124話 滑った
まあ、何はともあれ世界樹の結界は何とかなりそうである。
なので。
「タケル君のいた遺跡? を調べたいんだけど、協力してくれるか?」
夕食のあと、焚き火を囲みながら今後の予定について話をする。
「へえ、遺跡なんてのがあるのかい。いいね、やっと冒険っぽくなってきたよ」
と、舌舐めずりをするシンディ。結構、ストレス溜まってたのかな?
「そうですわね。明日一日あれば、結界も安定すると思いますわ」
「それなら、明後日に軽く見てきましょうか。マーミャ、留守番をお願いできる?」
「任せてくださいっス」
まあ、メイベルを一人にするわけにもいかないか。
「それで、どんな遺跡なんですか?」
「タケル殿は、しばらくそこに住んでたのでござるよな?」
皆の視線がタケルに集まる。
「ん。そんなに広くはねえ。一通り俺も見て回ってる。ただ、良く判らねえ部屋や道具なんかがたくさんある」
「ほうほう、道具ですか。スマホみたいなのがもっとたくさんあるんですか?」
「これは俺が元の世界から持ってきたもんだぜ。俺たちが召喚された部屋とかだな。あるのは」
あ……。
「召喚でござるか?」
あぁぁ……。思わずニーナを見る。
「なんじゃ、妾は何もゆうておらんぞ?」
解ってるけどさ。
「タケル殿は以前はどちらに?」
「んぁ? 日本だよ、日本。ここからすれば異世界ってやつ?」
ああもう、アイススケートのオリンピック選手張りに滑りまくってるな、タケル君の口。
手を離しちゃおっかな。
「どうやったら、その異世界からやって来られるのでござるか?」
「知らね。それも遺跡に調べにいくんだろ、おっさん」
「まあ、そうだね」
「なんか、変な神様とかにも会ったしな。もう一回やれと言われても無理だと思うぜ?」
「ほうほう、神様ですか? どんな神様だったんですか?」
「それも知らね。良く見えなかったし。名前も聞いてないし。おっさんは聞いたか?」
「名前は聞かなかったな。なんか大阪の神様っぽかった」
「へえ。……それってビリケン様とかだったりすんのかな?」
どうだろう? ビリケン様って、あんまり女性が喜びそうな感じの外見じゃなかったと思うけど。
言ったのはタケル君なので、神罰はそちらにお願いしますね、神様。
「そういや、遺跡ってダンジョンなのか?」
石のダンジョンみたいな?
「普通は遺跡とダンジョンは区別されますわね。古代の建造物が遺跡で、魔力で生まれたものがダンジョンですわ。中には遺跡に生まれたダンジョンなんていうものもありますけれど」
を、こっち方面はエレメアが詳しいのか。
「なあ、母さんや」
「……次にその呼び方をしたら、本気で切り裂きまスワヨ」
……一度言ってみたかったんだ。マジすまん。
膝の上にメイベルが座ってるタイミングでなければ、さすがに俺も言わない。怖いもん。
「異世界から人を呼ぶような遺跡やダンジョンって他にもあったりするのか? エレメア様?」
「わたくしは知りませんわね」
ふむ、ここは六次の隔たりを試みるべきだろうか?
知り合いを六人経由すれば世界中の誰とでも縁が繋がるっていうやつだ。
この場合は。
「そういうのに詳しい人の心当たりはないか? そういう人を知っていそうな人、でもいいんだけど」
そうして辿って行けば、六人目に目的の人物にたどり着けるということになる……かもしれない。
「そうですわね、ヨシツグはエルフの里長には会ったことがあるんでしたかしら? それ以外ですと、それこそ世界樹に聞くことが出来れば、くらいですかしらね」
「あとは、各国の国王や皇帝、教皇といった人たちであれば、秘匿している情報もあるかもしれませんよ」
別に対抗しなくていいんだけどな、アイリス。
アイリスぺディアさんはちゃんと信用してるから。
しかしそうすると、ここの連中がいる時点で既にかなりの顔の広さが確保できている気もするな。
機密を聞いて教えてくれるかどうかは別として。




