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8-15 Nightmare

今回の話はかなりグロいです。スプラッタのタグをつけてはいますが、かなり狂気じみているので、苦手な方は読まない方がいいかもしれません。

:(;>д<):

一応、読み飛ばした人のために次話の初めで今回の話を軽く纏めます。

 

 

「……一応、知ってる天井だ」

 

 一応と付けたのは、ここは僕がまだ小さい頃、少しだけ住んでいた家だからだ。

 僕は何故か、ここにいる。でも別に嫌な感じがする訳でもないし、このままでいいかななんて思ったりもしてる。

 

「トワー、早く起きなさーい。学校、遅刻しちゃうよー」

 

 学校……そうか、そうだったっけ。早く行かなきゃ。

 

「お母さんおはよー」

「うん、おはよう。朝ごはんは?」

「お腹減ってないからいらない」

「そ、じゃあ牛乳だけ飲んで行きなさい」

 

 母は冷蔵庫から200mlの牛乳パックを取り出して、そのまま電子レンジへ。

 

 ――バンッ

 

「あ、ああ……やっちゃった。トワ、ごめんね。今日は冷たいので我慢して」

「う、うん」

 

 冷蔵庫を空けて牛乳を取り出そうとする僕の横で、電子レンジの中を掃除しようとする母。

 それの中は、真っ赤だった。

 

「……牛乳も、やっぱいいや」

「じゃあお水。喉乾いてるでしょ?」

 

 母はコップを手に蛇口を捻るが、そこからはボトボトと、赤黒い水と肉片のようなものが溢れ出している。

 

「い、行ってきます!」

「ちょっとトワ?お水はー?

 ……もう」

 

 母はそのコップの中身を、なんの躊躇も無く飲み干す。

 

 気持ち悪い……

 僕がおかしいのか?だって、あんな……

 

 想像するだけで吐き気が催す。

 昨日飲んだ水はあんなでは無かったのに。ハンバーグだって、美味しかったのに……

 

 僕はそれ以上、考えないことにした。嫌な事は忘れてしまうのが一番楽だから。

 

「トワちゃん!おはよー!」

「あ、おはよ……」

 ――この子誰だろう……

 

 学校に着くまでの間、多くの子供から挨拶をされるが、誰一人知ってる子がいない。

 しかし、その中にただ一人だけ知っている子が。

 

「ねぇねぇトワちゃん。宿題やってきた?」

 

 姉帯友愛。僕がアネッタちゃんと呼んでいたこの子は、気付けばいなくなっていたっけ。

 

「え?やっぱり宿題あったの?どうしよ、やってきてない」

「じゃあ後で見せてあげるよ!感謝しなさい!」

「あ、ありがとー。アネッタちゃん!」

「ふふん!」

 

 通学路をてくてくと歩いていると、いつの間にか学校に着いていた。

 でも、なんで僕が歩いたところだけ真っ赤なんだろう?それに、あの落ちてるのは一体――

 

「トワちゃーん!遅刻しちゃうよー!」

「あ、待ってよアネッタちゃん!」

 

 よく分からないから考えないことにした。そうすれば、嫌な思いをしなくて済むから。

 

「みんなおはよう。今日は嬉しいお知らせがあるぞー」

 

 担任のアラン先生。若くてかっこいいって、クラスの女子から人気だけど、僕はあんまりそう思わない。頼りになるっていうのは分かるけど、他の子みたいに付き合いたいとかは、無いかな。

 

「さあ入って、ベルテさん。

 それでは自己紹介をお願いします」

「はい。ベルテです。これから一ヶ月間、学校の先生になるために皆さんと一緒に勉強したり、遊んだりします。仲良くしてくださいね」

「はい、ありがとうございます。みんな、ベルテさんはね、教育実習生って言って、先生みたいに教える勉強をしに来たんだ。だから、質問とかあればたくさん聞いてあげてね」

 

 ベルテ先生は凄い美人だった。僕は一目見ただけで好きになってしまって……

 

 ――あれ?なんか、ベルテ先生と目があってる気がする……

 

 そんな時だ。クラスのやんちゃ坊主がお決まりな質問をするのだ。

 

「はいはいはい!ベルテ先生は、好きな人とかいるんですか?」

「……はい。いますよ。私が愛している人、もう結婚もしてます。ほら、皆さんもよく知ってるでしょう?そこにいるトワちゃんですよ」

「「えぇー!?」」

 

 ――え?僕が結婚?ベルテ先生と?

 

「うそー!トワちゃん、先生と結婚してたのー?」

「いつからいつから?それに、もうえっちとかってしたの?」

「俺、この前告白したのに返事貰ってない……」

「それは……振られてるよ。どんまい」

 

 教室がおもちゃ箱をひっくり返したかのように騒がしくなる。

 近くの子は僕に色々な質問を投げかけてきて、それが気恥ずかしかったから軽くあしらったつもりなのに……

 

 噴き上がる鮮血、飛び散る肉片。

 

 僕の周りにいた子は、人だったものに変わってしまった。

 

「あーあー、トワちゃんったら、びっくりしちゃいますよね。あんなにいきなり来られたら」

「べ、ベルテ先生……僕じゃな、」

「はい。分かっていますよ。トワちゃんのせいじゃありません。勝手に寄ってきたこの子たちが悪いんですよ」

「さあ、もうすぐ一時間目が始まるぞー!ソレ(・・)、片付けちゃってねー!」

 

 クラスのみんなは、何事も無かったかのように雑巾やバケツを持ってきては、手早く掃除を済ませる。

 それが怖かった。

 

「はい、じゃあ一時間目、魔法の授業を始めるよー。

 さっきトワちゃんが見せてくれたのも魔法。あれは空間魔法と言って、トワちゃんにしか出来ないんだよ。凄いよねー」

「え?魔法?なんでここで……ねえベルテ先生、なんで日本で魔法の授業なんて……」

「何言ってるんですか、トワちゃん。それが普通でしょ」

「普通……そっか、普通か……」

 

 ――何かがおかしい。

 こんな授業、習った覚えがない。

 ……習った、覚えがない?初めてやる授業なんだから、当たり前じゃないか。

 そんな事を考えるなんて、今日の僕はどうかしてるな。

 

「では、実際に魔法を体験してみましょう!先生の風魔法か、ベルテ先生の火魔法を体験したい人は手ー挙げて!」

 

 考え事をしていた僕以外の全員が手を挙げる。その光景に先生二人はとても満足そうだ。

 

「うんうん。僕のクラスは勉強熱心で大変素晴らしい!じゃあ、一列に並んでー!」

 

 先生ごとにそれぞれの列に並んだ児童は、その先生の攻撃魔法を己が体で受けてゆく。

 

 体が切り刻まれてゆく者。弱火でゆっくりと焼け爛れてゆく者。

 皆とても楽しそうに死んでゆく。

 

 僕はそれをたった一人、椅子に座って呆然と眺めていた。

 

「あらら、もうトワちゃんだけになってしまいましたね。もうこの学校も終わりです。それではさようならー」

 

 アラン先生は、一時間目のチャイムが鳴るのを待つこと無く帰ってしまった。

 教室に残されたのは僕とベルテ先生だけ。

 

「……トワちゃん。(箱庭)に帰りましょうか」

「は……はい」

 

 胸が痛い……

 ズキズキと痛む胸を抑えながら、僕はベルテ先生と手を繋ぎ歩いてゆく。

 真っ赤な夕日が辺りを赤く染める。オレンジでは無い。世界が、赤黒い。

 

 ――まだ一時間目のはずなのに……

 やっぱりおかしい。でも何が?分からない……

 

 そんな感情が大きくなるのに比例するかのように、胸の痛みは激しさを増す。

 

「トワちゃん、大丈夫?」

「大、丈夫……じゃないかも……」

「そうですか……では、そろそろ起きましょうか」

「起き、るって……なに」

「大丈夫です。私のことだけを考えてください」

 

 ベルテ先生の舌が入ってくる。

 

「んふぅ、いきなり何をッ」

「大丈夫。いつものキスです。思い出してください」

 

 こんな快感、知らないはずなのに、どこか懐かしい。

 もっともっとと、体が求めているのが分かる。

 これは、なに――

 

 

「――ハァッ、ゴホッ……ゲホッゲホッ……」

「トワッ!?よかった、よかった……」

 

 ――ここは……箱庭?さっきまでのは、何だったの……

 

「トワ!何があったんですか!?槍が……胸に槍が刺さってて。全く動かないし……」

「え?槍?」

 

 ベルテが涙を流しながらぺたぺたと触る胸には、何かに貫かれていたかのように服に大穴が空いている。

 

「……あ、トワ!トワは?さっきまでここにフェンリルがいた、はず……」

 ――なんで僕は箱庭にいるんだ?(トワ)と全部をやり直すために過去に行こうとして、それで……行けなかった。

 

 僕の記憶はそこまでしかない。箱庭に移動した記憶なんて無いし、外にトワもいない。ベルテが言っていた槍というのにも覚えは無い。

 

 一体何が……

 

 僕は再び外へ出た。

 

 

 

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