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8-18 δύναμη

 

 

 万々歳。誰だそんな事を言ったのは。

 いや、僕なんだけど。

 

 そんな事を言うからフラグが立っちゃったんだよ。

 

「ほうほうなるほど……ふむふむ」

 

 物凄い勢いで空から降ってきた……筋肉ダルマは、僕をジロジロと見てはふむふむなどと、訳の分からない行為をしている。

 

「ねえクポ爺、知り合い?種族見えないんだけど」

「あー……知らん訳では無い。少々面倒だが、我に勝ったのだ、大丈夫だろう」

「え!?ちょっと!」

 

 勝ったんだから大丈夫だぁ〜!?

 それって戦闘になるって事じゃん!

 

「おいそこの娘〜。よくぞ俺の試練を突破したな!」

 

 ――……試練?いつ?てかそれ何?

「トワ、モノアイさん。試練ってなにか分かる?」

「いいえ。あの肉ダルマも初めて見るわ」

「すまんな、我も知らぬ」

「そっか。じゃあ、隠れてて」

 

 僕は(トワ)とモノアイをそれぞれ異空間に隠す。

 二人に心配されたが、大丈夫。魔法も使えるし、油断もしない。

 

「娘〜。名を聞いてやろう!」

「……人に名前を聞くなら自分から名乗れって、偉い人が言ってた」

「ん〜面白い!俺にそんな口を利くやつは初めてだ!」

 

 何なんだこいつは。

 その筋肉ダルマは、何か喋る度にマッスルポーズ?を取っているが、そうしなければ死ぬ呪いにでもかかっているのだろうか?

 

「名を名乗ってやる!よ〜く聴けぇい!

 俺様の名は!筋・肉・神……ダイナミ、だ!」

 

 ――暑苦し。

 

「因みに言うが、あれは筋肉神などでは無い。力の神だ」

「……よく知ってるみたいだねクポ爺。なら色々教えてよ。ポージングに夢中みたいだから」

「ふむ。そうだな。お前に死なれても困るしな。

 まず、あいつの言う試練とは、神の先兵を倒す事。記憶見たが、ブラキティラノと――」

「ちょっと、プライバシーは!?」

「安心しろ。女との媾いまでは見ておらん」

 

 いや見てんじゃねぇか。ぶち殺したろか?糞ジジイ。

 僕はそんな感情をクポボスにぶつけるが、彼の事は吸収してしまって全く実体が無いのだ。残念ながら攻撃できない。

 

「すまんて。遡っていたら見えてしまっただけなんだ。もう見んから安心しろ。

 で、話を戻すが、お前がブラキティラノと呼んでいたものだが、それがやつが送ってきた先兵。またくだらん事を考えた結果だろうがな」

「第三ダンジョンのボスか……確かに種族が分からなかったっけ。てかくだらない事って何?」

「それは自分で聞いてみるが良い。ただ最後に……油断はするなよ」

「分かってるって、うるさいなぁもう」

 

 お小言を言って意識の奥底に消えていったクポボスだが、何となく事情は見えてきた。

 大方、送り込んだ先兵、ブラキティラノが倒されたから様子を見に……あれ?倒したの僕じゃないよね?

 

「えいっ」

 

 どういう事か確認を取りたいのだが、ダイナミは未だポージングの最中だ。近寄るのも危なそうだし、足元に落ちていた石を投げてみた。んだけど……

 

 ――カァン!

 

 石は腕に当たって弾かれた。腕に、当たって!

 なんでそんな音が鳴るんだ?

 

「む?おお、俺とした事が!可愛い筋肉ちゃんに見とれてすっかり忘れていた!

 さぁ娘〜。名を聞こう!」

「あ、トワです」

 

 もう名乗りとかどうでもいいだろ。ダイナミの腕、その体。金属音が鳴る理由の方が気になってしょうがない。

 

「あ、あのなんでそん――」

「さぁ〜トワよ!俺と……やろうか!」

「は、はぁ!?」

 

 いきなり降ってきたと思ったら今度は「やろうか」だって!?この場合、二つくらい意味があると思うんだけど……一体どっちだ?

 もし……下の方なんだとしたら、物理的に無理だろうし、そもそも嫌なんだけど。

 

「さぁ〜行くぞぉう!」

 

 ――いや、どっちどっち!?怖いって!!!

 

 ダイナミは体をかがめたかと思いきや、目で追えないようなスピードで突進してくる。

 そのスピードについて行くために自分にヘイストを掛けたから分かったが、めっちゃ拳を振り回してるわ。

 これは……幸い?な事に「殺ろうか」の意味だったっぽい。いや良かったー……このか弱い体が狙われている訳じゃなくって。

 

 あ、そう言えば。体で思い出したけど、あの血の化け物はどこ行ったんだ?こんなに攻撃されてるってのに、一向に出てくる気配が……あ、出てきたわ。

 

 遅ればせながら参上仕った血の化け物は、僕に敵対行動を取るダイナミに触手のようなものを伸ばして迎撃しようとするが、金属筋肉ボディにいとも簡単に弾かれる。触れた箇所が爆発するかと思いきや、それも起きない。効かないみたい?

 それは血の化け物も感じ取ったらしく、一瞬硬直してすぐに帰って行った。

 まじか、そんな行動取るんだね。

 

 そしてダイナミと一体一になった訳だが……

 流石神様ってとこかな。脳まで筋肉だろなんて小馬鹿にしていたが、攻撃の一発一発が異界の護り(アナザーバリア)を凄い勢いで侵食してくる。

 転移(テレポート)系統で逃げ回りながら破壊や切断を試みても、とんでもなく硬い。金属のフェンスを手で破ってねと、そんな感じだ。

 

「ッ――ヤバいってこの人、じゃない神様!油断したらホントに死ぬ」

「フッハハハ!まだまだ余裕そうじゃないか!もっと上げるぞぅ!」

 

 ――ちょッ!?これがフルじゃなかったのかよ!

 もう無理、付き合ってらんない!

 

 僕はクポボスを吸収して新技を習得していた。いや、技というか、元々攻撃に使うものじゃないんだろうけど……でも、これが使える中で多分一番ヤバイ。

 

「ごめんね。さよならダイナミ」

 

 時間の流れはレールのように、そしてパズルの用に組み換え、外し付け替えられる。

 僕はダイナミがいる時間の一ピースを削除。そこに平和な別のピースをはめる。

 

「何ッ!?」

 

 ダイナミ周辺の景色が切り替わる。ただまあ、殺す前に話は聞いておきたいから、少しだけ残すんだけどね。

 

 あんなに頑丈で、空間魔法ですら傷が付けられなかったダイナミの体はあっさり消え去り、頭だけとなった。

 

「グ、ぬぬぬ。動けん!俺の負けだな!」

 

 頭だけとなったダイナミは、それでも元気に喋っているし、軽くだがぴょんぴょんと跳ねている。いや動けてんじゃん。

 心臓とかないのにどうやって……と思ったが、そもそも人では無いのだ。そういう臓器が有るのかすらも怪しい。

 

「それで?結局何しに来たのさ?」

 

 僕は楽しそうに?ぴょんぴょんしているダイナミに問いかける。予想が当たっていれば、襲われるのは僕じゃなくてモノアイのはずなのだが。

 

「何しに?はて、何だったか……」

「おい……」

「すまんすまん、冗談だ!渾身の筋肉ジョークなんだから笑ってくれても良くないか?」

 

 何が筋肉ジョークだ。冗談と言うのがあと少し遅ければ消し飛ばしていたぞ、まったく。

 

「俺がここに来た理由。それは〜……トワに会いに来るため、だ!」

「いや、それは何となく分かってるけどさ。それ、ホントに僕?でっかい龍と間違えてない?」

「いいや、お前だ!その証、俺のかつての贅肉ちゃんも認めている!」

 

 かつての贅肉ちゃんってなんだ?もうほんと、話が通じなくて困る。

 

「はぁ、そう。僕はあなたの贅肉なんかに心当たりは無いけど?」

「何を言うか!倒したでは無いか!ダンジョンの地下で!」

「え?」

 ――ダンジョンの地下で贅肉を倒した?それってまさか……

「ブラキティラノ、の事?」

「そうだそうだ!贅肉ちゃんもカッコイイ名前だと気に入っていたぞ!」

 

 嘘だろ、あれ贅肉だったの?てかカッコイイ名前って……似てる見た目のキメラだったから適当に付けただけで、全然ダサいと思うんだけど……

 

「いや、まあ。あなた……たち?の感性は置いといて、やっぱりそれを倒したのは僕じゃないよ。何回も復活してくるから、面倒くさくなって時間を止めてただけだし」

「ふむふむ、確かにそのようだ。しかぁし!贅肉ちゃん、いやブラキティラノちゃんがトワに倒されたと訴えてきている!よって!お前、だ!」

 

 おかしいな。体は無いはずなのにマッスルポーズが見える気がする。いやいや、そうじゃないでしょ。

 

「贅肉がそう言ってるならそれでいいけど。で?それの仇討ちって事?」

「いいや〜違ぁう!その理由は少し長話になるからな。そろそろ体を元に戻してはくれないか?」

「嫌だよ。また襲ってくるじゃん」

「襲うなどと、もう試す必要は無くなった!よって!もうトワに攻撃する事は〜無い!」

「……分かったよ。でももう尺無いから、長話は次回ね」

「尺?尺ってなん――」

「さよならー」

 

 次回 筋肉神、じゃなかった。力の神ダイナミの目的!

 

 

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