121話 故郷は遠きにありて思ふもの
「やあ、はじめまして、シンドウ=タケル君」
「いちいち名字と名前で呼ぶな、ウゼぇ」
うーん、反抗期真っ盛りって感じだなぁ。
ちゃんとスマホは返したのに。
コピーしたのを確保してるけど。
「俺だって、あんたの名前を知ってんぞ。あんた、松田義継だろっ」
おや?
「正解っ」
サムズアップで褒める。
でも、舌打ちされた。何故だろう?
とりあえず、俺の名前が伝わるツテというと、一つしか思い浮かばないな。
で、スマホを知ってるなら日本人で、この世界の日本人なら俺、という思考の流れか。
「すると、タケル君も神様に会ってきたってことで良いのかな?」
「おう、あんたに伝言があるぜ」
はいはい、聞きましょう。
「俺を助けて言うとおりにしろって神様の命令だ。解ったな」
……言うとおりにしろ、の部分は創作だな、多分。
助けてくれって普通に言えばいいのに。
おじさんってのは、困ってる若者がいたらちゃんと助けるものなんだよ?
「それはいいけど、さっきは何で襲ってきたんだ? それに何で此処にいるのか、とか」
みんなと合流する前に聞き出しておいた方が良さそうだ。
「嘗めてんじゃねえぞ。俺の槌の威力は知ってんだろ」
「それってやっぱり神様的なハンマーなの?」
「おうよ」
ハンマーを使うような神様かぁ。どの神様だろう?
問い。何故襲ってきたか?
「あれは、……女の子が居るところにモンスターが向かってると思ったから、先に倒そうと思ったんだよ。そしたら、なんか普通に話し始めるから、良いのかと思って引いた」
あれ、良い子?
問い。女の子達の周囲をうろついたのは何故?
「もともと、俺が此処に居たんだよ。そしたら、人間が居るって思って、話しかけようとしたけど、なんか話しかけづらくって……」
思春期だなぁ。まあ、みんな美人だしね。
問い。何の神様から加護を貰ったの?
「ぜってー言わねえ」
もう少し警戒心を解かないといけないかぁ。
鎖と錠前がじゃらん、と音を立てたように見えたよ。
ちなみに、俺の方は石長比売だよ、と教えたのだが、知らないと言われた。
まったく、最近の子供はけしからんな。
でもって、一体何を助けて欲しいのか?
なんでも、この世界に来たのは彼一人ではなく、他にも四人仲間がいるらしい。
仲間というか、クラスメイトの友人。
なんと、集団異世界転移だった。
「俺たちを呼び出したのは、変なチビの女だった。本当は精神だけ呼ぶつもりだったけど、上手く行かなかったんで、直接転移させたとか言ってたな」
神様に妨害されたから、別のやり方に変えた、ということかな。
「でも、俺の所にだけ、顔の見えない女の神様やらが来た。俺以外のみんなは連れて行かれたって言うから、俺もそれを追うって言ったら、神の加護ってのをくれたんだよ」
ふむ、概ね俺の時と同じだな。うん、概ね。
「だけど、この世界に来てから、あいつら少し変だった。クソ女の言うことにホイホイ従うし、俺が何言っても聞こうとしないし。……それで文句を言ったら、俺を残してみんなどっかに行っちまった」
で、取り残されたのがこの遺跡、と。
遺跡の探検がいるかなあ。まあそこは、専門家と相談してから、かな。




