103話 祭りだ祭り。
「あ、これ美味しいですね」
大根寿司モドキをポリポリと食べてライオネルさんが言う。
気に入ってくれたようだ。歯応えも良いしね。
まあ、本来は大根ではなく蕪を使って、麹で発酵させるものだけれど、それを実現させるには足りないものが多い。先は遠いな。
それでも、温めた透明な酒を共にすれば間違いなく美味い。
白ワインしかないのは悲しい点ではあるが。
ま、好きなだけ食べてもらおう。露天なので石化コピーしたもので良ければいくらでも出せる。
出した後にこっそり石化解除でチンしているのは秘密だけどね。
「いや、本当に美味しいですよ、これ。名物になりますか?」
ドラスレ君は風呂に入っていても仕事のことばかりだな。
「どうだろ。魚を使うし、どちらかというとウィステラソンの料理かなあ」
モドキとは言え、寿司だしね。
「うーん、そうですか。でも……。いやしかし……」
なんだろう? また何か悩んでる?
「じつは、ヨシツグさんにもぜひアイデアを出して欲しいのです」
「いいけど、何?」
「もうすぐ、収穫祭を行う予定なのです。新しい街の御披露目の意味もあって、特産品を使った屋台や、近隣からも人を呼べるように、色々考えたいのです」
へえ、もうそんな時期なのか。ついこの間まで暑さで茹だってたのにねえ。
しかし、祭りかぁ。
「食べ物の屋台は鉄板だよねえ。焼きそば、たこ焼き、いか焼き、唐揚げ、鈴カステラ、りんご飴に綿飴……」
「ちょっ、待ってください、いきなりそんなたくさん……」
「ゲームも欲しいよね。射的とか、輪投げとか、金魚すくいにヨーヨーすくい、紐くじとか」
「ゲ、ゲームが屋台?」
「あ、お化け屋敷とか出来るのかな? このせか……じゃなくてこの辺り?」
「いえ、ゴーストは危険ですので、そういうのはちょっと……」
「人族の祭りですか、良いですねえ。僕たちも参加できますか?」
「ああ、いったんここに来て貰ってから、人の姿で街に入ってくれれば良いんじゃないかな。小銭が要るなら両替えくらいするし」
「助かります」
「……ド、ドラゴンの方がいらっしゃるのですか?」
まあ、祭りだもんねっ。
そんな訳で、風呂から上がっていつものメンバーも交えての企画会議。
ライオネルさんは山に帰った。実は、ニーナよりも近いお隣さんだったらしい。
ニーナの家は山の上の方っぽいしなぁ。
「はい、じゃあ、アイデアとしては結構出てきたね。この中から、出来そうなものは積極的にやっていくってことでいいかな」
何故か、シンディが取りまとめている。ドラスレ君がやるんじゃないのか。
しかし、やはり食べ物屋台が多い。食事以外にも女性陣からはスイーツの要望が多かった。一人だけ激辛屋台を推しているのがいたけど。まあ、そういうのが一つ混ざるくらいは許容範囲か。
この世界じゃ、調理師免許なんて無いんだろうしね。祭りの屋台くらい気軽に出しても良いのだろう。
もっとも、日本でも生ものさえ出さなければ調理師免許は要らないらしいけど。
街の住民や近隣の村には、屋台でお金の代わりに使えるチケットも一定数配布するらしい。大盤振る舞いだな、ドラスレ君。
「でも、もう少しイベントって感じのものも欲しいねぇ、店を開くだけじゃ特別感がイマイチだし」
「中央ステージとか作るんじゃないのか? で、有志で楽器演奏とか、のど自慢大会とか」
「演奏までゆくと、準備期間が要りますわね。来年やると発表するくらいですかしら、今年は」
「吟遊詩人や芸人を雇うくらいは、有りかしらね」
そうか、気が向いたらノリで参加できる感じが良いのか。
「じゃあ、ミスコンとかどうだ? お前らでも参加でき……」
「ああん?」
……いや、そう睨むな、シンディ。誰しも向き不向きはあるから。
「う、腕相撲大会なんてのもいいな。もういっそ闘技大会でも開くか。なんなら、特設リング作っちゃうぞ」
石製だけどな。天下一が決まりそうだ。
「街の人が参加しますかねぇ? 自警団の訓練でも試合は普段からやってますし」
「そりゃあ、他の街とか、王都とか、他の国とかから腕自慢が来れば盛り上がるんじゃないか?」
「帝都でも、武闘大会は開かれるでござるが、そのための景品はかなりスゴいでござるよ」
うーん、景品か。……米一年分とかじゃだめかな。
猛者が集まってきそうな景品といってもなあ。
「あ、優勝者には副賞で、領主とエキシビジョンマッチができるっていうのはどうだろう? 有名なんだよな、ドラゴンスレイヤー」
それなら、実質費用はかからない。
「いえ、ちょっと、そういうのは……」
「お、いいねぇ。ノストは普段、そういうのに参加してないしね。宣伝すれば案外呼べるかも知れないよ」
お前が戦いたいだけじゃないよな、シンディ?
今、あからさまにドラスレ君の言葉を遮ったよな。
ま、街のためだ。一肌脱いでくれ。




