解決したようです
不定期更新です。
※一部改稿しました。
「佐伯、停学で済むらしいぞ。」
「へぇー。」
「協力してやったのに、『へぇー。』は無いだろ。」
「…ありがとうございました。」
「面を上げぃ!」
「……。」
俺は冷ややかな目を高倉先輩に向けて、再びノートに視線を戻す。
「おい!相原…もっと構ってくれよ。」
「高倉先輩、寂しがりやですか?そういうの…可愛くないんで。」
「それそれ!」
満面の笑みの高倉先輩に、盛大な溜息を贈る。
図書室で高倉先輩に絡まれることは、ほぼ日常と化していた。部活を再開したのに、何故か三十分ぐらい図書室で勉強していく。本人曰く、一度上がった成績を落としたくないそうだ。
「佐藤さん、そろそろ退院かな?テニス…嫌いになってないといいな。」
先輩は運動場を眺めながら、心配そうな顔をした。意外と…この人はまともなんだよな。
あの日、佐藤さんは「佐伯くんが告白するために高校で待ってる。」と山本さんに呼び出され、しぶしぶ部室まで来たら、待っていたのは佐伯と大学生の先輩の二人だったそうだ。怖くなり部室の中を逃げ惑うと、山本さんがバケツの水を佐藤さんの頭の上からひっくり返し「寒くて死んじゃうから、脱がないとね。」と高笑いし…そして「俺が暖めてあげるよ。」と先輩に羽交締めにされた…でも、その状況に耐えられなくなった佐伯が、先輩から佐藤さんを力尽くで奪って逃げてくれたそうだ。校舎の影で、怯えた二人はしばらく息を潜め、その後、佐藤さんは佐伯の手を借りてブロック塀を越えたが、スマホもお金も無く、寒さと荒んだ服でどうしようもなく…あの場所でひたすら助けを待っていた。…今は、念のために検査入院をしている。
あの後、警察と学校関係者が見回ると、校庭の隅で蹲る佐伯を見つけ、部室の中では裸の男女が乱れていたそうだ。
百合奈が巻き込まれなくて良かった…自分本位だけど…そう思う。身近なところで起きたことだからこそ、これからどうやって彼女を守っていくか…身の引き締まる思いで校門で待っていると、百合奈が走ってきて、勢いよく抱き付いてきた。
「颯くん!駅前のアイスクリーム屋さんが半額なんだって!行こう!」
手をぐいぐい引っ張られ…こんなに息が白いのに…呑気な彼女は寒空の下でアイスを食べる気満々だ。
「百合ちゃん、寒くないの?」
「すごく寒いよ。」
「アイス…寒いと売れないから半額なんだよ。」
「…颯くんってば、お馬鹿さん。寒いと売れないけど、半額にすると売れるの。私が買うから!」
「ははっ…百合ちゃん、天才!」
アイスを食べながら、百合奈は「寒い!」と身体をぶるぶる震わせている。俺のマフラーを重ね付けしてやり、コートを肩から掛けてやる。
それなのに、二回に一回はスプーンが俺の口元にやってくる。寒過ぎるから勘弁してくれと思いながら、ぱくっと食べてしまう俺は、本当にお馬鹿さんかもしれない。
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