109話 戦い終わって。
「だんなぁ、宴会には参加しないのかい?」
家に戻って休んでいたところに、シンディがやって来た。
「晩飯は食べたぞ。この後って、あれだろ。田舎で良くやる婚活パーティーみたいな? 俺がいたって居たたまれないだろ」
定番と言えば定番だ。きれいに着飾った年頃の娘に、青年連中がアプローチして、冬の間にカップル成立、とかそんなやつ。
今回は近隣の街や村からも人が集まってるはずだし、さぞ盛大にやるだろう、
「ま、好きにすりゃいいけどねぇ」
そう言ってシンディは手に持った瓶をそのまま口に運ぶ。
お前らは逆の意味で逃げてきたのかな?
「……なあ、だんな。だんなはこれからどうするんだい?」
「え? これからって?」
とりあえず、冬はこたつでミカンは欠かせないな、くらいは思っているが。
「外の世界の探検に行かないのかい?」
「行かないよ?」
「は? なんでさ」
なんで行くのさ?
いくら、世界地図を手に入れたからって、世界の隅々まで旅行しようとか、思わないだろ?
世界中の国に旅行する、なんてやったとしても、点と点での観光にしかならないよね。身近にだって知らない街や村なんて山ほどあるだろうに。
まあ、前人未到の秘境に、自分の知らない素晴らしいものがあるんじゃないか、とか思っちゃうのかも知れないけど、そんなものは無いのよ。
快適な自宅が一番素晴らしい場所なんだよね、結局。
「あたしは、てっきり、だんなは海の向こうに行っちまうもんかと思ってたんだがねぇ」
「ないない。そりゃ、何か用事でも出来れば行くかも知れないけど、目的も無しに行ったりはしないよ」
「……そうかい」
なんでそんな勘違いをしてしまうのかね。
「……あたしは、行くよ。北の大地への探索チームが組まれるんだ。それに参加する。冬の間に準備して。春には出発する」
ふうん。
「まあ、良いんじゃないか。行きたいって言うのなら」
「ああ。行きたいから行く」
こいつも、若者の顔してるんだなぁ。普段は苦労人って感じが強かったけど。
「骨休めに戻ってきたら顔出せよ」
「そうだねぇ。ここは、休むのには良い場所だ。土産話くらいは持ってくるさ」
そうして、慌ただしく準備の冬は過ぎ、春になってシンディ達は旅立った。
地図作成のエキスパートであるマーミャさん、連絡係のクロウディアさんも一緒だ。
一気に人が少なくなってしまったな、マッターホルンも。
まあ、すぐ隣のバードマウントはどんどん人が増えて大賑わいなのだけれどね。
ニーナは相変わらず突然にやって来るが、それ以外でもライオネルさんにドラスレ君、酒場のマスターまでやって来ては、たまに温泉で酒を飲んでいく。
……なんか、おっさん率上がったな。
そんな、ある日のこと。
「ヨシツグさん、緊急連絡ですっ」
俺の寝室に入り込んできたのはエヴァンゼリンさん。
本の在庫でも切れたかな?
「王女様達との連絡が途切れました。指名依頼です。救助に向かって下さいっ」
また、少し忙しくなりそうだなぁ……。




