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12/23

解決したようです

不定期更新です。

※一部改稿しました。

「佐伯、停学で済むらしいぞ。」

「へぇー。」

「協力してやったのに、『へぇー。』は無いだろ。」

「…ありがとうございました。」

「面を上げぃ!」

「……。」

 俺は冷ややかな目を高倉先輩に向けて、再びノートに視線を戻す。

「おい!相原…もっと構ってくれよ。」

「高倉先輩、寂しがりやですか?そういうの…可愛くないんで。」

「それそれ!」

 満面の笑みの高倉先輩に、盛大な溜息を贈る。

 図書室で高倉先輩に絡まれることは、ほぼ日常と化していた。部活を再開したのに、何故か三十分ぐらい図書室で勉強していく。本人曰く、一度上がった成績を落としたくないそうだ。

「佐藤さん、そろそろ退院かな?テニス…嫌いになってないといいな。」

 先輩は運動場を眺めながら、心配そうな顔をした。意外と…この人はまともなんだよな。


 あの日、佐藤さんは「佐伯くんが告白するために高校で待ってる。」と山本さんに呼び出され、しぶしぶ部室まで来たら、待っていたのは佐伯と大学生の先輩の二人だったそうだ。怖くなり部室の中を逃げ惑うと、山本さんがバケツの水を佐藤さんの頭の上からひっくり返し「寒くて死んじゃうから、脱がないとね。」と高笑いし…そして「俺が暖めてあげるよ。」と先輩に羽交締めにされた…でも、その状況に耐えられなくなった佐伯が、先輩から佐藤さんを力尽くで奪って逃げてくれたそうだ。校舎の影で、怯えた二人はしばらく息を潜め、その後、佐藤さんは佐伯の手を借りてブロック塀を越えたが、スマホもお金も無く、寒さと荒んだ服でどうしようもなく…あの場所でひたすら助けを待っていた。…今は、念のために検査入院をしている。

 あの後、警察と学校関係者が見回ると、校庭の隅でうずくまる佐伯を見つけ、部室の中では裸の男女が乱れていたそうだ。


 百合奈が巻き込まれなくて良かった…自分本位だけど…そう思う。身近なところで起きたことだからこそ、これからどうやって彼女を守っていくか…身の引き締まる思いで校門で待っていると、百合奈が走ってきて、勢いよく抱き付いてきた。

「颯くん!駅前のアイスクリーム屋さんが半額なんだって!行こう!」

 手をぐいぐい引っ張られ…こんなに息が白いのに…呑気な彼女は寒空の下でアイスを食べる気満々だ。

「百合ちゃん、寒くないの?」

「すごく寒いよ。」

「アイス…寒いと売れないから半額なんだよ。」

「…颯くんってば、お馬鹿さん。寒いと売れないけど、半額にすると売れるの。私が買うから!」

「ははっ…百合ちゃん、天才!」

 アイスを食べながら、百合奈は「寒い!」と身体をぶるぶる震わせている。俺のマフラーを重ね付けしてやり、コートを肩から掛けてやる。

 それなのに、二回に一回はスプーンが俺の口元にやってくる。寒過ぎるから勘弁してくれと思いながら、ぱくっと食べてしまう俺は、本当にお馬鹿さんかもしれない。


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