150話 圧倒的勝利者
あえなく倒されてしまったグレートブラックボルダー。
しかし、一撃は入れた。
これが最後のグレートブラックボルダーではない。俺とタケル君がいる限り、第二、第三のグレートブラックボルダーが……。
とタケル君との合流に向かおうとしたその時、全身を潰すような重圧を受ける。
重力が増えた訳ではない。あくまで精神的なもののはず。でなければ墜落している。
その重圧にも覚えはあった。以前のものとは比較にならないが。前の時はマッターホルンをまるごと包んでいただけであったそれは、今は広野全てを押し潰すかのよう。
「に、逃ぃげぇろぉぉぉ」
拡声器で地上に向かって叫ぶ。
果たしてどこまで声が届くかなど判らない。
だが、そんな心配も杞憂である。それぞれがこの重圧を感じとり、皆が蜘蛛の子を散らすかのように撤退していた。
残されたのはグレートブラックボルダーに貫かれて縫い止められた神兵のみ。
重圧の発生源は……東。
「げぇっ」
東に伸びるストンフォレストの山並みには、巨大な傷痕が麓から山頂へ向けて延びていた。それ以上は雲に隠れて見えないが、その雲すら傷を負っているような歪みがある。
傷というより、むしろ額に青筋を立てているかのようにも見える。
「……さっき神兵がやった攻撃のせい……だよな」
グレートブラックボルダーを貫いた光は、その威力を衰えさせること無くストンフォレストを削ったらしい。
山に刻まれた破壊の痕は、いずれ自然の風景へと変わるのであろうが、今はまだ不安定な揺らぎを晒している。
その仕打ちに対する報復であろう、怒りの奔流が渦となって産まれ、それは絶対不変の物理法則であるかのように到来する。
ストンフォレストの上から落とされるそれは、直線を描く力そのものの濁流。そこに飲み込まれたものの運命は果たしてどうなるか。
グレートブラックボルダーは粉微塵となって散乱した。
神兵は胴体の大部分を蒸発させて潰れた。
天から地をなぶるようなその攻撃は、大地をむしろ綺麗に整えているかのよう。不要なもの全てを否定して。
かろうじてそこに残されたのは神兵の頭。そして千切れた手足。
「げぇ、なんかグロテスク」
千切れた神兵は細い紐状の何かを伸ばして互いを繋げる。頭に直接手足が融合すると今度は蠢きを始める。
顔がもう少しかわいければ、タコっぽくも見えるかもしれないが、どちらかと言うとこわい顔のそれは這い寄る神話にしか見えない。どっちもタコだけど。
だが、そんな驚異的な再生能力も、圧倒的な力の前には虚しいものなのだろう。
「こぉぉぉのぉ、戯けがぁぁぁぁぁっ」
上空から迫る聞き慣れた黒い声。
その衝撃は最後に残された神兵の残骸をこの世から消し去った。
本日の勝者、闇の黒竜ことニンゼルクナルガ。
決まり手、流星式かかと落とし。




