136話 隠してました
そもそも、地下霊廟でピンホールカメラの撮影をしていたか、と言われれば答えは否。
そんな暇があったわけがない。
では、提示した写真は偽物なのか、と言えばそれも否。ちゃんと撮影したものである。
ヒース君に連れられて、地下霊廟に向かった時に、胸元にスマホを仕込んでおいたんだよね。録画モードにして。
……だって、なんか隠してそうで、怪しかったんだもん、ヒース君。
そんなわけで、証拠として出した写真は、スマホで撮った映像から転写コピーしたものである。
さすがに、スマホそのものを証拠として出しても、信じてもらえるわけ無いからね。
だから、こんなこともできる。
「次の証拠を」
次に運び込まれてきたのも、また大きな箱。
その上には管楽器のように大きく広がる筒が付いている。
箱を受け取った俺は、装置を動かす。
装置の上部分が回転し、音が出る。
『そうやって、貴方の勝手な都合で、今までどれだけの教会関係者を……』
『ふん。教会へ多大な貢献をしてきた私を認めぬ輩が悪いのですよ』
聞こえるのはヒース君とおっさん枢機卿の声。
『はははははっ。初代の秘宝はすでにこちらの手にあるのだよ』
さんざんこれまでの悪事を語ったあと、締め括られたのはそんな言葉。
『これさえあれば、教皇の座は私のものだ』
再生された音はここまで。
はい。当然動画撮影では音声も録っていたからね。スマホで再生した音を石で作った振動版で受けて、それをアースディテクト。振動に合わせて回転する板に溝を彫り込めば、レコードのできあがり。
レコードに乗せた針が溝に合わせて振動することで音になり、それを管を通して増幅したのがレコードプレイヤーである。
……なお、これも王技研に技術提供することになっている。
まあ、音楽とか普及しそうだよね。
さて、今度は声という個人の特徴を持った証拠品。そして、語られた内容はこれまでの悪事の自供とも言える秘密の暴露。
犯人しか知り得ない情報ってやつだね。
さて、おっさん枢機卿はというと……。
「……くっ」
既に顔色は取り繕うこともできないほどに変色している。あれは青なんだか、赤なんだか。なんか斑だな。人間の顔ってあんな風になるんだね。
「うおぉぉ。これさえ手に入れればぁぁぁ」
おっさん枢機卿の選んだ選択は、目の前にある初代教皇のメダルを手に入れる事。
机を乗り越えて飛び出したおっさん枢機卿は台座のメダルへ向かって手を伸ばす。
周囲の神殿騎士が止めようとするが、枢機卿の方が早い。
そして、その手はあえなく空振りした。




