118話 誰だ誰だ誰だ
最初に目に付いたのは巨大なハンマー。
それを振るうのは一人の男。
黒い軍服のような服を着崩している若い男だ。
「そりゃ」
アースソードを横に振ってこれを迎撃。
狙いは適当。タイミングだけでなんとか有効打に持って行く。
下手すると、バッサリいってしまうかもしれないが、まあ、向こうから襲いかかってきたんだしな。
しかし、そんな心配は杞憂だった。
「マジか」
ハンマーの一撃は狙いを変え、右のアースソードと打ち合う。そしてアースソードが砕ける。
ティラノサウルス以上でライオネルさん並みなのかよ、あのハンマー。
「おい、ニーナ。外の世界に人間は居ないんじゃなかったのかよ」
「人族の国がないとゆうただけじゃぞ。隠れ住んでいるくらいは居っても不思議はない。こんなところに居るのは知らんかったがの」
人族……だよな、どう見ても。
「うおっ」
動きが速いっ。武器の無い右側に回り込んできたそいつは、こっちの胴体、すなわちコックピットを狙って攻撃してくる。
とっさに右腕を上げるものの、相手のハンマーは容易くそれを破壊してくる。
右腕をも失うブラックボルダー。
そして、ハンマーの勢いはそのまま回転を続け、次の一撃へと繋がる。
今度は頭部ごと潰すとばかりに振るわれるハンマー。
ガッチャァァァ。
躍り出た影が交差する。
翼は無いけど白いそれは、両手のナイフでハンマーを受け止めていた。
「ヨシツグでしょ、無事?」
ハンマーをはね除け、さらには男を蹴り飛ばし、ブラックボルダーの上に着地したのはユキだった。
「そっちこそ。怪我とか無いか?」
外部への伝声管で呼び掛ける。
「面倒かけちゃったみたいね。大丈夫、みんな何ともないわ。来てくれてアリガト」
なんか、いつもよりも態度が柔らかい感じだな、こいつ。
普段は、男への苦手意識から生まれた殴り癖が問題なわけだけれど、ブラックボルダー経由なら大丈夫なのかな?
ずっとブラックボルダーの中に居ればいいのか、俺。
それはさておき、これで二対一。
不利を悟ったであろう男は、身を翻し元の茂みへ。
「逃がさないわよっ」
後を追おうとするユキ。俺はそれを止める。
「待った、追わなくていい」
男の足取りはアースサーチで追えている。それよりは他の連中と先に合流した方が良い。
それと……。
男が十分離れたことを確認して、ブラックボルダーから降りる。
地面に落ちている、手のひらサイズの四角い板。
「おっと、まずは収納っ」
収納は弾かれる。なので石化収納。こっちは成功。
「でもって、収納コピー」
複製して、取り出した黒い色をした板。
片面はガラスのよう。
隅に書いてある、見覚えのある電気メーカーのロゴ。
「……スマホじゃんね」
ユキに蹴られたときに男が落としたもの。それは現代日本における文明の利器だった。




