112話 カケテマス
なんとかサルガッソエリアを安全に早く抜けたい。
「捕まっても害が無いのであれば、そのまま加速すれば良かろう」
まあ、そうだな。
クルーズフォームの推進には船外スクリューを使っている。
機体の一部にさえなっていれば、アースアクチュエータは回せるので、漏水を気にするような接続部も無い。
どこまでが稼働部分と判断されて、植物から拘束されるかの問題だな。
「ちなみに、船で抜けたときは、どうやって船を進めてたんだ?」
「楷で漕いでたわさ」
うん、安定の脳筋力押しだな。
「で、植物で拘束された、と」
「わさ、わさ。動くものは楷だろうと人間だろうと捕まるわさ。多分拘束魔法だわさ」
ああ、なんか前にエレメアも使ってたな、そんなの。
とりあえず、スクリューで試してみるか。
軽石で小舟をクリエイト。
懐かしのスターリングエンジンを乗せてスクリューを回せるように連結。
マグマを投入して発進。
北へむけて海面を滑るようにモーターボートは進む。
そして、あえなく拘束されて動きを止めた。
「ああ、やっぱスクリューも駄目か」
望遠鏡で覗いてみたが、特に重点的に植物が絡みつき、スクリューが固定されてしまっている。
スクリュー部分にカバーを被せたらどうか? ……駄目でした。隙間があれば入って行って動くものを捕らえるみたい。
さて、どうしたものか。
「どうした、どうした? やはり飛んで行くかの?」
「ニーナが運んでくれれば、一番早いんだけど」
「ドラゴンを都合よく使おうとするでないわ。妾は傍観者よ」
どこかで聞いたような台詞だな。
お前は甘党で、シロップをかけてる人だろうよ。
「まあ、要するに、動かない推進力があればいいんだろ?」
言葉が若干おかしい気もするが。
今度作るのは金属製の小船だ。
水に浮かせ、後部には細長い穴。
後ろから槍で突き刺して変形したかのように穴状の凹みとなっている。
穴が船の内側に伸びた先に、薪を置いて着火。
スポポポポポポポポッ。
軽快な音を立てて船は北へ向かう。
「うん、良さそうだな」
船自体は拘束されるものの、推進力が止まることはなく、北の海を駆けて行った。
早速ブラックボルダークルーズフォームに追加。
俺が乗り込む分には、直接加熱すれば良い。
なので、追加するのは単なる細い穴のみ。
「よし、じゃあ行くな」
クロウディアさんに声をかける。彼女には連絡役としての仕事があるだろう。
渡された物資はコンテナに収納してブラックボルダーに連結した。早速使うことになったな、これ。
そのまま進路を北へ。拘束を受けた後、加熱開始。
ブラックボルダーは海を走り行く。
「ほう、なかなか速いのう」
まあ、潜水艦の推進力にも使われるかって代物だしな。
「音が少々煩いがの」
だから、軍事利用はされてないんだよ。
原理、というか構造は簡単。
水面下にある凹部には外から海水が入ってくる。
ここを高い温度で加熱すると、瞬時に海水は気化、穴から外へ蒸気を吹き出す。
後ろへ蒸気を吹き出せば、その勢いが船を前に進めてくれる。
海水が入ってきては吹き出すのを繰り返すため、独特の音が出る。
ポンポン船ってやつだ。
魚の娘の話で一瞬だけ知名度があがったよな、これ。
しばらく進むと無事サルガッソエリアを抜けた。
まあ、こんな場所にモンスターとかいるわけ無いか。




