107話 VSドラゴンスレイヤー。
ステージでは件の司会者がテンション高く場を盛り上げている。
「さあ、予定は変わってしまったがぁ、お待ちかねのエキシビジョンマッチだぁ」
舞台の一方にはドラスレ君。軽装にも見える鎧姿に、腰には両手剣を吊るしている。
そこに向かい合うのが、俺。
「バードマウント領主、ノスト=グランバードがぁ、マッターホルン領主、ヨシツグ=マツダと一騎討ちを行うぜぇぇ」
いや、俺って領主って訳じゃないんだけど。あれはただの私有地よ?
だが、訂正する間もなく、観客は勝手に盛り上がる。
ほんと、あの司会者の盛り上げスキルは何なんだろうね。負けてられんな。
「ヨシツグさん、よろしくお願いします」
く、爽やか青年オーラ満載で、ドラスレ君が声をかけてくる。
「俺は手加減なしだ。出来る全てでやらせてもらうよ」
「望むところです。楽しみですね」
……言ったな。後で後悔するなよ。
「カモンッ、ブラックボルダー召喚っ。ビーグルフォームッ!」
宣言すると共に、地面から出現する車形態のブラックボルダー。
ちなみに、指パッチンは未だに鳴らせない。
出現箇所は俺の真下。そのままブラックボルダーの上に立つ形になる。
「いくぞっ、とうっ」
掛け声と共に運転席へと飛び降り、着座。
このために天井にも出入り口を作ってあるのだ。
「チェーンジッ、ブラックボルダーッ」
前輪が跳ね上がるように車体を起こしたブラックボルダーは、その形を変える。回転し、伸縮し、その変化一つ一つがポーズを取り続ける。
両の足が地面を踏みしめる。
両の手が地面を掴む。
背に大きく広がる翼。
頭部を長い首が持ち上げ、雄叫びを上げる。
同様に長く伸びた尾が地面を叩く。
「ブラックボルダー、ドラゴンフォームッ」
そこにあるのは、黒い竜の姿。
ふはははははははっ。人型にしかなれないと言った覚えはなぁぁい。
当然、他にもマイ・ジェット形態にもなれるのだっ。
変形し始めは静まり返った観客席も、盛り上がりを取り戻す。
一方で、未だに度肝を抜かれたままのドラスレ君。隙だらけだぜっ。
まあ、気持ちは判る。聞いてないよー、とでも思っているのだろう。
だが、世の中とはそういうものなのだ。今日はそれを心の髄まで教えてしんぜようぞ。
「がおぉぉぉぉぉぁ!」
先制攻撃の前爪による横凪ぎの攻撃。
これをとっさに下がることで回避するドラスレ君。
だが、こちらの攻撃はまだ続くぞっ。
ブラックボルダーをその場で一回転させる。
回転に合わせてしなり、伸びる尾。
それは巨大な鞭となってさらにドラスレ君を横から襲う。
「くっ」
ドラスレ君は迫る鞭を背面跳びでかわして着地、剣を抜刀する。
カッコいいな、おいっ。
「行きますよっ」
律儀に宣言してから突っ込んでくる。
それを真っ正面から竜の頭が迎え撃つ。
「ファイアブレスッ」
大きく開いた口から、炎を吹き付ける。
咄嗟に横ステップでドラスレ君は逃れ、炎は当たらない。
しかし、まだっ。
竜の首は炎を吹き出したまま、首を振り、炎による範囲攻撃へと移行。
逃げ道を失ったドラスレ君は再び後退し、距離を取る。
「やりますね。楽しくなってきました」
意外と、バトルジャンキーなのかな?
しかし、君の思うような勝負にはしてやらないもんね。
「今度は、こちらの番ですっ」
そういうと共に、姿を消すドラスレ君。
いや、その素早い動きを捉えられていないだけ。
しかし、ここはステージの上。俺の死角を突いたとしても、観客は目で追っている。
ドラスレ君が、いるのは、上っ。
「まずは、その炎を止めさせますっ」
そう宣言すると同時に、剣を一閃。
それはブラックボルダーの長く伸びた首へと打ち付けられた。




