142話 希望を捨てよ
結局、世界樹さんからは結界を一部開けてもらえる事で話が付いた。
エルフの里に石造りの門とトンネルを作るのと引き換えに。
このトンネルを通ることで、結界の外と内を行き来でき、通行はエルフが目を光らせることになる。
エルフの森の守備責任者という青年と顔を合わせたが、例によって例のごとく、親の墓石にくっついたムカデでも見るかのような対応をされた。
よく見る顔だな。すごく見覚えがある。初対面なのに。
トンネルも門も、ブラックボルダー・ビークルフォームで通過できる大きさにしたので、行き来も楽だ。
その代わり、デザインはホラーな感じにしてみた。地獄門とか、魔王城正門みたいな感じ。
決して塩対応された仕返しではない。
看板には『この門をくぐるもの、汝一切の希望を捨てよ』とか書こうかと思ったんだけど、字が判らなかった。守備隊長さんに聞いたら怒られた。
そんなわけで、エルフの里の奥には、巨大な門がそびえ立ち、住民を威嚇……もとい、新たな観光資源となっている。
小さな子供が泣いてたけど、見慣れれば強く育つのではないだろうか。
なまはげとか、そんな感じだし。
「ってことで、移動が楽になったぞ」
トンネルを抜けた先、小島をいくつか経由して大きめの島へ渡り、その北端。
そこでは大きく育った世界樹の苗を中心に、拠点作成が進められていた。
ここに拠点を確保して、さらに北の島へと探索を進めることになるのだろう。
一歩進むのに何年かかることやら。
まあ、エルフの里から物資の運搬とかできるようになるだろうから、多少は楽になるのかな?
「あたしらの今までの苦労って……」
シンディが少し落ち込んでいたが。
でもな、苦労あってこその今だと思うぞ?
「お父しゃまー」
メイベルはここぞとばかりにくっついてくる。
教国の東屋でもくっついてはいたが、別の場所での触れ合いだと、違うものなのかもしれない。
住む場所をここに替えることも検討しなければならないだろうか? この子が大きくなるまでくらいは。
何年かかるのだろう? まあ、俺の寿命の方が長いとは思うのだが。
「おーい、かぁ……じゃなくてエレメアの方は、もう一段落ついたのか?」
「間違え方がわざとらしいですわよ。……当面は今を維持することになりますわ。わたくしの仕事は、一旦おしまいですわね……どちらも」
「これで、やっと冒険者らしい活動に入れるわね。アイリス達は一緒じゃないの?」
うん、一応残ってもらった。
「それなんだけどな、お前らに手伝って欲しいことができたんで、呼びに来たんだよ。俺達が教国に居たのは知ってるんだっけ?」
「ああ。移動してすぐ、ニーナが教えてくれたし、その後もメイベルから聞いてるよ」
ってことで一応状況説明。
向こうが四人で動きの停止をやって来るとして、少なくともこちらで四人、戦力外になってしまうわけだ。だから、信用できる戦力ができるだけ多く必要。
三人連れていったとして、俺、アイリス、カエデ、タケル君で七名。
まあ、ギリギリかな。時間があればまた違うんだろうけど、早く戻らないといけないしな。
「解った。そっちが急務だね。あたしはいいよ」
「世界樹からの要請というのでは、断れるわけがありませんわ」
「私もいいわよ。聞いた感じ、私が一番活躍できそうね」
……ああ、パーティの行動は全員で意見を出すんだったね、そういえば。




