134話 逆転再び
騎士団に捕縛され、あわや牢獄行きかと思いきや、無体な真似まではされなかった。
ヒース君がいてくれたお陰か。
それでも重要参考人扱いは免れない。まあ、枢機卿のおっさんも同じと思えばそれでもマシか。
なお、タケル君は無事にピンピンしていた、制服は破けてたけど。
そして、今いるのは見覚えのある机。
正面の机にいるのは件の枢機卿。
右側に並ぶ高い位置の机には、枢機卿のおっさんに似た服装の御歴々。
その中央に鎮座しているのが、……うん、一目で判る。ヒース君のお父さんだな。この人が教皇っぽい。
ハンドレッド国での嫌な記憶筆頭の裁判沙汰と似たようなシチュエーションではあるが、裁判長の位置にいるのがヒース君パパなら、状況はマシだろうか。
リアリィ? ホントに?
「では、審議を始める。ベルンシュテルン枢機卿より、事態の説明を」
ヒース君パパの宣言で議題が進行する。
「本件はとても単純な事件と言えましょう。昨夜私は不審な集団を見つけました。それが彼らです。彼らが地下霊廟に入り込むのを見て、私もそれを追いました。そして、初代教皇の秘宝が盗まれる現場を目撃したものであります」
淡々と持論を述べるおっさん枢機卿。
「今、我々がすべきことは、犯人である彼らを尋問し、秘宝を取り戻すことであります。そう、一刻も早く」
もう、自分の言葉が全て真実って感じで喋り続けてるね。嘘ばっかり、べらべらと。
まずは、自信満々のその態度を揺さぶってみようか。
「初代教皇の秘宝は、すでに奪還しています。ここへ」
ヒース君パパの指示で審議場に持ち込まれる台座。
一見、手のひらサイズのメダルのようにも見える初代教皇の秘宝。それが大袈裟な台座の上に乗せられたまま、並ぶ机の前に置かれた。
台座の中央にはガラス質の部分があり、その上のメダルは透明なガラスに浮いている様にも見える。
「……!」
おそらくは、思わず出てしまいそうになった声を圧し殺したであろうおっさん枢機卿。
なにしろ、秘宝はタケル君の友達が持ち去ったと思っていただろうからね。
でも、ざんねーん。
最初にアースホールとアースバインドで拘束したときに、筋肉少年が持っていたメダルを確保しておいたのだよね。
生憎と、収納はできなかったんだけど、アースホールの中で別途拘束状態を作っていた。
アースホールが解除されたときに、地面に置かれた状態になって、そのまま放置されていたわけだ。
襲ってきた筋肉少年が両手とも何も持って無かったことに気付かなかったんだろうな、後ろからだと。
態度に出さないように頑張ったみたいだけど、冷や汗が出てるぞ、一滴。
ただの運動不足と老化からくる多汗症かもしれないけど。
「は……ははは。なるほど、既に犯人から取り戻せていたのですな。それは重畳」
を、取り繕ったか。
「ヒースクリフ助祭からは、初代教皇のメダルはベルンシュテルン枢機卿の手の者より奪還したもの、と報告されています」
ざわつく壇上と傍聴席。
教会関係者が全員集まっているかのよう。
暇なのかな? 教会って。
暇そうだな、よく解らない修行とか。
「まさか、その様な戯れ言を真に受ける方はおられないでしょうな。犯人が言い逃れをしているに過ぎませぬ。私は教皇のメダルに指一本触れてはおりませぬな」
堂々と述べるおっさん枢機卿。証拠さえ無ければ立場で押し通せる、という算段らしい。
ヒース君パパがいかに偉かろうと、話を平行線にすれば勝てると思っているのだろう。
まあ、これまでも同じ手口でうまくやって来たんだろうね。
さて、そんな悪い子にはお仕置きだ。




