120話 良い子は真似しちゃいけないよ
というか、よくよく考えるとちょっとおかしいか?
なんでスマホがあるんだろう?
俺がこの世界に来たときは、それこそ着の身着のまま、というか魂だけで来たから、体も服も神様が用意してくれたんではなかったっけ?
あいつはスマホも持っていたし、学生服まで着ていた。
俺とは別口ってことか?
そういえば、俺をこの世界に釣り上げた奴は、成功するまで何度でも繰り返す、なんて話もしていた……か?
神様の介入で俺の釣り上げが失敗したことになるとしたら、別の犠牲者がその後にいてもおかしくないのかも知れない。
なんとなく、神様の方で二度と起きないようにしてくれた気でいたけど。
アースサーチで追った男の足取りだが、西の海岸近くにある穴の中から動いていない。
穴というか、階段があって、地下へと降りているように見える。詳細は近くまで行かないと判らないな。
「居場所が判ってんなら、こっちからやっつけに行くかい」
「ああ、待て待て。ちょっと待って。悪い子じゃ無いかもしれないし。ちょっと盗んだバイクで走っちゃった感じなだけで」
「私のバイクを盗んだら、ただでは済まさないわよ?」
お前のじゃねえよ、あれは。貸してるだけだぞ、ユキ。
まあ、何はともあれスマホだな。
もう一度起動させてみるが、ロックがかかっている。指紋認証だ。
4桁の数字とかなら、根気よく入力すれば済んだんだけど。今風だ、セキュリティ意識が高い。
仕方ない。あんまり教育上良くないが、まあ、事を穏便に済ませるためだ。
以前作った片栗粉。その粉末をスマホに振りかける。
そして、注意して粉を落とす。
スマホの表面には、使用者の指紋が浮かび上がる。
ここで一旦石化収納。
各所の指紋の形状をディテクト。
でもって……わらび餅でいいか。ディテクトした形状に合わせて。平面にしたわらび餅の表面に溝を成形する。
収納コピーと言うよりは、収納転写だな。
作った指紋パターンを一通り試す。
「開いた」
ロック解除成功である。
「さて、じゃあちょっと行ってくるな」
此処からは話し合いだ。
「旦那だけで大丈夫なのかい?」
「そうは行っても、エレメアを守る戦力は要るだろ。たまにキツいぞ、この島」
アレとか、アレとか……。
「なあ、ニーナ。あたし達と一緒に、この場を守ってくれって言ったら……」
「断る。妾を頼るような性根なら、最初から世界樹に守られた島に引っ込んでおれ、戯けが」
なんか言い方がキツいな、今日のニーナ。
シンディが、立場のせいで貧乏くじを引いてばかりだってのもあるが。
悲しきかな、中間管理職。
「まあ、シンディもチームの仲間の事が無ければ言わないことだろ。すぐ戻るから、みんなで待ってろよ」
喧嘩はやめてね。
さて、問題の地下への入り口。
なんか遺跡っぽくも見えるな。ポツンと一軒家の地下室だけが残った、みたいな。
ま、何はともあれ、ブラックボルダーの拡声器で遺跡の中へ声をかける。
「シンドウ=タケル君。シンドウ=タケル君。大人しく出てきなさい」
暫し待つ。……反応がないな。
まあ、出入り口付近で様子を伺っているのは、アースサーチで丸分かりだが。
「大人しく出てこない場合は、君のスマホの中にあった日記の内容を読み上げる。繰り返す……」
「やめろっ。俺のスマホ返しやがれっ」
あ、出てきた、出てきた。




