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若葉の兄〜祐哉SideStory〜

不定期更新です。

 うちの両親と颯んちの両親に「安全運転でお願いね!」と盛大に見送られている。


 …なんだこれ?…


 親から干渉されたことなんて無かったのに、俺が大学に行ってる間に何が起こった?…百合奈と颯が後部座席に仲良く座ろうとするから、「おい!どっちかは助手席に座れよ。」と怒ると、百合奈が「えぇ…やだよぉ。」と不貞腐れた。古い車なんだから、誰かは隣でナビしてくれよ…若葉マークなんだぞ!


「祐哉くん、俺が隣に座っても良い?」


「…颯の方が百倍良いわ。誰かさんじゃ目的地まで辿り着けるか分からないからな!…って、百合奈、寝るの早すぎるぞ!」


「…お兄ちゃん…煩い。」

 ルームミラー越しに後部座席で目を瞑っていた百合奈が薄ら目を開き、また閉じた。朝早くから洗面台の鏡と睨めっこしていたから、もう既に眠いんだろう。いつの間にか色気付きやがって…。


「祐哉くん、そろそろ青信号だよ?」


「おう、ありがとな!優しいな…颯は!」


「ふふっ…祐哉くん、大学楽しい?」

 時間を忘れて聞き上手な颯に近況を話していると、いつの間にか人生相談みたいになってきた。


「俺さぁ…彼女欲しいんだけど出来ないんだよなぁ…なんでだろー。何故かチャラ男だと勘違いされてるんだよ。」


「チャラ男??体格…とかかなぁ…その厳つい肩をちょっと小さくできると違うかもね。」


「ははっ…この肩は水泳の勲章だから!顔面偏差値がなぁ…颯みたいに美少年だったら良かったのに。」

 俺は肩幅が広く、どんな服を着ても上半身がピチピチで、女子達にプレッシャーを与える。うちの家系は色素薄めだから大量に出来たそばかすと百合奈以上に塩素でカスカスの茶髪が原因で、チャラく見えるんだろう…経験値ゼロの童貞なのに。


「俺は、祐哉くんの顔が好きだから何とも言えないけど。百合奈と似てて、すげぇ可愛いもん。」


「…えっ!?…す、すき?…かわ…いいか?」


「うん、可愛いよ!」


「そっか…なら、いいか…。」

 って、何で俺、颯にドキマギしてるんだよ!妹の彼氏にドキっとしたらマズいだろ!?二人の時間が無言で過ぎていく…堪らずにちらっと颯を見ると…整った鼻筋にツルツルの白い肌…黒目がちな可愛い垂れ目に艶のある黒髪が掛かっていて、薄紅色の唇が「祐哉くん、ちゃんと前見て?」と妖艶に微笑む。う、綺麗すぎる…ってダメダメ!


「…っ…颯もさ、百合奈よりもっと可愛げのある子と付き合えば良いのに。俺だったら、もっとお淑やかで可憐な子を好きになるけどなー。」


「…百合奈が世界で一番可愛いけど。」


「いやいや…冗談!?…どう見たって世界一のブスだろ?」

 横顔に突き刺さる颯の目線が怖すぎて、言い終わった後に後悔する。


「まぁ……いいや。祐哉くんの目が腐っているってことで。早くカノジョできるとイイネ。」

 後ろの百合奈を愛おしそうに見つめる颯…最後のイイネが棒読みすぎて呪いの言葉に聞こえたけど…当の妹は、呑気にだらけた顔で寝ている。


「…もうちょっとでサービスエリアだけど、休憩するか?」


「うん、百合奈を起こして休憩したい!」

 颯が嬉しそうに「生理中だからトイレ行かせないと…。」と呟いている。結局…こいつは昔から百合奈のことばっかりなんだよな…。


 トイレ休憩が終わると、颯と百合奈は仲良く後部座席に座って、一つのホットカフェオレを飲み合いっこしている。ラブラブじゃんか…俺の存在を消されている車内…一人寂しくブラックコーヒーをちびちび飲む。


「颯くん、スマホ鳴ってない?」


「あぁ…無視。」


「なんで?」

 百合奈が颯のズボンのポケットに手を入れて、もぞもぞっと無理やりスマホを出すと、颯は破顔して受け取った。


「百合ちゃん、くすぐったいよ。」


「こちょこちょこちょ〜っ!」


「ははっ…やめて…!ねぇ、電話出れなくてもいいの??」


「颯くんってば、ずるい!誰から?」


「高倉先輩だ…どうせろくでもないから出たくない。」


「ふふっ…出てあげてたら?絶対に颯くんと話したいんだよ。出ないと、こちょこちょの刑!」

 百合奈がガォーと両手を挙げて、颯を威嚇する。見たこともない顔で颯がケラケラ笑う。


「あははっ…分かった。出る出る!」


 …ピッ…


「もしもし……あけましておめでとうございます。……今年もよろしくお願いします。え?……今、初詣に行くところで。……百合奈とです。…明日?…行かないです。……はい、じゃ。」


「高倉先輩、何だって?」


「一緒に初詣行こうって言われた。あの人、友達いないのかな…?」


「それは、颯くんが高倉先輩に愛されてるからだよぉ!浮気者っ!」


「あのなぁ…俺が浮気すると思う?答えろよ。」

 百合奈は両頬をぷにっと摘まれて、ブス度が上がっている。「しにゃい…。」と答えると颯は満足そうに手を下ろした。誰だかは知らないけど、高倉先輩は絶世の美女で、百合奈は太刀打ち出来ない相手なんだろう。


「百合ちゃんも、スマホ鳴ってない?」


「あれぇ?心愛だ。…はい、もしもし!…あけおめことよろ!…今から?…高速道路のサービスエリアなの。…うん、ごめんね。大丈夫??何かあったら連絡してね!…うん!またね!」


「佐藤さん?」


「うん!佐伯くんと初詣に行ってるらしいんだけど、一言も会話が無いんだって…だから、助けてっていう電話。」


「あ…さっき佐伯から着信あったのはそれか…?」


「あっ!颯くん、無視したんでしょ!?」


「…ぃや…気が付けなかっただけ。」


「うそ!…こちょこちょの刑だよ!」

 百合奈に脇腹をくすぐられて、颯は楽しそうに身を捩っている。


「百合ちゃん…やめっ!…こらっ、俺もくすぐってやる!……いい?」

 颯が片手で百合奈の両手首を掴み、かなり優勢なのに律儀に許可を待ってる。


「くすぐらないで?」


「やだ?やめとく??」


「うん…。」

 すぐに両手を解放された百合奈は、颯の腕に手を絡ませて、肩に寄りかかった。二人がうとうと寝始めたから、俺は車を走らせる。羨ましいとは思いたくなかったけど…はぁ…俺も一刻も早く彼女欲しいなー。


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