140話 秘密の基地
「それで、結局あのメダルって何だったんだ? ユウタのやつがムキムキになっちまったんだけど、あれも治るのか?」
そういや、そんな問題もあったね。
本人は嫌がってたみたいだけど、いいじゃんね、ムキムキ。
……俺は嫌だけど、ムキムキ。
「初代教皇のメダル、ですね。あれは人の命を蓄えて、力に変えて与えるものです」
「先に申した通り、本来は神兵に命を与えるために使うものである」
動くためのエネルギーをチャージする感じかな?
「で、それを人間に使うとムキムキになるってこと?」
「どのような力を得るか、は人によるである。百年生きたものは妖となり、千年生きれば竜となるのである」
「おそらく、姿を変えた者は、百年の命を与えられたのでしょう。千年分の命は貯まってはなかったはずです。そもそも、人に耐えられるものでもありませんし」
代々の教皇が最後を迎えるときに、少しずつ貯めている、とのこと。
「百年の生を通る度、見た目が変わるものも居るであるな。判りやすいものでは、腕の数、尾の数、羽の数、角の数などであろうか」
ああ、尻尾が二本ある猫とか、九本ある狐とかがそんな感じなんだ。
ユウタくんは何が増えるんだろうね。ぱっと見それらしいものはなかったけどな。見えなかった場所というと、ズボンの中とかになるんだけど。
……嫌だな、それ。
「えっと、それじゃあ、神兵に千年の命を与えたら、ドラゴンになっちゃうと?」
ニーナレベルの化物が生まれちゃうのかな?
「いえ、神兵の許容量は千年にはわずかに足りません。竜になるほどの力は無いのです」
それは良かった。
でも、そうすると、タケル君をいれて五人分の寿命を与えようとしていたってことか。
日本人の平均だと、八十歳くらい? 今17歳として、315年分の寿命を与えようとしてるってことか。
許容量的には十分ありそうだね。
エルフの寿命なら満タンになるのかな?
「じゃあ、ユウタのやつはおかしくなったんじゃなくて、進化して強くなっただけで、治療で治るわけじゃないってことか?」
まあ、大人になったのが嫌だからって、子供には戻れないよね。そんな感じかな。
黒ずくめの組織から黒い薬貰わないとね。
ま、いいじゃんムキムキ。強く生きろ。
「じゃあいいや、それは」
と、タケル君が言う。
いいって言っちゃったね。……後でユウタ君にチクってやろ。
「結局、アオイって女を止めねえといけないんだろ? どうすりゃいいんだ?」
「気にすることは無いである。あれはもう、自分の意思すら持たず、使命のために全てを犠牲にする危険な存在であるゆえ、人とは思わなくとも良いであるよ」
遠回しに、ヤっちゃってくれ、と言ってますね。
自分達は追放で済ませてたくせに。
……でも、まあ、正直言って止めようが無いって気はする。一度邪魔したところで繰り返すんだろうし。永久に拘束するわけにもいかないだろうし。
日本の裁判だと、三人以上を殺害した殺人犯や、常軌を逸した殺人犯が死刑になるんだっけ?
あとは強盗、放火、強姦の四種類。
要するに、日本の国民が減ってしまうような犯罪を繰り返されるよりは、犯人一人で済ませた方が良いって考え方だよな。
この世界全体を考える視点で判断するなら、大を生かして小を切り捨てるって判断は必要なんだろう。
……ま、俺には関係ないか。
「とにかく、メダルとやらは此処で守れるんだろ。なら、あとはうちの連中を助ければそれで済むんじゃねえか? 居場所とか判んねえの?」
「そうだね。隠れ家が判るならなんとかなるかな」
忍び込んで、食べ物の中にタケル君の薬を仕込めば行けるだろうか?
多分、甘いものには飢えてるだろうし。
女の子が独占しちゃう虞れはあるけど。
「あとは、結局神兵って言うのに執着してるのなら、それのあるところに来るんじゃないかな」
そこで、待ち受けるって手も使えるし、そもそも近くに拠点がある可能性も高いんじゃないだろうか?
たくさんあったら困るけどね。
「神兵が眠るのは、この大陸のちょうど中心である」
「大地の中に封印されているのですよ。アオイの拠点とは考えづらい場所になります。もともと、何もない場所ですから、人がいれば目立ちます」
ああ、なんか地面がバカッと開いて、下から巨大な人型兵器が登場する感じ?
くそ、先を越されたかっ。
二番煎じはカッコ悪いか。……いや、まだそうと決まった訳じゃない。希望はある、な。
「えーと、結局、向こうのアジトの場所は判らない、と?」
「面目ありませんが、そうなります」
「しかし、必ず現れる場所は判っているのである」
まあ、そうですね。
メダルが此処にある以上、必ずまた来るわけだ。




