146話 生け贄の儀式
ブラックボルダー・ジェットフォームでジェル島中心の地へ。
そこは広い平野部になっていた。
空からみると地形がよく判る。ファティマとストンフォレストの山裾が向かい合うその場所には街も村も無い。
各国の街が遠くから望む様に平野を取り囲み、それぞれの国への玄関口となっている。
政治的な緩衝地帯とも取れるが、地下に変なものが埋まっているなら領有はしたくないだろうな。
そんな、何もない平野であるから、そこに異物があることには遠目からでも見つけることができた。
「あれだよな、きっと」
それは何もない広野にポツンと存在するオブジェ、というよりは不法投棄された大型家電の山のような不格好さをもつ物体だった。
しかし、そこで蠢くものは……。
「結局捕まってるじゃん、タケル君」
地面に伏している学生服が見える。
「緊急事態だ、このまま突っ込むから、コンテナはパージするぞ」
伝声管を通して、コンテナへ伝える。
ブラックボルダーから分離したコンテナは、四方にパラシュートを展開して風に横たわるように落ちて行く。
「ブラックボルダー、ホバーフォームっ」
ジェットフォームでの加速を残したまま、強引に緊急着陸。
巻き上げた土煙を目隠しにして、唯一立っている存在-アオイに突っ込んだ。
「無事か、みんなー?」
アオイはこちらを避けて距離を取る。その隙に外部拡声器で声をかけるが、反応がない。
武器のハンマーを投げ出して倒れているタケル君。
離れた位置で仰向けになっているユウタ君。
そして、簀巻きになって転がっている残り三人の少年少女。
「……生きてる……よな?」
希望的観測ではあるが、今は信じるしかない。
ブラックボルダーをアオイに向けて、礫の射出。
高速で飛来するそれを、アオイはかわしてさらに距離を取る。
「無駄なことを。既にお前たちに抗うすべはない。全てはもう遅いのだ」
「さーて、それはどうかねー」
途切れる事なく射出を続ける。
「む……」
ふっふっふ、やっと気づいたか。
射出した礫は、全て偽物メダルだ。大量に撒き散らされたそれを、区別できまいっ。
この隙に、タケル君達を回収して、一旦引こう。
と言っても、さすがのブラックボルダーでも手があるからといって、人を掴んだりはできない。
時間をかけて指一本ずつ動かせば話は別だけれど、今できることではないな。
なので、五人をアースクリエイトした石で囲んでから、それをブラックボルダーにくっつけて運ぶ感じになるかな。
まあ、多分擦り傷くらいで済むんじゃなかろうか。後でタケル君の薬を飲んでおくれ。
「愚か者め。本物のメダルは既に台座の上よ。こんなものに惑わされるものか」
台座? ……確かにそれっぽいものが足元にある。
「それなら、本物をいただくまでだっ」
ブラックボルダーから飛び降りる。
メダルを確保して、再度ブラックボルダーに乗り込み、タケル君達を確保して脱出。それで勝ちだ。
離れているアオイより、俺の方が近い。
……ちょっとおっさん枢機卿の最後が頭をよぎったけど、偽物だったらその時はその時。
「遅いと言った。力を継承せし円盤よ、我が呼び掛けに応じ力を示せ。捧げし命を吸い上げ、戦傀儡へと捧げよ」
アオイの言葉を受けて台座の上でメダルが光る。
そして、メダルから光のイバラが六本伸びる。
そして、その一本は最も近くにいる俺の胸へと刺さった。




