151話 それとも人間辞めますか
「おーい、ニーナぁ」
大地に立つニーナの元へ、ブラックボルダーで向かう。
広野に佇む人間サイズの体を見ると、今までの怪獣大決戦が嘘のようだ。
「おう、ヨシツグではないか。壮健か?」
「今のは何だったんだ?」
ストンフォレストの上に何があるのかによっては、引っ越しを考えなくてはならないかも知れない。
「龍王の奴が怒ってしまったのじゃ。まったく、何百年ぶりかのう」
「龍王なんて居るんだ?」
「魔王の一柱じゃな。以前にも言うたであろう。広い大地があれば大抵は魔王がおる。龍王もその一つじゃ」
たくさんいるのか、魔王……。
「今だと他に九つの魔王がおるぞ? 外の大陸じゃがの」
外大陸は、つくづく魔境だな。しかし、今問題なのは……。
「それで、その龍王さんは、今怒り狂っていらっしゃる、と?」
「なんじゃ、そんな事を心配しておったのか? 不要な心配じゃよ。その辺は後を引かぬ奴じゃからのう。一度怒鳴れば終いじゃ」
怒鳴ったらあんな風になるんですね。普通はそれだけで死ぬと思う。
「ぬ? ヨシツグよ、お主成長したか?」
ニーナが目を細めて俺を見る。
「成長? 身長でも伸びてるとかか?」
以前より筋肉くらいはついたと思うけど。不老永命で約束されたムキムキが待ってるからなあ。
「器の話じゃ。お主、すでに竜になっておるぞ」
「え?」
自分の両腕を確認してみる。
……特に違いはない。鱗とかできてはいない。
頬も触ってみるが、変化がある様子でもない。
頭に角もない。
「ドラゴンとは言うておらん。百年生きれば妖、千年生きれば竜と言うじゃろう。いずれそうなると思うてはおったが、思いの外早かったのう」
千年も生きたりしてないぞ? ……生きてはないけど、さっき吸われたか、千年分の寿命。
え? それで強くなっちゃうの?
「強くはならん。普通は逆じゃ。強い力を身に付けた結果竜になるものじゃ。つくづく、道を外す奴よのう」
ニーナはそう言って笑うが、その言い方だと社会不適合者みたいに聞こえるぞ。
いや、人間辞めたって話なら同じか。……えー?
「竜になると何が変わるんだ?」
「すぐには大して変わらぬよ。伸び代が増える、と言えばお主には解りやすいかの?」
ああ、ネットゲームでレベルキャップが解放されて引き上げられる感じ、かな?。
「あとは、肉が美味になるとは聞くのう」
食材は嫌ぁぁぁ。
こうして戦いは終わった。だが、これが全ての結末ではない。
何故ならば……。
「なあ、なんで軍隊が睨み合ってるんだ?」
シンディたちと合流して、今いる場所はストンフォレストの裾野にある高台。
ここから見て正面に遠くラフウッドの砦があり、左にはハンドレッド、右にサウザンドのそれぞれの砦があるわけだが。
「そりゃ、神兵の対処では共闘したとはいえ、一応他国だからねえ。国境に軍隊が集まっている状態で無防備に引き上げる訳にもいかないだろう?」
うーん、費用請求とかされたら嫌だなあ。
今回の騒動の、そもそもの主犯はアオイなわけで……。もういないから、責任とる存在が居ないんだな。
次点で戦犯というと、タケル君達だろうか……。
俺じゃないよな、うん。
まあ、世界樹さんの取り成しくらいは期待できると思うけど。ファティマ教国の方でも国に関わらず治療部隊がそれぞれの砦で動いてるみたいだし……。
つまり、今俺がすべきこと、それは……。
「逃げよう」
全員をコンテナに押し込み、マッターホルンの我が家へと飛んで帰る。ブラックボルダーで。
タケル君達も、暫くはここに住むことになるだろうしな。




