100話 熱い願い繋がるとき。
明けて翌日。
俺は家の外でニーナを待つ。
これは男の勝負である。
「だんな、中で待ってれば顔出すんじゃないかい?」
あくびを隠そうともせずシンディが言ってくる。
こいつら、暇なのか?
「まあ、いい。主賓はまだだが、一足先に御披露目しようじゃないか」
俺は家からさらに少し離れ、構えを取る。
「出でよっ、マイ・カーっ」
大地収納からマイ・カーが出てくる様は、地面から機体が持ち上がって湧き出す様。
出現したマイ・カーはこれまでの物よりも大きく、そして厚い装甲によって武装されていた。
「新型ですねぇ」
ふっ、見た目だけではない。アースアクチュエータをふんだんに使うことで、そのパワーは今までの比ではない。
高速ダッシュ、そこからのスピンターン。壁走りと、障害物を使ってのジャンプアクション。
「ほほう、ずいぶんと力強くなったではないか」
む、来たな。
「やっと来たか、ニーナ。今から、お前に真の熱血というものを見せてやる」
運転席から伝声管を通して話す俺の言葉は、内部空洞で増幅されて指向性を持たせると共に強く伝わる。
腕を組み、上体をそらしてこちらを見やるニーナはいつもの不適な態度。
全身で、受けてたつ、と語っている。
「いくぞっ。命を懸けた、フォームチェーンジッ」
マイ・カーは地面からの反動で飛び上がり、前輪が大きく持ち上がる。
全体各所の装甲が拡張または収納し、大きく張り出す場所も。
全体が回転する様は、舞踏会でダンスを披露する様にも似る。
一つ、一つの動きが、一つ、一つの形状を変化させ、そしてそれは新たな一つの形へと収束する。
ハリウッド映画風の時間をかけないお手軽映像ではない。ジャパニメーション風外連味たっぷりの変身バンクである。
そこに立つのは、黒き鎧に身を包む騎士の姿。
「ブラァァック、ボルダァァァッ!」
最後には決めポーズ。
「今のは、呪文なのかい?」
「名前だと思いますよ」
「ブラックボルダーの変身には、0.05秒しかかからないっ!」
「1分くらいかかってたわよね」
「あれじゃないですか? ヨシツグさんがよく言うお約束とか」
決めポーズはもちろん主賓であるニーナへ向けているが、他の連中もその後ろ、すなわち家の前に集まっている。
「くっくっくっ。なるほどのう、実物を見せようというのじゃな。ならばっ、足りぬものがあろうのう。そのまま待っておるが良いぞっ」
ニーナはそう言うと翼をはためかせて山へと行く。
「えーと、このままで待っているのでござるかな? 一度休憩するとか……」
「ああ、あれは意地になってるねぇ」
「なんか、疲れそうなポーズですけど、本人は乗ってるだけですしね」
はたして、このままどれだけの時が過ぎるか、とそう皆が思い浮かべ出した頃。
キュィィィィィィン。
マッターホルン全体へと響くかん高い音。
それは上空からの圧力を領土全体へと等しくかける。
ズバァァァン。
轟音と共に土煙が舞い、その中から出てきたものは、銀色の鱗を全身に纏うドラゴンだった。




