126話 旅の扉
「さて問題は、待っていたらタケル君が戻ってくるかどうか、だよな」
まあ、無理かな?
これが移動のための装置なのは間違いなさそうだから、移動したせいで危ないことになっている可能性は低いと思うけど、行き来の出来る装置なのか、一方通行なのかは判らない。
加えて、戻る用の装置があったとしても、合言葉が同じ保証もない。
さらに言うと、タケル君的には仲間を探して助けることが最優先のはず。そのために異世界に飛び込んじゃった若者だからなぁ。
行った先に手がかりがあるはず、となれば戻る気なんて起きないだろう。
……俺たちのことを既に忘れている可能性まであるな。
「よし、俺が行くから……メイベルの方は頼むぞ、エレメア」
「言われるまでもなく、私は行きませんわよ」
ああ。任せた。
「わ、わたしはヨシツグさんと行きますっ。わたしなら少しは魔法文字も読めますっ」
「拙者も行くでござるよっ」
ちびっこコンビが手をあげるが、確実に安全ってわけでは無いんだがなあ。
「わかった。あたしが残るよ。こっちのことは心配いらない」
「同じく」
シンディとユキも残ってくれる、と。あとは。
「ニーナ、後を頼む」
「ふんっ」
返事をしてくれないが、まあ、意は汲んでくれるだろう。多分。
俺とアイリス、カエデの三人で舞台に立つ。
「美容と健康のため」
多分、魔法言語とやらの発音に翻訳されたであろう合言葉を口にすると、舞台の周りが光に包まれる。
これが終わったら、ゆっくり紅茶でも飲もう。食後に。
光が邪魔でみんなの顔は見えなくなって行くが、まあ、そう心配するなって。なんとかなるからさ。
たどり着いた先は石造りの部屋。
転移装置の部屋というよりは、遺跡で最初に案内された転移場所の部屋にイメージが近い。中に何もない空部屋だった。
どうやら、装置は一方通行だったようだな。
アイリスとカエデはちゃんと一緒だが、案の定タケル君は居ない。
「どうしますか?」
「まずは、外で地面を探そう。そうすれば現在位置が判るから」
アースサーチでな。ここが島とかでなければ、だけど。
まあ、そんなわけで、部屋から出た先の廊下。
「ここって、建物の中だな」
廊下には採光のための開口部がある。窓のようにガラスなどが嵌まっているわけでもない、ただの壁に空いた穴だ。
そこから見えるのは高い視界。
眼下にあるのは庭だろうか? 芝のような緑の絨毯に、通路や石柱などが組合わさった空間になっている。
そして、響き渡る笛の音。警笛。
反射的に姿勢を低くして開口部から隠れる。
「えーと、もしかして、ここって入っちゃいけない場所だったりするかな?」
「拙者達ではないでござるな。あっちでござる」
カエデが指差すのは下方、庭の先。
そこを走るのはタケル君。
そして、それを追う鎧の一団。
……なにやってんだよ、タケル君……。
「アイリスとカエデは身を隠してくれ。後で合流しよう」
とにかく、今はタケル君をなんとかしないとな。




