101話 燃え上がれ。
「さあ、その力見せてみよ、ヨシツグよっ。相手にとって不足はなかろうっ」
いつの間にか元の場所に戻ってニーナが言う。
「死んだわね、ヨシツグ」
「……さすがに、ニーナもそこまではしないんじゃ」
「あたしらには判らん、どうにもできん」
銀竜は翼を広げると、その巨体を空中に浮かせる。
高所から落下の勢いを加え、ブラックボルダーへと迫る。
ブラックボルダーの黒い巨身と竜の銀がぶつかり合う。
「フレイムフィストォォォ」
右腕を正拳突きで繰り出すブラックボルダー。
ブラックボルダーと銀竜の正面衝突の結果は、……互角っ。
「おおぅ。止めたぞ。すごいねぇ」
「どのあたりがフレイムですかしら?」
勝負は仕切り直し。銀竜は再び距離を開ける。
「させんっ、アースキャノンっ」
地面から出現する巨大な筒。その太さ、長さはブラックボルダーが抱えてなお長大。
同時に、ブラックボルダーの前方に巨大な盾が出現する。
脇に抱えた砲筒の先を盾に載せて固定。
「シャイニング、ショォォォット」
空中へと飛び上がろうとする銀竜に向けての砲撃。それは一撃に留まらず、砲弾が許す限りの連続攻撃。
一発命中する度に銀竜は爆炎に包まれる。
「どのあたりがシャイニングになるのかしら?」
「気にするだけ無駄だわよ、エレメア」
砲弾と炎に包まれた銀竜はその体を大地へと下ろした。
「いくぞ、とどめだ!」
「もう、とどめなのかい?」
「黙って見るでござるよっ」
「アース、ブレェェェェド」
砲と盾が大地に収納され、代わりに出てきたのは剣の柄。
それを両手で掴み、地面から引き出す。
その刀身は、ブラックボルダーの巨体と比べてもあまりにも大きい。
「アースブレード、バーニングチャージッ」
頭上へと掲げた刀身が炎に包まれて真っ赤に赤熱した。
「今度はちゃんとバーニングでしたわね」
「しいっ。最後まで見ましょう」
「うおおぉぉぉぉっ」
叫び声と共にブラックボルダーの全身から地面に向けて熱風が吹き出す。
その勢いはブラックボルダーの巨体をも上空へと高く持ち上げた。
「バーニングブレード、稲妻斬りぃぃぃぃ」
上空からの落下の勢いを載せ、その巨大な刀身は未だ地面に伏せる銀竜へと打ち降ろされる。
銀竜を大地ごと粉砕するかのような一撃は、打ち降ろされると共に、更なる爆炎をもたらした。
「今度は稲妻ですのね」
「バーニングで、稲妻なんでしょ。いいんじゃない? もうそれで」
「どぅえぇぇいっ!」
燃え盛る炎を背に、最後の決めポーズ。
それは武道における残心とも言えた。
背後からの赤い炎に、ブラックボルダーの黒いシルエットが色濃く浮かぶ。
「決まりましたっ」
「カッコいいでござるっ」
「はいっ、カッコいいですぅ」
燃える炎の音だけが残り、マッターホルンは静寂に包まれる。
そして、それを最初に打ち破ったのはニーナの声。
「おぉぉぉぉ。解るっ解るぞぉぉ。妾のこの胸が真っ赤に燃えておるっ。この胸の高まりっ、熱さっ。この高揚を描き残せと轟き叫んでおるわぁぁぁっ」
ニーナは大きく翼を広げる。
「こうしてはおれん。すぐに描かねばぁぁぁ」
そうしてニーナは山に帰っていった。




