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第29話  戦艦引渡作戦ー2

―三重県四日市市―


ナインたちは、Black Perl社の本店所在地があるとされる、三重県四日市市のとある工業地区に来ていた。ここは、あまり鬼の襲撃の影響を受けていないためか、崩壊しそうな建物とか陥没してしまっている道路などはあまりみられない。そのため、街行く人々も、世間で鬼が暴れまわっていることをまるで存ぜぬかのように、平和そうに生活をしているのである。もっとも、関東圏内における山梨県甲府市で起こったような現象は、ここでも発生しているようだ。すなわち、愛知県が崩壊した東京都にあたるので、そこからの避難民が大勢この三重県になだれこんできているのである。


「目標はこの辺りですね、ナインさん」


小さな秘書、『あいちゃん』は、代表理事から譲り受けた地図データをナインの前に提示してくれた。どうやら、目的地は近いらしい。


「少し、降下してみますか」


ナインは、着地地点として適当な場所を探知するため、地上の様子が見える程度に、高度を下げることにする。さらに加えて、ある程度の高さからでも、地上の様子を細かく窺えるよう、鬼の視力を倍化させていく。


「えぇと、これがあっちで、これがそれだから・・」


秘書は、地図と鬼の目に写された像を照らし合わせて、目標を探す。


「あ、ありましたよ、ナインさん。あの建物です。看板にちゃんと『株式会社Black Perl』と書いてあるでしょう」


『あいちゃん』は、ある大きな工場を指し示した。たしかに、それはナインの目的地に該当する建物であるようだ。


「ただ、あそこは人も多そうですから、このまま降りるわけにはいきませんね。どこかに、プロトオーガを隠せる場所でもあればいいんですけど」


そういって、ナインは近くに、人の立ちよらなそうな場所がないかを探る。すると、当該工場からおよそ1キロメートルほど離れた場所に、木がたくさん生い茂ったエリアがあるのを発見できた。少し歩くことになるが、仕方ないであろう。


「じゃあ、あの地点に降りましょう」


そして、ナインは着地点の世界情報を集め、瞬間移動の準備をした。


「またですか。いつ自分が消えてしまうかもわからないですから、毎回冷や冷やするんですよね・・」

「でも、鬼に食われるのとどっちがいいですか?」

「そりゃもう、鬼に食われるよりはましですけど」

「それなら、早く行きましょうよ」

「はいはい。わかりましたぁ」


秘書は、観念し自分が消えてしまわないよう、目を閉じて祈りを始めた。ナインは、この人が消えるはずなんてないのに、と苦笑した。なぜなら、そもそも虚物化状態は、認識のみによって立脚しているので、消えたくないと自分を必死に維持している人が消えるなどありえないからである。

そして、気づけば、ナインたちは木陰の下に来ていた。もちろん、臆病な秘書は消えてなどなく、ナインが声をかけるまで目を閉じて祈っていた。


(二)

プロトオーガを置いてきた場所から、徒歩で20分ほど歩いたところにBlack Perl社の巨大な造船工場があった。巨大な造船工場といっても、無駄に敷地だけが広いといった感じで、すっかりさび付いてしまったプレハブの建物ばかりが並んでいる。しかも、建物のガラス窓は、堆積した汚れでくもってしまっており、相当古い工場であることが窺える。


「こんなところに戦艦なんてあるのでしょうか?」


頼りない秘書は、ゴミ処理場のような工場を見渡しては不安になってきた。


「あ、従業員の人かな」


ナインは、作業服を着たひとりの男を目撃する。


「すいません」


ふたりは、その男の下へと駆け寄った。


「あの、社長室はどこでしょうか?」

「社長は私ですが?何か御用でしょうか」


その男は社長と名乗った。それにしても、この男は非常にやせ細っており、剃り残した無精ひげまでだらしなく残して、社長としての威厳を微塵も感じないのである。まるで、突き飛ばしたらそれだけで倒れてしまいそうなくらい、ひょろひょろとした男であった。もっとも、この男が社長とされているのは象徴的な意味合いがあるに過ぎず、事実上の経営権は、親会社であるBlack Well社が選任した取締役たちによって担われているのであろう。


「あの、僕達は戦艦を受領しに来た者です。本社から連絡が来ていませんか?」

「ああ、たしかアーリー社様でしたね。会長から伺っております」


もちろん、アーリー社とは、偽名である。弥生遼子がメールで黒井会長に指図しておいたのだ。


「それで、目的物の方は・・」

「ええ、用意しております。こちらにどうぞ」


そういって、ひょろひょろの社長は、疲れた顔に精一杯の笑みを浮かべて、奥の巨大なガレージへとふたりを案内してくれた。

 

(三)

「これが、俺たちの戦艦か・・」


そこには、あまり立派とはいえない大型航空輸送機が用意されていた。とはいえ、オーガを5~6体分を収容可能な格納庫と、乗務員にとって必要となる最低限度の設備があるので、今のナインたちにとっては十分すぎる戦艦であろう。ただ、対空砲なども一切付いておらず、装甲も薄いため、本当に物を運ぶだけの戦艦であるようだ。だから、これを『戦』艦と呼ぶのは不適当であろう。


「あの、中を見てもいいですか?」


ナインは、少し遠くで秘書と商談中のBlack Perl社の社長に対して訊いてみた。


「ええ、どうぞ」


社長は、かすれた声で承諾の返事をしてくれた。ナインは早速、その中に入ることにする。


「格納庫の中は、このようになっているのか」


ナインは、この輸送機の格納庫内部の情報をしっかりと自分の頭の中に叩き込んだ。これで、プロトオーガを、この輸送機に積み込む条件は整った。あとは、プロトオーガのところへと戻り、虚物化による瞬間移動をすればよい。

ナインは、見学のために輸送機に入ってから10秒もしないうちに降りてきて、秘書に声をかける。


「たな・・、『あいちゃん』。僕、ちょっと行ってきますね」

「ええ、どうぞ」


ナインは、商談の方は秘書に任せて、いちはやく自分の鬼のところへと戻ることにした。社長は、そんなナインの不審な行動を疲れた目で不思議そうに見ていた。


「それでは、社長。交渉は成立ということでよろしいでしょうか?」


疲れていたのか、ぼぉっとしていた社長は、秘書の声でふと我に返る。


「ええ、私どもは既に本社から立替払いを受けておりますので、すぐにお乗りになられるのであれば、それで結構でございます」


社長は、それにしても変な客が来たものだなと考えていた。無料で送達するというのに、今から乗って帰るなどと言って聞かないなんて。そんな客を彼は今まで目にしたこともないのだ。しかし、本社からは十分に立替払いを受けていので、債権回収のめどが立たなくなるような危険はないからと、深くは考えなかった。


「では、契約書にサインをお願いします」


社長は、少しくたくたな契約書を取り出した。


「えぇと・・、株式会社アーリーっと。それで、代表取締役江藤太郎・・」


『あいちゃん』は、サインをしつつも、今現在、自分の足は完全に犯罪に浸かっていることを認識していた。このように文書の名義を偽ることは、私文書偽造罪である。さらに、必然的にこの偽造文書を使用することになるので、同行使罪も間もなく犯す予定である。秘書は、心の中で、自分を大事に育ててくれた両親へ懺悔していた。そう、全ては理事長のためである。あのお方のためならば、手を血で染めることも厭わないのだ。だからこそ、許してくださいと祈っていた。

秘書は、改めて自分の前にいる男を見る。今にも寝てしまいそうなうつろな目をしているし、立替払いも受けているのであるから、虚偽名義に利害を持たないであろう。そのように『あいちゃん』は、自分に言い聞かせたのだ。絶対に、手が後ろに回ることはない。多分。


「では、これで契約成立です」



(四)

一方、弥生遼子たちは、名古屋本隊の少し手前の戦線に到達していた。遠めに見ても、名古屋市は鬼の集団によって埋め尽くされており、まるで芋を洗うような鬼の密集地帯となっていた。そのため、前方は一面の緑の光によって満ち満ちているのであった。この点、東京もそこそこ地獄であったが、ここはもっとひどいことがうかがえる。もう、完全に防衛の対象としては看做されておらず、国家から見放されてしまった可哀想な都市であった。

しかしながら、それだけにこの名古屋市は東京陸運保険機構にとって、人間の入り込む余地などない絶好のポイントであった。


「社ちょぉ、鬼がいっぱいっすよ」


辰巳春樹は、まるで宝石箱を見るかのように目を輝かせていた。


「とりあえず、ナインたちから連絡があるまで我慢しなさい」


そう、戦闘は必要最低限でなければならない。あまりに早く交戦を始めても無駄であるばかりか、鬼を必要以上に破壊してしまうことになる。


「みんな、最後にもう一度、作戦内容を確認しよう」


桐生詩季は、緊張した声でそういった。


「私が、メイデンで着地ポイントを確保すればいいんだよね」


まもるが息を呑み、いう。


「そいで、俺とはるきが、ポイントに近寄ろうとする敵を・・」

「粉砕する!!」


グレイが、言いかけたところを、辰巳が代わりにいう。


「粉砕はともかく、私がまもるちゃんの援護だね」

「うん、しーちゃん。頼りにしてるよ」


詩季とまもるのコンビは、いつものように互いに顔を見合わせた。


「それで、後はナインが・・」


弥生は、何かをいいかけたが、噂をすればナインからの作戦開始を告げる連絡が入ったようである。


「よっしゃ、行くよ。あんたたち」


辰巳は、セアトのメンタルスフィアを覚醒させ、いち早く鬼の群れの中へと飛び込んでいった。


「おい、はるき。先走るんじゃねぇよ」


ゲイボルグ・Dも、セアトに続き、敵陣の中へと飛び込んでいった。


「じゃあ、私たちも行こうか」

「うん」


大人しい女子ふたり組は、最後に敵陣へと突入していった。



(五)

―名古屋市上空―

いちはやく、戦線に突っ込んでいった辰巳春樹は、誰よりも早く着陸ポイントの上空に到達した。そこから地上をみれば、満員のライヴ会場のように鬼どもが敷き詰められており、輸送機などとてもでないが着陸できそうもない。また、上空にも飛行型の鬼が大量に飛び交っている。


「餓鬼はもちろん、青鬼や黒鬼。それに、あれは新型の炎鬼かしらね。油断は禁物よ」


隣に乗っている弥生遼子が、念のために釘を刺した。もっとも。この少女が言葉を素直に聞くのであればよいのだが、期待はできなかった。なぜなら、彼女の顔を見ればわかるように、もう鬼を虐殺することしか頭になく、たとえ理事長の言葉といえど、全く耳に入っていないからである。それに加え、今朝のマスコミ騒動で、相当な鬱憤が蓄積しているのであろう。いくら弥生といえ、今の辰巳を止めることはできなかった。


「じゃあ、まずは着地ポイントにいるあんた達のどてっぱらに風穴を開けてあげるね」


セアトは、巨大な銃器をマテリアライズする。これは、広範囲を対象にする、グレネード・ランチャーである。そして、照準を着陸ポイントにわらわらと密集している鬼どもに向けるのである。

「これ一回使ってみたかったんだよね。非人道的兵器、その名もクラスターランチャー」

クラスター爆弾は、無駄に戦火を拡大させる非人道的兵器であるとして、国際法規では強く禁止されているものであるが、このセアトのクラスターランチャーはまさにそれをモデルにしている。その意味では、国際条約違反の兵器である。しかし、対象が鬼であるならば、人権擁護団体からの圧力もないであろうし、国際司法裁判所にチクられることもないであろう。そもそも、ここに人間の目撃者もいない。だから、心置きなく、これを使用できるのである。


「てめぇらは苦しみながら死ぬといいわ」


辰巳は、ためらいもせず、非人道的兵器を自分の真下にいる鬼どもへとぶち込んだ。核となる大きな弾丸から、次々と、小型の爆弾が発射されては、広範囲に物理的な効果を生じさせていくのである。

小型の弾には外法が仕組まれているのか、何かに着弾したとたんに、炸裂もしくは炎上する。炸裂した爆弾は、さらに小さな弾丸と化してあちこちを飛び回る。そして、地上にいる鬼たちは、至るところから飛び交ってくる無数の弾丸によって、肉片を散らしながらばたばたと倒れていく。他方、焼夷弾を含む小型爆弾は、鬼の生死を問わず、その身を焼き尽くす。まるで跳弾と炎上の二重奏曲を奏でているようであった。


「えげつねぇ、攻撃だな」


気づけば、ゲイボルグ・Dも、セアトに追いついてきていた。


「アンタだって、似たようなもんでしょ」


辰巳は、にやりとして言った。


「俺は残骸のあと処理ぐらいはしっかりやるさ」


クラスターランチャーの範囲内にできあがった地獄絵図を見ながら、グレイは言い返した。


「まあ見ててみ」


ゲイボルグ・D は、非人道兵器の傷跡が生々しい場所へと急降下する。かろうじて残っている鬼が、一斉にゲイボルグ・Dに襲い掛かる。


「オメェら全員、冥府へと消えな」


ゲイボルグ・Dはその右腕に結集した暗黒の邪気で、巨大な闇の剣を前方へと放出した。すると、その射程内にいる鬼は、まだ動けるかどうかを問わず、見も心もボロボロに枯渇させられ、地獄の底へと引きずりこまれてしまうのである。しかし、ゲイボルグは依然として敵に包囲されており、横からも後ろからも、敵はどんどん迫ってくるのである。


「そんなに死にてぇかよ!!」


他方、ゲイボルグ・Dは、自己を中心として、闇の巨剣を反時計回りに一周させるのである。次にこれに触れていった鬼から、その身を砕かれていき、粉塵となって消滅していくのだ。そして、巨大な剣が一周するころには、ゲイボルグ・Dを中心とした半径1キロメートル圏内は、綺麗に鬼がいなくなっていた。その部分だけ、不自然なほどに鬼がいないので、まるで絶海の孤島のようである。


「まもる、着地ポイントは完成だ。あとは、確保を頼むぜ」

「うん」


すると、ゲイボルグ・Dと入れ替わるように、鬼女メイデンと鬼女アリスが、綺麗な更地となった着地ポイントに降下する。そして、メイデンは自己のシールドの4分の3ほどを周囲に向けて射出し、結界を創造する。その結界は、半径50メートルほどの大きさがあり、結界の外壁のいたるところにいくつものシールドが巡回しているようだ。

敵の攻撃は、当然に結界の中にいるメイデンに対し、集中的になされた。無数の光球や、弾丸が飛び込んでくる。しかし、そのほとんどの攻撃は、攻撃能力が奪われるか、もしくは攻撃力がゼロ以下にまで減殺されるかで、メイデンまでに届くことはない。


「ふふ・・、今度は私の番ね・・」


まもるは、前方にいる鬼の塊をロックオンする。すると、メイデンの胸当てに、外界から流入した膨大なエネルギーが集結する。大型外法エネルギーランチャーである。平たく言えば、戦艦の主砲のようなものである。


「発射します」


メイデンに結集した巨大なエネルギー弾が勢いよく射出される。それは、巨大なエネルギー球体であり、大地を削り取りながら、雪だるまを転がして粉砕するがごとく、次々と前方の敵をすりつぶしてゆく。球体は、どんどん遠くへ飛んでいってしまい、次第に見えなくなってしまった。また、その通過点には、大地を削った跡以外に何も残らないのである。


「まもるちゃん、上から来てるよ!」


詩季は、上空から紅蓮の炎に包まれた鬼が急降下してくることを認めた。そして、その燃えるような拳でメイデンの結界を突破する。

他方、アリスがそれを迎撃する。すなわち、はさみ型物理属性兵器chopperをふりまわして、その拳を受け止める。それによって炎鬼が数秒ひるんでいる隙に、氷結攻撃の要件を充たしてしまうことにする。

対象を氷結するにあたっては、アリスの封印された眼球で氷結対象を見ること、またアリスから一定の範囲内にいることが必要である。あとは、外法属性攻撃の一般的要件である必要なメンタルポイントを供することも当然に加わる。もっとも、対象は現在、アリスのはさみが届く位置にいるので、射程の要件はほとんど無意味である。

アリスは、目隠しを解き放ち、その呪われし眼球で森羅万象あらゆる存在を絶対零度の力で滅するのである。炎鬼は、まずアリスに見つめられた燃える腕を単なる氷塊に変えられ、そのまま肩、胸と順次凍らせていく。これだけ凍らせれば十分であった。


「しーちゃん、ありがとう」


炎鬼のうしろにはメイデンがいた。その手には、巨大なエネルギーソードがある。本来、広範に外へと広がっていく性質を持つ外法エネルギーをゼロ収縮させ、ひとつの方向のみにそのエネルギーを結集し、大型の剣とするのである。メイデンはそれを氷結した肩の部分から叩き込んで、胸部ごと粉々にする。


「ホラホラ。あんたたち、そんなやつに時間食ってちゃダメだって」


辰巳が上から降りてきては、ふたりのやり方にケチをつける。セアトは、両手に銃器を携え、肩部・胸部の砲門を全開にしていた。


「はるきちゃん、それダメだってばぁ」


まもるは、辰巳を咎めた。どうやら、はた迷惑なことをやらかすらしい。


「大丈夫、大丈夫。社長もダメとは言ってないし」

「もう勝手になさい・・」


弥生は、半ば自棄的になっていた。


「じゃあ、行くぜぇぇぇ!!」


まずは、肩に内蔵されたミサイルポットを景気づけに連射し、胸部からは速射砲のような小型エネルギーマシンガンを連射する。このとき、セアトは特に照準を定めることはしなかった。適当にやっても誰かしらに命中するからである。

他方、両手の銃器のうち、右手に持っているのは西部式のショット・ガンか。つまり、銃身を一回転させれば、その遠心力で弾丸が装填されるタイプである。左手に持っているのは、先ほどのグレネード・ランチャーであるようだ。ちなみに、このグレネード・ランチャーも、ショット・ガンと同じ装填方式である。

セアトは、ショット・ガンとグレネード・ランチャーをほぼ同時に発射する。しかし、両者は通常の弾などではない。いずれも物理属性攻撃と外法属性攻撃との併合兵器である。ショット・ガンからは緑色の毒液のようなものが飛び散っていく。グレネード・ランチャーからは、透明なガラス玉のようなものが一発発射された。

ショット・ガンから飛び出たものは、溶解液のようなものである。通常の散弾に加え、付加的効力として銃創部分から装甲を侵略し、溶解させる。そのため、ショット・ガンの範囲にいた鬼の群れは、身体の部位を吹っ飛ばされたばかりでなく、その部分から解けてしまうのである。

他方、グレネード・ランチャーから放出されたのは、濃縮された外法エネルギーの塊である。先ほどメイデンが主砲を使用したが、あれの簡易型である。弾丸通過コースにいる敵を雪だるま式に巻き込んですりつぶしていくパワー型の兵器である。また、相当量の外法エネルギーが濃縮されていることから、厳密に命中しなくとも、そのエネルギーが持つ引力によって近くにいる鬼どもは、次々とそれに吸い込まれていってしまう。


「おらおらおらおらおら!!」


次に、セアトは両手の銃器に弾をこめるため、銃身を一回転させる。そして、ほぼ同時に、弾が装填されたような音を聞くと、今度はまた別の方向に向けて、弾丸を発射する。


「おいおい、これじゃあ、ナインが来る前にあいつぶっ倒れちまうよ」


グレイは、上空の敵を倒しながら、辰巳の暴走に呆れていた。もちろん、辰巳が倒れる要因とは、敵の攻撃ではなくて、自身の無茶によるMP切れである。


「お?噂をすれば・・」


空にいたグレイは、巨大な影がこちらに高速で接近してくることを捉えた。ようやく目的物が到着したようだ。


「待たせたなみんな」


ナインと田中愛は、引渡しの目的物を持ってきたのだ。


「よし、はるき。第2段階だ。目的物を死守すんぞ」


そういって、グレイは先に戦艦の護衛のため、すっとんでいった。


「えぇ~、もう終わりかよ」


辰巳は、不満を撒き散らしながら、砲門を閉じる。そして、グレイに続くのであった。


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