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颯くんが友達に告白されました

不定期更新です。

 高倉先輩は練習に全く来なくなった。皆んな、混合ダブルスを組んだ男子と仲良くなって楽しそうに練習しているのに、私は休みの人の補充枠に入って練習している。でも、試合の本番には出てくれるみたい。

 最初から高倉先輩は馴れ馴れしかったし、夏祭りの後も「秀才くんと別れて、俺にしない?」と言われたり、迷惑していたから、練習を休んでくれて良かったのかもしれない。混合ダブルスのペアの中には、実際に付き合い始めた子もいるみたいだけど。

 試合の後は打ち上げがあるけど、私は颯が応援しに来てくれるので、そのまま一緒に帰ろうと思っている。


 各校が集まり、試合は郊外のスポーツセンターで開かれた。久しぶりに会う高倉先輩は「俺、秀才くんと仲良くなったんだ。」とニコッと笑った。

 …颯くんも、何回か勉強を教えたって言ってた…

 ぶっつけ本番だったけれど、高倉先輩はかなり上手で、私のフォローを何度もしてくれ、驚くことに一回戦を突破できた。


「百合奈、あの観客席の人って颯くん?」

 朱音に声をかけられる。今…『颯くん』って聞こえたけど、聞き間違いかな…。観客席を見上げると、颯がいたので、手を振ると振り返してくれた。

「手、振ってくれた!やっぱりイケメン!」

 朱音が喜んで、手を振っている。朱音も私も、同じユニフォームに同じ髪型をしているので、もしかしたら颯も見分けがつかないかもしれない。


「百合奈、今日の打ち上げ行かないの?颯くんも連れてきてよー。私、声かけてくる!」

 やっぱり朱音は『颯くん』って呼んでいると分かり愕然としていると、朱音は勢いよく観客席に走っていき、二人は何かを話している。テニスコートから二人が笑い合う姿を見て、急に胸が苦しくなる。

 …私以外に笑いかけないでよ…

 醜い感情が蠢いて、私は二人から目を逸らした。高倉先輩に「おっ!秀才くん、モテモテだね!」と、からかわれる。

「あいつは林さん一筋だから大丈夫だよ。ほら、俺が林さんに話しかけたから、あいつすげぇ顔してる。分かりやすい奴…ははっ。」


 第二試合の号令があり、朱音が戻ってきた。

「颯くん、やっぱり打ち上げ来ないって。百合奈はいいなぁ…いつでも会えて。私、颯くんのこと好きになっちゃったかも。」

 私達の会話を聞いた高倉先輩がぎょっとした顔をしている。

「山本さん、相原は林さんしか好きにならないから諦めた方がいいよ。幼馴染の固い絆か何か知らないけど…あいつは男も女も関係なく、林さんか、それ以外か、その二択だから。」

 助け船を出してくれた高倉先輩が神様に見える…先輩はウィンクして、私の頭をポンポンと撫でた。二回戦も高倉先輩のおかげで勝ち進む…意外と良い人かもしれないと思うと試合も楽しくなってきた。三回戦は惜敗したけど、最後は先輩と笑顔でハイタッチした。


 試合が終わり、高校まで戻ると、皆が散り散りに帰っていく。打ち上げに行く人は、制服ではなく、隠れて私服に着替え、気合いを入れて化粧を施している。私は制服に着替えて正門を出ると、颯が待っていた。


「百合ちゃん、お疲れ!」

「今日は応援しに来てくれて、ありがとう!」

 その時、可愛い私服姿の朱音が現れて、背中から颯に抱きついた。

「颯くん、一緒に打ち上げ行こうよ!朱音の一生のお願い!!」

「…っ…離れてください…。」

 颯が朱音の腕を引き剥がそうとしているが、朱音はさらに力を強めて、颯の背中に顔を埋めている。私は茫然として、ただただ颯と朱音を交互に見た。

「私…颯くんのこと、好きになっちゃったの。百合奈と付き合ってるって分かってるけど、どうしても駄目なの!」

 友達が目の前で告白したのに…私は何もできずに、何も言い返せずに、血の気が引いて身体が動かない。

「…離せっ!」

 颯の大きな声を聞いて、はっと我に帰る。私は、駅に向かって逃げ出していた。走って走って…はらはらと溢れる涙が、冷たい風に乗って消えていく。もうすぐ駅に着く…急いで電車に駆け込みたい…ここから早く立ち去りたかった。


「百合奈っ!待って!」

 後ろから腕を掴まれて、ぐるっと勢いよく視界が回ると、そこには汗だくの颯が立っていた。


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