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聖女と破滅の竜

悪役令嬢と聖魔導士とシナリオ外の政略結婚

作者: 黒崎ちか


「ギネヴィア・メリアード令嬢。私との婚約を解消してくれませんでしょうか」


 リアヌス様のその言葉は予想外でしたが、それでも私は悪役令嬢だからと心の中で思ってしまう自分もいました。


 ***


 私の名前はギネヴィア・メリアード。メリアードの第三王子で『聖女と破滅の竜』と呼ばれるゲームの悪役令嬢です。

 ただ悪役令嬢と言うよりもライバルキャラと言う立ち位置なので、私自身は悪役として忌み嫌われる事も殺される事……はありましたが、確率が低いです。

 殺されるのは私がヒロインの聖女エレインさんと恋人になるルートのバットエンドですからね。ほぼないと言っても問題はないでしょう。


 悪役令嬢と言うよりもエレインさんのお友達でもあり、ライバルでもあり、義妹でもあり、恋人でもある。エレインさんの選択次第で様々な可能性があるもう一人のヒロインと言った方が良いかもしれません。


 そんな私が自分が悪役令嬢だと気付いたのは五歳の誕生日。一目惚れをした日でした。


 一目惚れした御方はリアヌス・アンブロシス様。この国の魔法防衛団団長様のご子息です。そして聖魔導士と呼ばれる珍しい光の魔法使いです。


 聖魔導士独特のプラチナブロンドと碧い瞳。魔法使いよりも王子様と言う言葉が似合うくらいにキラキラした外見。その神々しさに心を奪われました。

 もっとみたい。そう思った瞬間、私の頭の中に声が響きました。”リアヌスはメルリン・アンブロシスの弟だ。それにゲームのプロローグでドレイクに殺害される。好きにならない方が良い”


 突然頭の中に響いた声に気味が悪くなり、耳を塞ぐようにしゃがむとそれが引き金の様に一気に前世の記憶が出て来ました。

 パンクしてしまうんじゃないかと思うくらいの勢いで頭の中に入って来るのですが、私の脳はそんなに早く情報を処理できず、数日の間私は熱と頭痛で寝込んでおりました。


 数日後、何もなかったように頭痛は治まってくれましたが、前世の記憶の大半は消失していました。

 ただ『聖女と破滅の竜』を遊んでいた時の記憶だけ何故か残っていました。きっと前世の私が私のために残してくれたんだと思います。


 まるで遺言のように心に深く刻まれていたのは、あの時に頭の中に響いた”リアヌスはメルリン・アンブロシスの弟だ。それにゲームのプロローグでドレイクに殺害される。好きにならない方が良い”

 私の事を思った優しい忠告ですが、私にはそれは聞けそうもありません。私へのリアヌス様の思いが更に募っていたからです。


 そしてその気持ちを周りの大人たちに利用されてしまったからです。


 私には王位継承権はございますが、お兄様…——第一王子が次代の王とほぼ決まっている状況でしたので、結局はお兄様が動きやすいように利用される存在です。

 でしたので聖魔導士のリアヌス様をお兄様の側近にしたい者達に利用され、私が気づいた時には後戻りが出来ない状況でした。


 本来の婚約者であるロット様ではなくリアヌス様。私の恋心がきっかけかもしれませんが、王家のいざこざにリアヌス様を巻き込んでしまう。

 申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、リアヌス様との婚約はゲームと違うので、リアヌス様が殺害されるプロローグも変わるかもしれないと無理やり理由をつけお引き受けしました。


 それから八年。聖魔導士と第三王子。身分としては問題ないからか、まわりの妨害などはなく、私とリアヌス様の婚約は障害なく進んでいました。


 なのに突然どうしてでしょうか? 私との婚約には様々な思惑が含まれている。簡単に婚約破棄など出来ないのに。

 この場には私とリアヌス様。そして従者のみ。もしかしたら、私から説得する予定なのでしょうね。


 リアヌス様は聡明で簡単にこんな事をしません。

 それでも王家との政略結婚以上に大事な方が現れる事もわかってしまいました。

 私のライバルのなる女性。


「エレインさん」


 その名前を呟くと聞かれてしまったのが、リアヌス様が眉をピクリと上げた。その表情で背筋が凍りそうになりました。

 リアヌス様は寂しげに笑うとゆっくりと口を開く。まるで余命を宣告されるようでリアヌス様の声が出るまでの時間がとても長く感じました。


「あなたもエレイン嬢をご存知でしたが」


 心臓が締め付けられたようにチリチリと痛んで来ました。

 リアヌス様がエレインさんをご存知でした。普通ならリアヌス様とエレインさんの接点はないはずなのに。ゲームはまだ始まってすらいないのに。


 なんで、なんでなんで? ヒロイン補正でしょうか?


「でしたらあなたもご存じのようですね」


 嫌だ。知りたくない。耳を塞ぎたいがそんなはしたない真似は出来ない。ぐっとこらえてリアヌス様の言葉を待ちます。


「私が死んでしまう事を」


 リアヌス様が? プロローグの話でしょうか? 婚約破棄はエレインさんに恋をしたからではないのでしょうか? 予想と違う内容に思わずリアヌス様を見るとリアヌス様は私から視線を外しました。

 明らかに困っているのが伝わってくるようです。


「そこまで驚いていないと言うことは、やはりご存知だったんですね」


 リアヌス様はそう言うと寂しげに笑いました。

 予期せぬ言葉に頭が整理出来ていないからか、私はそのままリアヌス様の問いに答えるように「ええ」呟く事しか出来ず、答えるとすぐにリアヌス様の言葉を待ちます。

 じっと見つめているとリアヌス様が何かを諦めるような寂しげな表情をしました。


「ヴィー。あなたのような素敵な女性はいつ死ぬかわからない男と婚約すべきではございません。まだ、間に合います」


 まだ。まるで私を労って下さっているようでした。

 そしてその言葉でリアヌス様の婚約破棄にエレインさんが関わっていない事もなんとなく察することができました。

 それもあり少し冷静になれた気がします。そのままじっとリアヌス様を見ながら尋ねました。


「リアヌス様。何がまだ間に合うのでしょうか?」

「あなたの新しい婚約です。もし私が不在となったら。アンブロシス家はあなたの事を守れません。早くこの家を捨てて、他の味方をつけて下さい」


 新しい婚約。他の味方。私を守れない。アンブロシス家に何かあったことくらい察しがつきます。

 婚約者とは言え、深く詮索してはいけない。そうは思いますが、私はせめて婚約破棄をされる理由を知りたいです。


「リアヌス様と婚約していたら問題が起きるものですか?」


 心臓の音が聞こえてしまうのではないかと言うほどにドキドキしていますが、なるべく意識しないようにリアヌス様の表情を探る。

 リアヌス様は真剣な表情で私をじっと見つめられていました。


「はい。もし兄上が当主となったら、アンブロシス家と王家との関係を切り捨てます、そしてエレイン嬢を聖女に見立て伴侶にします。兄上はそのような輩です。エレイン嬢を娶るためなら何を画策するか想像がつきません」


 最後は苦虫を嚙み潰したような渋い表情で言いました。

 メルリン様に対して良く思っていないのが伝わります。愛する人と結婚するために王家との関係を反故にする。

 ありえない話ですが、メルリン様だからと納得してしまう自分がいるのも確かでした。


 それよりも気になったのがエレインさんです。どうやらエレインさんは既にアンブロシス家と接点があるようです。

 おそらくエレインさんも転生者。真意がわからない以上エレインさんは要注意人物のようですね。


「メルリン様とエレインさんはお知り合いなんですか?」

「経緯は不明です。兄上からは彼女について前世の記憶がある未来の聖女様を拾った。と聞いていませんからね」


 前世の記憶がある。その言葉に思わず唾を飲みました。こうもはっきりと言ってしまうのですね。


「言ってしまった後にお話しするのは大変忍びないですが、この話は内密でお願いします」

「もちろんです。リアヌス様。エレインさんが重要な秘密をこうも簡単に打ち明けた目的を伺ってもよろしいでしょうか?」

「やはりヴィーもエレイン嬢が何か策を練っているように見えますか。ですが彼女からそう言った意図は感じ取れませんでした。おそらく兄上が複雑にしております。彼女はドレイクを討伐し、両親を救うために動いているようでしたからね」


 エレインさんのご両親はリアヌス様と同じくプロローグにラスボスのドレイクに殺されてしまいます。と言う事はエレインさんの目的はプロローグでドレイクを討伐する。と言うことでしょうか。


 その言葉を聞いた瞬間、まるで時が止まったようです。新しく現れた転生者もドレイク討伐に動いている。


「出来るんですか」


 エレインさんと一緒にドレイクを討伐のために動ける。そう思った瞬間、私の口から自然と言葉が出ました。


「私も無謀だと思います。ですので私はドレイクが現れるまでの命です」

「そんなつもりは」


 言葉足らずのせいか誤った認識で伝わってしまいました。急いで訂正しないとと思いますが、リアヌス様は寂し気な表情で話を続けていきます。


「ヴィー。お気遣いは不要です。ドレイクの襲撃。この話を聞いた時の私も同様の事を考えました。そして今の私が唯一出来ることがあなたとの婚約を白紙に戻すことです。ヴィー。どうかあなたの枷になる前に私を切ってくれませんか?」


 この言葉でようやく線が繋がりました。

 リアヌス様の婚約破棄は私のため。リアヌス様の言葉をゆっくりと頭の中に入れていると私が何も言わないからか、リアヌス様が再び口を開く。


「私に問題があった。そうすればあなたに傷がつくことはない。私との婚約を破棄する理由はお任せします。死ぬ人間に気遣いは不要です。寧ろ酷い男の方が、あなたの光らせることが出来る。どんな悪評でもこの話と共に墓場に持って行きますよ」


 真剣な表情で私をじっと見る。覚悟を決めたリアヌス様の目はとても綺麗で、私は更に手放したくなかった。


「リアヌス様。その話は引き受けられません!」


 私も覚悟を決めないといけない。そう思うと自然と口から言葉が出てきました。

 その言葉はリアヌス様には予想外だったのか、真剣な表情から困惑した表情に変わりました。


「ヴィー。私の話を」

「聞いております!」

「でしたら」

「ドレイクを討伐するのは無茶かもしれませんが、私も諦めたくないです。私もリアヌス様と戦いたい。ですので婚約破棄はあなたが生き残ってからして下さい!」


 叫ぶような言い方は、淑女にあるまじき言葉遣いなのは知っています。それよりも大事な事です。

 私の方を唖然として見つめていたからか、少し恥ずかしくなります。恥ずかしさで顔をそらしたくなりますが、目をそらしてはいけません。


「そうしたら、意味がない!」


 リアヌス様は珍しい強い口調でした。その口調に私が驚いてしまうと「すみません」と視線を私から外し、机の方をみながら言った。


「リアヌス様」

「どうせ消える命です。あなたを守れるのでしたら、私はどうなっても良い」

「そんな事、言わないで下さい。私もあなたのために戦いたいです」


 だんだんと胸が苦しくなった。


「ヴィー」

「リアヌス様。それは可能性の一つです。本当の未来はエレイン様も私もわかりません。ですので簡単にあなたの命を捨てないで下さい」


 エレインさん達が戦うことを選んだ。私たちも諦めてはいけない。やれることはすべてやらないと。


「そんな顔をされたら足掻きたくなってしまいますよ」

「足掻いて下さい。メルリン様とエレイン様も戦おうとしている。私たちの味方はいます。ですのであなたに諦めて欲しくないです」

「ヴィー……」

「リアヌス様。生き残りましょう」


 リアヌス様が困ったような表情で私を見る。少ししてから瞬きをし、真剣な表情へと変わった。


「そうですね。私一人後ろ向きでいるのはやくないですね」

「はい!」


 婚約破棄は保留にして頂けるのでしょうか。リアヌス様に確認するように恐る恐る話そうとしていたら、リアヌス様が私に向けて微笑みかけていた。


「リアヌス様?」

「あなたは強いですね。先ほど絶望していたと思っていたらすぐに切り替えられますね。私も見習わないといけませんね」


 婚約破棄をされると思ってしまったからです。そうお伝えするのは恥ずかしいですが、お伝えしないといけなさそうでした。


「エレイン様と婚約すると思い違いをしてしまったからです」


 その言葉と共に一気に恥ずかしくなります。そっとリアヌス様を見ると困惑しているようでした。

 私と目が合うとリアヌス様は気まずそうに笑いながらゆっくりと口を開きました。


「私と、エレイン嬢が婚約? すみません。話が読めそうもありません」

「リアヌス様がエレイン様に魅了されたと、思い違いをしてしまいました」

「エレイン嬢に私が?」


 エレインさんの名前が出た瞬間苦い表情をした。予期せぬ反応にそっとリアヌス様を見ていると、リアヌス様が拗ねたような表情をした。


「ヴィーは私が心変わりするような男に見えますか?」

「い、いえ。思いません」

「そうですよ。素敵な婚約者がいるのに心変わりなどありえませんよ。特にエレイン嬢は。……彼女は兄上の宝のようなものです。彼女に対して抱くのは恐怖だけですよ」


 恐怖。メルリンルートのエレインさんは他の男性が空気に等しかったし、逆ハールートでは逆はールートのはずなのにメルリン様は全く出番がない。不思議だ程度に感じでいたのですが、そう言う事だったんですね。

 激重執着男。前世の私がメルリン様をそう呼んでいた理由がわかりました。


 私は少し癖があるが一途に愛してくれる素敵な男性と思っていました。どうやら違うようですね。


「恐怖ですか?」

「えぇ。私を牽制する視線は鋭かった。過失で彼女に触れたら、私の腕は吹き飛んでしまいますよ」


 リアヌス様に確認するように尋ねたら、恐ろしい言葉が返ってきました。

 触れたら手が吹き飛ぶ。恐怖からか思わず乾いた笑いが出そうになりましたが、こらえるように小さく咳払いをしました。

 そんなメルリン様にエレインさんは始める前から目をつけられてしまった。エレインさんは心配ですが、それよりも私の恋心は先ほどからエレインさんの事を詳しく話すリアヌス様の事ばかりでした。


「エレイン様の事をよくご存じなのですね」


 そのまま出てきた言葉に後悔しました。

 リアヌス様を困らせてしまいます。リアヌス様は心変わりをしない。とおっしゃっていた。それでも不安になってしまう。


「ヴィー」


 切なく痛む胸をなるべく気にしないようにリアヌス様へ伝えた。


「忘れてください」


 焼きもちなんて良くない。恥ずかしくて視線をリアヌス様から視線を外そうとしたら、その前に仄かに頬が赤くなっているリアヌス様が視界に入る。

 どうしてリアヌス様が赤くなるんでしょう。気になりますが、私も恥ずかしくてそれどころじゃございませんでした。


「忘れられませんよ。大切にさせて下さい。ヴィーが私に僅かでも好意を持ってくれたのはとても嬉しいです」

「私がリアヌス様に対して?」

「初めてお会いした時はご気分を悪くしてしまいましたし、聖魔導士わたしとの婚約も王家に生まれた義務のようなものですからね」


 義務。リアヌス様に対して引け目を感じているからかリアヌス様の隣に相応しい淑女にならないとと必死でした。

 もしかしたら私がリアヌス様に対して婚約者以上の気持ちを持っていないと思われているようです。


「私がリアヌス様をお慕いしている気持ちを利用されてしまいましたので、せめて婚約者として立派に振る舞わないといけません」

「ヴィーが私を慕って……」

「私はリアヌス様をお慕いしております。ですのであなたの未来を奪ってしまったのは苦しいです」

「私の未来をヴィーが? それはとても光栄ですね」


 リアヌス様が目を細めた。予想外の言葉に呆気に取られているとリアヌス様がヴィーと私の事を呼びました。

 そして少し照れくさそうな表情のままゆっくりと話し始めた。


「エレイン嬢は兄上に負けず劣らず苛烈な女性でしたよ」

「エレイン様が?」

「ええっ。あなたに私の気持ちを疑われるのは私の本意ではありませんからね」


 苛烈。私の記憶にあるエレインさんとかけ離れていました。エレインさんは私以上にお姫様と言う言葉が似あうすごく可愛いらしい方だ。

 聖魔導士特有のプラチナブロンドに透き通るような碧眼は私よりも姫と言う言葉が似あう外見。小柄でしたし、どちらかと言うと小動物のような方だと思います。


「彼女は父上に私を命を助ける代わりに兄上を貸して欲しいと臆せずに伝えたんです」

「貸して、ですか。メルリン様を……」


 あのメルリン様を貸して? エレインさんが想像できません。先ほどまで想像していた狡猾な魔法使いにとらえられた聖女と言うイメージが一気に崩れました。


「ええ。ちゃんと返してくれるようですよ。私の寿命が利子のようですよ。もしヴィーが兄上を欲しかったら応援するから島流しはやめて欲しいと懇願していましたよ」


 私が? やっぱりエレインさんも転生者のようですね。

 それよりもなんで島流しなんでしょうね。そんな話は無かったはずです。


「私がエレイン様を島流しをするんでしょうか?」

「エレイン嬢は自分が特異な存在と理解しております。ですので危険視され、どこかの国へ飛ばされると思われているようです」


 私がエレインさんの事を恐れているようにエレインさんも私の事を警戒しているようですね。お互いにそう考えている以上、しばらくは干渉はしない方が良さそうですね。

 エレインさんの事を考えているとリアヌス様が補足するように口を開いた。


「ふふっ。安心してください。結局エレイン嬢に生活能力が欠けているようで兄上が一緒に島流しされることになりましたよ」

「メルリン様が一緒にですか? それって……いえ、何でもございません」


 それってメルリン様とエレインさんが駆け落ちをするという事ではないでしょうか。

 ただそれがエレインさんに伝えると、私がメルリン様に吹き飛ばされそうな気がしました。


「そうですね。これ以上はエレイン嬢と兄上には知られてはいけません。ただこの話だけですとエレイン嬢は兄上に丸め込まれているように見えますが、それ以上に兄上を振り回しているようですので、気にしなくても良さそうですよ」


 リアヌス様が面白そうな表情で笑った。メルリン様が振り回されている。ゲームの中からメルリン様の話からは全く想像がつかない。


 不思議な人だ。そもそもメルリンを知っていたら、距離を置こうとしますし、きっとそんな尊大な態度はとれないはずです。


「あの猛獣を飼い慣らせるのはエレイン嬢だけですよ。このまま兄上を貰ってくれると助かるんですがね。どう思っているんでしょう。兄上以上に心が読めない女性ですからね。ですので、エレイン嬢を義姉として認めておりますがそれだけです。私が愛するのはあなた一人です」

「わ、わわ」


 真剣な表情ではっきりとした言葉でした。

 愛する。その言葉に戸惑っているとリアヌス様が柔らかく微笑みました。

 王子様みたいなリアヌス様に見惚れそうになりますが、なるべく冷静になるように言い聞かせながらもリアヌス様を見つめます。するとリアヌス様は再び真剣な表情に変わり、口を開きました。


「はい。あなたです。私もあなたを諦めたくないです。ギネヴィア・メリアード令嬢。あなたの未来を望んでもよろしいでしょうか」

「はい」


 その言葉と共に私たちの物語が今日新しくはじまった。


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