゃねえだろ。うちは二人兄弟だ」


そんなこと言って、従兄弟とか出てくるんじゃないだろうな。


「マスター、気にしないで。この人ちょっとアレだから」




王都の酒場は何から何まで作りが同じ。

俺が泊まった部屋位置まで同じだった。

遠出してる気がしないな。


そして翌日。身柄を拘束された俺は被告席に立っていた。

なんで?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ