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8-19 サボりの神

 

 

 降って湧いたように現れた力の神ダイナミ。ジロジロ見られたと思ったらいきなり勝負を挑まれて。現在、その筋肉バカは頭だけの状態となっております。

 

「じゃあ元に戻すけど、いい?次襲いかかって来たらもう頭すら残さないで消し飛ばすからね?」

「おお〜怖い怖い。お前、本当に見た目通りの女児か?

 あ、そうそう。そういうプレイが好きなやつがいてな!それそれ!そういう目で見られるのが大好きなんだと。良かったら会っ――」

「いーや!絶っ対に嫌!」

 

 ダイナミの知り合いって事は他の神か?いるんだとしたらだけど。にしてもロリにドSプレイされたいって、性癖歪みすぎだろ、全く。

 

 キッパリ断ったのに、借りがどうの金がどうのと煩いのでさっさと体を元に戻す。

 絶対に会わないからな!

 

「ほら、長話するんでしょ?なんで僕を襲ったのか教えてくれんじゃないの?」

「おお!そうだったそうだった。いやーそれにしても、キレイに元通りになるもんだな!」

 

 そりゃそうだろうさ。時間を戻してるんだから。

 ダイナミは一頻りポージングを楽しんだ後、わざとらしく咳払いをして話し始めた。あー、良かった。やっと話が進むよ。

 

「俺がトワを試した理由、それはブラキティラノちゃんが認めていたからだが、恐らく聞きたいのは何故ブラキティラノちゃんをダンジョンのボスにしたか、だろう?」

「まぁ、そうだね」

「うむうむ。それはな、大変に重要な役割があってだな。

 俺は、仕事がしたくないのだ」

「はあ?」

「仕事などしていたらこの美しい筋肉ちゃんを育てられない。だから!ブラキティラノちゃんを送ったって訳よ!」

「……終わり?」

「終わり!」

 

 ――いや長話じゃねぇーじゃん!何?まだ一分くらいしか経ってないけど?こいつにとっては一分が長話なのか?それに、結局意味分かんないし!

 

 仕事がしたくないからブラキティラノをダンジョンに送った。そこになんの因果関係があるのだろうか。

 

「もうちょっと分かりやすく話してくんない?まず仕事って何?それに、ブラキティラノと仕事になんの関係があんの?」

「ふむ。そうか、分からんかったか。なら説明してやろう!俺の仕事、それは……強き者を育てる事、だ!」

 

 強き者を育てるって、こいつ神様なんだよね?なんか随分しょぼいというか。普通に人がやる仕事だと思うんだけど。

 

「ねえクポ爺?」

「時の流れを正すのが時間神の仕事だ」

「……まだ何も言ってないのに」

「話の流れでそれくらい分かるわ」

 

 聞きたい事が聞けたからいいか。でもそうだよね。神様って言ったらそういうスケールのでかい仕事だと思うよね。やっぱりダイナミのは……

 

「まあ、一応仕事については分かったよ。で?ブラキティラノとの関係は?」

「それは単純明快!俺が認める強いやつに、俺の仕事を任せてやろうと思ってな!」

「あー……そういう事ねー」

 

 流石と言うべきなのか、神様は仕事をサボるためだけにそこまでするのか。

 これで襲われた理由とかも全部分かったかな?仕事の押しつけ先が僕に選ばれたってだけの話……あ。

 

「ごめん、それ無理だよ。僕もう時間の神になっちゃってるみたいだから」

「な、何ー!?」

「知らないで襲いかかって来たんだ。こんなにか弱い女の子だっていうのに!」

 

 ちょっとボケてみたつもりだったのだが、ダイナミはガックリ項垂れてしまってそれどころでは無いようだ。仕事がサボれないだけだろう?そこまでショックを受けるかね?

 

 ……なんか、ほんの少し可哀想になってきた。あんなにテカテカムチムチしていた筋肉が、心做しかしわしわに萎んでいるように見える。

 しゃーない。力を貸してやるかね。要は先生役を見つければ良いのだろう?モノアイは無理だけど、適任っぽいのがいるじゃないか。

 

「あー、ちょいちょい。僕は無理だけどさ、ネジャロって言う虎人族がいるんだけど。強くて面倒見がいい人なんだ。どうかな?」

「ん……?ネジャロ……?ふむ」

 

 許可なんか取って無いが大丈夫だろう。なんてったってここは前回の世界線。バッチリ信頼関係は築けている、はず!

 ダイナミはというと、何やら僕をジロジロと。

 

「なに、してんの?」

「ん?お前に付けられた証を通して、ブラキティラノちゃんが戦っている時の映像を見ている」

 

 神様って人の記憶を覗き見するのが趣味なのか?まあ戦闘時のやつだけなら別にいいけど。

 

「もう見終わった?どうなの?」

「ふむ……悪くは無い。まだまだ弱いが良い筋肉をしている。トワと違って」

「は!?余計なお世話なんだけど!協力してやんないよ?」

「いやすまんすまん。筋肉ジョークだ」

 

 調子のいいやつめ。

 だが、どうやらネジャロの事は気に入った様子。でも彼のレベルをまだまだ弱いと言い切るのはどうかと思う。だってあれ、人の最高到達点みたいな体してんだよ?

 

「じゃあネジャロさんには僕から声をかけておくよ。それで、もう用事は終わり?」

「ああ、終わりだ!助かったぞ〜トワ!」

 

 ガッハッハッと大口を開けて笑う姿はどこか憎めないものがある。仕事をサボろうとする神だけど……

 

「なら僕はもう帰るよ?色々やらなきゃいけない事が残ってるんだから」

「分かった!ネジャロにはしっかり伝えてくれよ?」

「はいはい」

 

 もう言動についてまわるポージングにも慣れた。

 ダイナミはトワの肯定に気を良くしたのか、わざわざ「トウッ」と大声を上げて空へ消えて行った。相変わらず馬鹿げた筋肉だ。ジャンプ一回で見えないところまで上がって行くのだから。

 

「はぁー……帰ろ。まずはトワをベルテに紹介するところから始めようかな」

 

 こうして、騒がしい神との出会いは一先ずの幕を閉じた。

 異空間組への説明だってあるし、アランとネジャロなんか、僕とベルテがいきなり消えたと思ってる。

 こりゃなかなか大変だ。

 

 

 

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