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20/23

ヘタレ復活のようです

不定期更新です。

 私のこと本当に好き?


 …本当に好きに決まってる。独占欲を全開にして、誰がどう見たって俺が百合奈を好きなことは疑いもないのに、何でそんなこと聞くんだ?…無慈悲にも閉まった玄関のドアをじっと見つめる。


 …最悪な大晦日になっちゃった…。


 明らかに俺が原因だ。掃除を手伝いながら、部屋に飾られた昔の俺達の写真やクリスマスにあげたピンキーリングを見て、顔がニヤけて止まらなかった。彼女の下着を発見した時、妄想が爆発寸前でマズかったから…むしろ冷静に対応したはずだったのに…百合奈は俺に跨って挑発してくる。そのエロい体勢止めろって…逆転したところまでは良かった。いつだって頭の中でめちゃくちゃにしている百合奈が…目の前で俺に押し倒されている…それで完璧に理性が飛んだ。「やだ。」と冷水を浴びせられ、「帰って。」と拒否られると、これ以上嫌われたくない俺は完全降伏だ。

 待てども待てども鳴らないスマホ…やっと来た返信に、九時過ぎに寝るって早くないか?と愕然とする。課題はあとでやればいいけど、年越しそばや初詣はどうする!?一人良がりな俺の年越しプランが藻屑に消えた。



「颯、まだいたの?」

「あれ?祐哉くん、出掛けたんじゃなかった?」

「そー、ケータイ忘れた。百合奈は?」

「…体調悪いって。」

「あー、生理か?あいつ初日がすげー重いから。」

「…知らなかった。祐哉くん、あのさ…明後日、百合奈と約束してるでしょ???俺も混ぜて!!」

「え?いーけど。免許取ったから、親に車借りて、初詣行くだけだぞ?」

「うん!行きたい!祐哉くん、お願い!」

「ははっ…分かったって。風邪引くから、家入れよ?じゃあな。」

 祐哉くんは俺の頭をワシャワシャと撫でてから、急いで家の中に駆け込んで行った。よしっ!とガッツポーズをする。冷えに冷え切って身体がガタガタ震えている…俺も急いで家の中に駆け込んだ。


 すぐに新しい年がやって来た。

『あけましておめでとう!今年もよろしく!百合ちゃんが楽しい一年になるように俺も頑張るよ。色々なとこに遊びに行こうな!体調どう?デリカシー無くて、本当にごめん。許して欲しい。あと、祐哉くんが俺も初詣に連れて行ってくれるって。楽しみだね。おやすみ!』

 元旦の昼過ぎに百合奈から返信があり、ホッとする…無視されるほど嫌われてはないらしい。

『あけましておめでとう!今年もよろしくね。私も颯くんが楽しい一年になるように頑張る。体調も良くなったよ!心配かけてごめんね。あと…ひどいこと言って、ごめんね。怒ってる?明日、お兄ちゃんの運転の練習に付き合わされるの憂鬱だったけど、颯くんも一緒ならすごく楽しみ!今、おばあちゃんちだよー!』

 百合奈が祖母や従兄弟達と楽しそうにピースをした写真付きだ。すげぇ癒される…。俺も写真を送ろうと思い立つ。


「父さん、母さん、ちょっと良い?写真撮りたいんだけど。」

「えっ!?」「えっ!?」

 両親が顔を見合わせて、訝しむように俺を見る。

「ダメだったら良いや。」

「駄目じゃないわよ!」「取ろう取ろう!」

「ふーん。じゃあ、ここに座ってピースしてくれる?あと、正月らしいもの…俺はお年玉袋を持つか…。」

「分かったわ!」「ピースだな!」

 ソファに姿勢良く座った両親を背後に、自撮りする。…意外と難しい。

「悪いけど…もっと近づいて座って、ちゃんと笑ってくれる?」

「お、オッケー!」「り、了解!」

 もう一度、自撮りする。なかなか仲良さそうに撮れた。

「もう撮れたから、離れて良いよ。」

「颯、その写真…ママにも送ってくれる?」

「パパにも送ってくれ!」

「面倒くさ…どっちかに送れば良いんじゃないの?」

 両親と俺のグループチャットを作り、そこに送りつける。すぐさま既読になり、二人のチャットのアイコンがお年玉袋を掲げる俺になる。はぁ〜…この写真の行く末が気になる。『怒ってないよ。お年玉貰った!』と写真付きで百合奈に送れたから良いけど、両親が家中をこの写真だらけにしかねないから、それだけは勘弁して欲しい。


「颯、家族皆んなで初詣行こうと思うんだけど、いつが良いかしら?ね、パパ!」

「そうそう皆んなでな!」

「俺も行かなきゃなの?明日は百合奈と祐哉くんと初詣に行くからダメだし。もしも明日、百合奈の都合を聞いてみて、空いてれば明後日以降もどっか誘って遊びに行きたいし…要は…暇なのは今日だけど?」

「パパっ、今日だって!急がないと!」

「だな!時間が無いぞ!」

「タクシー呼んでくれる?」

「今、呼んだ。それよりママ、コート羽織らないと外は寒いよ!」

 慌ただしい両親に呆れながら、俺もコートを羽織る。幼少期から仕事が忙しい両親は、俺の取扱いに気を揉んでいるらしい。

「颯は、まだお隣の百合奈ちゃんと仲良しなの?良いわね〜。」

「まぁ…付き合ってるし。」

「えっ!?」「えっ!?」

 両親が歓喜の表情で顔を見合わせている。いちいち反応が煩い。

「だから…母さん、百合奈に会っても変なこと言うなよ。」

「言わない言わない!あら〜、積年の想いがやっと実ったのね!本当に良かったわ〜!今日の夜は、お赤飯にしましょう!ね、パパ!」

「そうだな!お祝いしよう!」

 ウザい…と言いかけて止める。積年の想いって、何で両親にバレてるんだ?テンション高めの二人がタクシーに乗り込み、最後に俺が乗る。母さんがタクシーの運転手まで巻き込んで根掘り葉掘り聞いてくるから、父さんに助けを求めて視線を送るけど、母さんばかり見ていて気が付きもしない。楽しそうな両親に痺れを切らして、腕を組み、狸寝入りを決め込んだ。


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