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私本異食譚

作者: 北聖恕

 本日、7月11日は快晴である。気温は既に30度を超える暑さ。こんな日に彼は、真昼間からブランデーを飲んでビールを飲んで清酒さけも飲む。とにかく飲む。

 これが世間一般の常識からみて推奨されるべき生活か否か。そういったことは今は不問とする。


 読者諸賢に注目していただきたいのは、彼が酒のつまみになめているドロドロとした液体である。その外見は白く濁っていて、少し黄ばんでいて、ところどころ赤黒いものが混ざっている。その匂いは若干生臭い。その味は塩辛く、動物性の油を生々しく感じる。


 一見するとそれは塩辛の一種だと思えなくもないが違う。

 その物体は、いわば薬のようなものなのである。ここで、”ようなもの”とぼかしているのは、薬だと断言してしまうとその物体の生産者にして販売者たる彼の父親が虚偽誇大表示の咎により官憲にしょっ引かれるからである。


 彼は、その物体に特別な効用があると信じている。滋味があると信じてやまない。

 だが、社会に広くその効用を宣伝するのは、だいぶ言葉を選ばなくてはならない。

 彼には到底そんな器用なことはできない。だから彼はただ効用を信じて、なめているだけなのである。


 彼の父親が経営する老人ホームの入居者もまた然りである。その効用を信じている。信じてなめるだけである。


 父親の卓越した順法精神と宣伝文句によって、全国から入居希望者が押し寄せている。

 その物体を一口でもいいから舐めたいと言って、家財を売り払ってでも入居したい人々が毎日のように押し寄せるのだ。その物体をなめられるのは入居者のみに許された特権なのである。


 今やその物体は日本中、あまねく知れ渡っている。


 その物体の製造法を知っているのは、最初は彼の身内に限られていた。だが、口の軽い彼が、口の重いであろう友人に言いふらし続けた結果、その特殊な製法が世に知れ渡り物議を呼んだのである。物議は話題を呼び、父親の機転により話題は一定数の人々に肯定的に受け入れられた。


 さて、彼が四つん這いになって、酒を飲みそれをなめている部屋は、それを採取するためだけに特別にこしらえられたものだ。彼はひっそりとその部屋に忍び込んでは取れたてのそれをこっそりと酒の肴にしているのである。


 突然、ノックもせずにドアが開いた。彼は驚いて飛び上がり、天井に頭をぶつけ、目を3センチほどむき出しにして、ドアの方向を見た。


康士やすし。こんなところで何をしてるんだ!」


 そこには彼の父親が立っていた。白髪で小柄な、見ようによっては温厚そうにも見えなくもない、彼より40歳年上のあの父親である。


「Mein Vater!! どうしてここに!?」


 彼は父親のことをMein Vater、母親のことをMeine Mutterと呼んでいる。


「なにって、これから長寿液を採取するんだ。昼間から酒など飲んでないで、お前も手伝え」


(作者注:ここから先はちょっと汚くて、筆も調子も乗らないのでダイジェストです)


・父親腹を出す。

・肥満した腹に膿んだ部分がある。

・そこから血の混じったような脂汗が出てくる。


・康士、それを見てよだれを垂らす。

・父親、採取するよう命じる。


・康士、「ちょーじゅー、ちょーじゅー」と叫びながら長寿液を採取する。

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