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7-11 豪雪地帯は暖かいのです!(?)

ブックマーク100件、誠にありがとうございます。

これからも毎日投稿を続けていきますので、どうぞ応援の程、よろしくお願い致します(*・ω・)*_ _)ペコリ

 

 

 モノアイが眠る死火山へとものすごい勢いで迫るトワだが、少し違和感を感じていた。それは雪の量だ。

 前回助けた時よりも四ヶ月も遅い。だと言うのに、それにしては雪の量が少ないのだ。

 まあ少ないと言っても、件の山は完全に埋まってしまっていて、エルフィエンドたちにとっては誤差に過ぎない。

 バタフライエフェクトでどうこうなったのかとも考えるが、吹雪の原因はモノアイが魔力を吸い取っていることなので、それも考えづらい。

 それに、少ないなら少ないで問題は無いのだ。考え事は後にしよう。それに、今は倒れる人が増える前に一人でも多く助け出すことが重要だ。

 

 徐々に深く、高くなってゆく雪を飛び越え、今度は火口だった窪みを下ってゆく。そして要救助者らが集う洞窟の前までやって来た。

 相変わらず雪に埋もれていて、入口の上部、外から見て足元の方に子供一人通れる程度の穴しか空いていない。トワはそこをモゾモゾと芋虫のように進み、内部へ侵入する。

 そこではまさに食事の最中のようで、ほんの少しの芋を大勢で分け合っていた。

 

 ――んー……どうやって助けようかな。

 

 ベストは誰にも気づかれることなく、何が起きたのかすら分からないように安全な場所まで連れて行くこと。だが、まず不可能だろう。

 60人以上がひしめく狭い空間で、どうやってステルスミッションをこなせというのか。

 

 という訳で最善策は捨て、次善の策で行く。それは、最小限の人にだけ姿を見せ、協力してもらうというもの。

 トワは落ちている石を拾い、それを壁目掛けて投げつける。

 ゴンッという重低音が洞窟中に響き渡り、奥で食事をしていた住人が警戒態勢へと移行した。

 

「……鹿でも入ってきたか?」

「だといいがな。とにかく確認しに行く。二人着いてこい」

 

 狭い洞窟内では声もよく響き、知らぬ男の声とエルフィエンドの声が聞こえる。

 そして三人、トワの策戦通り少数がこちらへ向かってきている。その中にエルフィエンドもいることから、もしかしたら楽に片付くかもしれない。

 

「なんだ、何もいないぞ?」

「……いや、入口の雪が少し崩れている。何かが入ろうとして辞めた、と見るべきか?だとしたらあの音は何だったんだ……雪が落ちた音では無いと思うが……

 お前たちは何か……おい、どうした?」

 

 エルフィエンドが連れてきた二人の男は微動だにしない。異空間に隠れていたトワが背後から触れ、時間を止められているのだ。そして、男たちを固めた張本人がその背後からニュっと現れる。

 

「ッ!?何者だ!そいつらに何をした!」

「ちょっ、え!?」

 

 助けに来たというのにいきなり剣を向けられる始末。異界の護り(アナザーバリア)を張っているため怪我をすることは無いが、あの血の化け物が出てきたら大事だ。彼女たちを肉塊にはしたくない。

 

「待って待って、落ち着いてくださいエルフィエンドさん」

「何故私の事を……」

 

 トワは小さい声でエルフィエンドに話しかけるがもう遅い。出会い頭に彼女が大声を上げたため、奥の住人たちが何事かとわらわら集まりだしている。

 

「うわっやば、どうしよ……」

 

 前にはエルフィエンドと固まった二人の男。後ろには大勢の住人たち。

 挟まれて万事休すだ……

 

「エルフィエンド、そのお嬢ちゃんは誰だ?」

「さあ。だが、先程の音の原因は恐らくこの娘だ」

「……はぁ、ゲームオーバー。

 僕は別に怪しい者じゃないですよ。あなた達を助けに来たんです。この山から出られなくて困っているでしょ?」

 

 誰も近寄れないような吹雪の中突然現れ、男二人を不思議な力で固めている白い少女。

 果たしてこれを怪しくないと言えるだろうか?

 そしてそれは、住人たちも同じ意見なようで……

 

「お前さん、どうやってここを見つけてどうやって辿り着いた?外は極寒じゃぞ?そんな薄着でいたら死んじまうよ」

「ふむ……」

「それに、アブヤとパラエスは何故動かない?」

「ふむふむ……あ、止めてたの忘れてた、ごめんよ」

 

 トワが二人の男、アブヤとパラエスにかけていた時間魔法を解くと、何事も無かったように動き出す。彼らはいきなり状況が変わっていたことに驚いていたが、その辺の説明は他の人たちにしてもらおう。

 

「えっと、どうやってここを見つけたか、でしたね。それは前にここに来たことがあるからとしか言えません。

 これであなたたちの疑問はあと一つ、外の吹雪をどうしたかってことだけでいいですか?」

 

 住人たちの表情はいかにも訝しんでいるが、エルフィエンドがうんと頷くと、一応は納得して引き下がってくれる。

 

「ふふふ……だったらそろそろ気づきませんか?ここ、入り口のすぐ近くですよ。なんで全く寒くないんでしょうね?」

「ッ!?確かに!……全員、剣でもなんでもいい、とにかく雪を掘れるものを持って来い!」

 

 エルフィエンドの命令に、住人たちの多くは一斉に奥へと駆け戻る。

 その場に残った者、手に椀やら棒やらを持っている者は、一斉に入り口に詰まった雪を掻き出してゆく。

 しかし、その雪は降り積もった雪に押し固められていて、思うように進まない。

 仕方ないのでトワも手伝ってやる。

 掘るものが無いって?心配ご無用だ。

 ただ外側の方の、内側からはバレなさそうな位置にある雪を異空間倉庫(アイテムボックス)に放り込む。ここ(・・)でなら何でも思うがままだ。

 

 そして遂に、外へと通ずる道が出来た。

 

「なッ……」

「草原……一体、どうなって……」

 

 なんということでしょう!吹雪が吹き荒れ、生命の灯火が途絶えていた火口が……暖かな日差し降り注ぐ草原へと早変わり!これぞまさに匠の……と、冗談はこの辺にして、何故こんなことになっているのか。それは、トワがエルフィエンドから剣を向けられる前に遡る。

 

 本来やりたかったことは、エルフィエンドだけに事情を説明して、住人たちをまとめてもらう。そして、洞窟周辺ごと飲み込んだ異空間に住人たちを移動してもらって、動かすのに邪魔な洞窟部分を切り離す。そうしたら最後は、アウロ・プラーラの近くにでも行って、異空間から住人たちを外に出せば万事解決。エルフィエンド以外には存在を知られないという完璧な作戦だったのだ。

 

 そしてこの草原は、その作戦のために生み出された異空間な訳だが……住人たちの視線が痛い。

 さてさて一体どうやって誤魔化そうか……

 

「と、取り敢えずご飯食べませんか?野菜ばっかりだけど……」

 

 トワは逃げた!考えるのが面倒くさくなって食事に逃げた!

 あわよくば美味しい食事で忘れてくれないかなー?なんて思ったりしている。

 

 住人たちからは見えない場所に箱庭の入り口を呼び出し、シェフを待つ。60人……とんでもない大人数だがベルテと協力すれば何とか……というか、住人たちにも手伝わせよう!

 そう考えながら、彼らから浴びせられる視線を苦笑いで誤魔化しているトワであった。

 

 

 

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