110話 北へと向かう道すがら
北の大地探索チームは、まずエルフの森と獣人の森との境目に位置する海岸に拠点を設けたらしい。
エヴァンゼリンさんに連れられて酒場へ向かい、そんな説明を受けた。
懸念であったエルフ族は、見て見ぬふりで積極的には関与していないそうだ。
そのため、エルフの森は通らず、船を使っての物資や人員の運搬が予定されている。
「ふうん、ちゃんと補給も考えてるんだな」
冒険者っていうから、それぞれのチームで勝手に新天地を冒険、とかありそうだと思ったけど。
「そこで最初に躓いたんだそうだぜ」
依頼に関する説明をマスターが続ける。
「エルフの森は海にも続いていたそうでな。北へ向かう船を出しても、植物の根に捕まっちまう」
「捕まった船は?」
「そのまま、北へ流されて行くそうだ」
沈む訳じゃないのか。
あ、でも消息不明とか言ってたっけ?
「動きは取れなくなるが、そのまま北に抜けてしまえば解放されるんだとよ」
「あれ? じゃあ、連絡は取れてるのか?」
「そこまではな。獣人族で、飛べる連中が対応している」
ふむ。要するに、世界樹の守りってやつの一環なのか。本来は外からやってくる相手を追い出す感じなのだろうか。
「なもんでな。お前さんの空飛ぶ機械ってのでまずは向かって貰いたい」
「消息を絶ったって聞いたけど?」
「北に抜けたところでも拠点を作って、探索を始めたらしいんだが、そこでの話だな。詳細が判ってないから、現地で確認してくれ」
「わかった。了解だ」
ま、腹空かせてるだろうから、甘いものでも持っていってやろう。
若者の尻拭いをするのも年長者の役目。生活に余裕のある早期リタイアみたいなものだしな、俺。
ってことで、早速街の外に出て乗り物召喚。
「カモン。ブラックボルダー、ホバーフォームッ」
今回は、マイ・ジェットではなく、ブラックボルダーだ。乗客もいないし、モンスター対策も要りそうだしな。
ホバーフォームは人型のバトルフォームとジェットフォームの中間形態で、滑走路の無い場所でも離着陸ができる。
一旦ホバーで機体を浮かせて加速し、ジェットフォームへ移行。
あとは、大陸一周したときの経路で飛べば、まあ昼にはその拠点とやらに着くだろう。
ウィステラソンを抜けて、ストンフォレストを左に置き北上する。
と、そこで頭上からの音。
「また、遠出かの? 妾も連れて行くが良いぞ」
ニーナが天井ドアから顔を出した。




