123話 ハッピーバースディ
「エレメアの方は、どんな感じなんだ?」
「良くはないですわね。ここはどうも、気温が低いし、日の光も弱いせいかも」
いったん休憩、で食事をしている。
疲れを労うのにカレーを出したところ、タケル君からの好感度がさらに上がった。
この子の将来がちょっと心配である。
「いろいろ、方針変更することになりそうだねぇ。最悪、一度撤収も考えないとかね」
「それでも、既に根をはった以上、この苗はきちんと育てなければなりませんわ」
エルフ的には、そこは譲れないのかな?
「温度の問題なら、俺の魔法で上げられると思うが」
それこそ、やろうと思えば島ごとでも。
「魔法力を影響させるのは、あまり良くないですわね。苗そのものにも影響しますわ。いざとなったらお願いするかも知れないですけれど……」
まあ、俺のは魔法力ではないけど、異世界の神の力だからなぁ。もっと変な影響が出るかもしれないか。
「あくまで、日の光を強める形なら良いわけか?」
「まあ、そういうことですわ。幸い、季節的にはこれから気温も上がるでしょうし、時間さえ稼ぐことが出来れば……」
とはいえ、結構限界が近いと思うぞ、お前。
「じゃあ、こういうのはどうだ?」
まあ、ありきたりな提案ではあるが。
苗を囲む形で家の骨組みを作成。
壁を全てガラスで作る。
空気の流れを遮ることで温度の流出を防ぎ、太陽の光で中を暖める。
温室だな。
さらに、金属板で反射して周囲から太陽光を集める。
太陽の動きに合わせて調整しないといけないのがちょっと面倒。
「どんな感じだ? エレメア」
「ええ、これなら明日にでも育ちそうですわ。世界樹の苗も、ヨシツグにお礼を言ってましてよ」
え? 喋るの?
すると、目の前に手のひらサイズの妖精が現れる。
木の葉を合わせたような服を纏い、宙に浮かぶその姿は、妖精としか言いようもない。
それは、目の前でスカートの裾をつかみ、頭を下げて挨拶。カーテシー、だったか。
そして……。
「はじめましてっ。お父様、お母様っ」
と、元気にそう言った。
最初はこう思った。
殺される、と。
しかし、次にこうも思った。もしかしたらタケル君のことを言ってるんじゃないだろうか、と
すぐに、現実逃避だと認めた。
「えーと、世界樹の苗ちゃん?」
「メイベルでしゅ」
「へえ、メイベルちゃんっていうのか。名前は誰がつけてくれたの?」
「御館様でしゅ」
「えーと、御館様っていうのは……」
「世界樹でしゅ」
世界樹と苗の関係ってそんな感じなんだ。
「御館様がお父さんじゃないのかな?」
普通はそうじゃないかな?
「御館様は御館様でしゅ。育ててくれたのがお父様とお母様でしゅ」
ああ、なるほど。育ての親って感じなのね。
でもなぁ。
「あらあら、ヨシツグは何をそんなに怯えていらっしゃるのカシラ? 世界樹の言うことですもの、そんなに、気・に・す・る・こ・と・も・無・い・で・す・ワ・ヨ?」
……お前の態度が怖いんだよ。




