㉖
結愛の行動を受け止めた幸太郎。
-㉖大株主の心の広さ-
結愛は『あのチケット』を握りしめて走ってやって来た。そして乃木先生に向かって頭を下げた。
結愛「乃木先生、お願いします!このチケットをお父様に渡して使わせて下さい!」
乃木「お嬢様、頭を上げて下さい。その私の父ならここにおりますよ。」
結愛「えっ・・・?!」
幸太郎「こんにちは、娘がいつも大変お世話になっております。」
幸太郎は優しく微笑んだ。結愛はギョッとしたがすぐに冷静になった。この人が自分達、いやこの学校の救世主だと思うと待ち望んでいた人が現れたと涙が溢れた。海斗は落ち着かせなきゃと結愛と肩を組んだ。
結愛「あに・・・、お兄様。」
海斗「今はそんなの気にすんな、取り敢えず落ち着け。申し訳ありません、少し席を外してもよろしいでしょうか。」
幸太郎「勿論、どうぞ。」
暫くして気持ちを落ち着かせた結愛を連れて海斗が戻って来た。2人の手には『あのチケット』が握りしめられている。2人とも震えていた、しかしこの学校を何とかしなきゃという正義感が強くなり震えはすぐに止まった。
幸太郎「現状を知りたい、黒服さん、事件現場にご案内をお願いできますか?」
羽田「かしこまりました、こちらでございます。」
幸太郎「因みに黒服さん、お名前は?」
羽田「羽田と申します。」
幸太郎「羽田さん、今の僕には貴方が頼りです。お手伝いをお願いできませんか?」
羽田「全力を尽くします。」
全員が事件現場に到着した、遺体は葬儀屋が運び出した後だった。それ以外はそのままだったので事件の悲惨さを物語っていた。即座に事件の酷さを察知した幸太郎は自ら110番通報した、同じ内容だったので警察側はすぐに通話をを切った。現状を知った瞬間、幸太郎は頭に血が上ろうとしていて冷静さを保つことが困難になっていた。咄嗟に別の所に連絡を入れ始めた。相手はあの博だった。
博(電話)「もしもし、ああ幸太郎さんじゃないか、珍しいな。」
幸太郎「博さん、今どこにいる?」
博「ハワイにいるんだが、ただ事じゃなさそうだな。」
幸太郎は事件について彼が知っていることの全てを打ち明けた。
博「わしの孫達がそこにいるんじゃないか?」
結愛「じ・・・、じいちゃん、俺親父の事信用出来ねぇ、あれを使うからな。」
幸太郎はチケットを渡そうとした結愛を静止し、大事に持っておくように言い聞かせた。この行動は自分の意志で行う事だから気にしないようにと。そして一旦博との通話を切り別の男性の所へ電話をかけた。
幸太郎「もしもし、私です、乃木建設の乃木幸太郎です。そこに貝塚財閥の貝塚社長がおられるのではないですか?代わっていただけませんか?」
男性(電話)「お、おられません。あなたいきなり何なんですか?!乃木建設?!そんな会社存じ上げませんが。とにかく今は忙しいのです、邪魔しないで頂けませんか?」
電話の向こうの男性はすぐに電話を切ってしまった。ただ、声が震えていた。確実に義弘がいる、圧力を掛ける為に自ら赴いているのだ。そう、幸太郎が電話したのは警視総監のデスクだ。
幸太郎「こうなれば最終手段だな、アイツはこうでもしないとこちら側の言う事を聞かない。」
幸太郎はまた別の場所に電話した。最終手段を誰にも告げずに。最後に博に電話した。
幸太郎「すまないね、博さん。ハワイでお楽しみのはずなのに。」
博(電話)「構わんよ、元々非はこちらにあるんだ。私もすぐに日本に戻ろう。」
貝塚兄妹「じ・・・、じいちゃん・・・。」
博「2人とも安心しなさい。その人は私が一番信頼しているんだ。」
結愛は思わず幸太郎に抱き着きまた泣き出してしまった。口からは感謝の気持ちがあふれ出していた。感謝と一緒に感動もしている。幸太郎は静かに結愛の涙を受け止めていた。
結愛は今まで光明や海斗に見せたことない顔をしていた。
幸太郎にこの上ない感謝をしている結愛。