22話 闇の奧に潜むもの。
階段を降りて、目の前には大きな扉。
「階段のサイズよりも大きい扉って、なんか意味あんのかね?」
この中にいるモンスターは、かなりでかいらしい。
でも、階段を通れない以上、外には出られないわけだ。上の階はマグマだしな。
では、ほおっておけば餓死するのか、といえばそんなことはなく、ダンジョンの中ではモンスターは食料がなくとも生きられるそうだ。
そのくせ、食べられる獲物が来ると襲ってくるらしい。
そんなこんなで、ダンジョンでは理不尽に大きなモンスターが出てくることがある。ダンジョンボスというやつだな。
「扉、閉まってるな。アイリスが通ったはずなんだが」
こういうのも、ダンジョンの復元力なのかな。
まあ、閉まっているならまずは中の確認からだ。
「アースサーチ」
扉を開けなくとも確認はできる。
扉の中は広い部屋になっている。
外周にいくつかの小部屋があるのも先に見た通り。
室内には天井を支える柱と、像のようなものがたくさん壁に沿って並んでいる。。
部屋の奧にはこれまた大きな台座のようなもの。その上に動かない何かが乗っている。これがボスか。
さて、この扉、開けると絶対大きな音がするよな。
すぐに階段まで戻れば逃げられるか?
でも、扉を開けるのに手間取ると、その間に距離を詰められそうだ。
扉の横、壁に手を当てる。
「アースホール」
ダンジョンの壁に少しだけ穴を開けた。
穴は像に隠れる位置。そこから手回し式電灯で中を照らした。
穴が塞がるまでに急いで中を確認する。
「見える範囲では綺麗なもんだな」
床には塵ひとつ落ちていないくらい。もちろん、死体なんかもない。遺品的な物もない。
ボスモンスターが明かりに反応するかと思ったが、今のところ動きは無い様子だ。
部屋の奥まではあまり明るくできておらず、ボスの様子は目視できない。半球鏡でも作って、手回し式電灯の光に指向性でも持たせてみようか?
壁際の像も怪しいな。目の前にも一つあるわけだが、人を模した石像のようだ。
獣人の像らしく、こちらに尻尾を向けている。
女性の像か。腰回りが円みを……。
「ユキじゃねえか」
そこにあったのはユキの石像だった。




