㉓
最近やけに義弘が優しいが・・・?
-㉓猛暑の殺人-
暑い日が続いていた。そんな中守たちは相変わらず朝から晩まで勉強漬けの毎日を過ごしていた。義弘の指示が故に冷房は切られており、窓が閉め切られていた。ただ流石にこれにより死者が出てしまえばこれはこれで教育委員会等に訴えられてもおかしくない状況だ、義弘から教師・講師全員に通達が伝えられ冷房がやっと起動した。生徒全員ほっとしながら授業に集中し机に向かう。義弘も人の子だという事だ。
そんな中、黒服がダンボール箱を抱え各教室にやって来た。
守や結愛達がいる2年1組には黒服長の羽田が来た。
羽田「しゃ・・・、ゔゔん、失礼。理事長先生からお茶の支給品が来た。各自1本ずつ持つように。冷え冷えでうまいぞ。結愛お嬢様もおひとついかがでしょうか?」
結愛「お父様からですの?」
羽田「そうでございます、ご・・・、ゔゔん、申し訳ございません。お父様からでございます。」
結愛「個人的にはコーラが良かったのですが。」
羽田「ご存じの通り、ご主・・・、いやお父様は炭酸入りのソフトドリンクはあまり飲まれませんので。」
結愛「やはりお父様とは好みが合わないみたい、それにしても珍しいですわね。羽田さんがそんなに噛むなんて、何かありましたの?」
羽田「先日の侵入者の事なのですが。」
結愛「黒服さんに紛れていた方ですの?」
羽田「はい、こちらをご覧いただけますでしょうか。」
羽田は指名手配犯のビラを結愛に見せた。
結愛「これ、書き込んでも?」
羽田「どうぞ。」
結愛はマジックでサングラスを書き足していった。どう見ても先日ふらついていた『黒服』だ。
結愛「間違いないですわね。」
羽田「はい、かいちょ・・・、いやおじい様を狙った侵入者ですね。」
結愛「おじい様が無事で何よりですわ、それと・・・。」
羽田「はい?」
結愛「そんなに無理して言い直さなくてもよろしくてよ。」
羽田「申し訳ございません、日ごろからお父様に言われているもので。」
琢磨「羽田さんも大変ですね。」
羽田「面目ない。」
このお茶の支給は夏の間続いた。生徒たちはこのありがたい贈り物を素直に受け取っていた。
数日経ったある日のこと、いつもの通り生徒達がお茶を飲んでいると3組の教室から男女の悲鳴が轟いた。その3組の教室から伊津見が凄い形相で走って来て慌てて1組の教室に入った。
伊津見「大変だ、俺のクラスの野口と中山が!」
結愛「クソッ!また被害者が!」
羽田「お、お嬢様?!」
守「羽田さん、説明は後です、今は現場に!」
羽田「ああ・・・、はっ・・・。」
結愛や守を含む1組の生徒たち、そして羽田は急いで3組の教室に走った。教室は生徒達で溢れかえっている。羽田は生徒たちを掻き分け教室の真ん中で倒れている野口と中山の元へ向かった。脈を確認する。
羽田「もう・・・既に・・・。」
2人は亡くなっていた。口元から泡のようなものがあり、また足元には蓋の開いたお茶のペットボトルが転がっている。
羽田「どうやらお茶に毒物が仕掛けられていた様ですね。箱から無作為にお茶を取ったとすると・・・。」
結愛「無差別殺人・・・?」
羽田「その可能性は大きいですね。」
結愛「この組を担当する黒服さんは?」
羽田「確か・・・、西條だったかと。」
結愛「すぐに西條さんを探してください!私たちも協力します!」
羽田「はっ!」
結愛「これ以上・・・、被害者が増えなきゃ良いのですが・・・。」
殺人の真相は・・・?