表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/101

5-1 姑息な騎士。きな臭い帝国

第五章、ヴァルメリア帝国編スタートです。(*`Д´)っ乂c(`Д´*)

 

 異形の龍、モノアイを助けたことにより、猛烈な吹雪は止んだ。

 

 だが、積もった雪は残る。

 

 

 歩きにくい上に、靴の中がびちゃびちゃになるので、通る道全ての雪を異空間倉庫(アイテムボックス)に詰め込むことにした。

 

 

「除雪車になった気分……」

 

 

 そんな人間除雪車をしたおかげで、深い雪原の中に、綺麗なわだちが出来ている。

 

 

 二日間ほど歩き続け、ようやく雪原を抜けた頃には、トワだけ顕著にヘトヘトになっていた。

 

 魔法面では他を寄せつけない能力があるが、体力や腕力といった肉体面では、そこいらの子供にも負けそうだ。

 

 

「お疲れ様。

 ここからは馬車が使えるから、寝てて大丈夫だよ」

 

「はーい。そうさせてもらいます……」

 

 

 見慣れた豪華な馬車を取り出し、ふかふかの椅子へとダイブする。

 

 そして、すぐさまスヤスヤと寝息を立てて寝てしまった。

 

 

 

 寝覚めは最悪だった。

 

 

 ガタンッと音を立てたかと思いきや、悲鳴と雑言が聞こえてくる。

 

 誰かを轢いてしまったとかなら、この世界では治せば済む話なので、どうでもよかった。

 

 だが、今回のはちょっと違う。

 

 

 眠い目を擦りながら外へ出ると、怪我をした騎士と、それに文句を言う他の騎士たち。

 

 見覚えのある鎧を着た騎士たちは、現在アランと口論中だ。

 

 

「ネジャロさん、ヴァルメリア帝国の奴らですね。

 何があったんですか?」

 

「ん?起きたのか。

 あの倒れてるやつがな、いきなり馬の前に飛び出してきたんだよ。

 怪我をさせた責任を取れとか言ってんだわ」

 

 

 ――つまり、当たり屋ってことね。

 

 怪我を治してやる義理もないわ。

 

 

 馬車の手綱を取っていたベルテが申し訳なさそうに縮こまっているが、相手が100悪いのだから、 気に病む必要なんてないのだ。

 

 

「大丈夫ですよ、ベルテさん。

 あなたに責任は全くありませんから」

 

「本当に、申し訳ございません。

 騎士だけでなく、馬にも怪我を負わせてしまいました」

 

 

 騎士たちの死角になっていて気が付かなかったが、一匹の馬が座り込んでいる。

 

 

 幸い、騎士たちはペラペラと雑言を並べることに夢中で、馬の方は見ていない。

 

 それならばと、馬車の荷台の裏を通り、馬へと駆け寄る。

 

 時間を巻き戻したので、痛かった記憶は残るものの、怪我はキレイさっぱり消え失せた。

 

 

 馬は、骨折したら安楽死させるというのが、頭の片隅にある。

 

 怪我の具合までは分からなかったが、ここが魔法のある異世界でなかったら、この子はどうなっていたのだろうか。

 

 

 元気よく鼻を鳴らして立ち上がる馬を撫で、今も尚、口論が続いている現場へ乗り込む。

 

 

「アラン、変わりますよ」

 

「トワ!

 うん、お願いしていいかな?

 この人たち、聞く耳を持たなくて」

 

 

 ――アウロ・プラーラで助けた時もそうだが、こいつらの耳は飾りか何かか?

 

 

 さて、選手交代である。

 

 日本で培った、うろ覚えな法律知識を動員して、騎士たちと対峙する。

 

 

「さて、まずはそこの騎士が飛び出してきて、私たちの馬に怪我を負わせたということで間違いないですね?」

 

「いいや、そちらがいきなり、我らに向かって突っ込んで来たのではないか!」

 

 

 ――はぁ、ハナっから主張が違うパターンか……

 

 

 この場にいる者の中で、トワだけこの事件の真相を知らない。寝ていたから……

 

 

 アランたち三人は、騎士が当たり屋との主張。

 

 騎士側は、こちらの馬車が突っ込んで来たと主張。

 

 感情論的には、アランたちを信じる。

 

 

 というか、ほぼ分かりきっている。

 

 何故なら、騎士たちはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべているからだ。

 

 嫌な奴らだ。

 

 

「一旦、犯人探しは置いといて、あなたたちが求める賠償は何ですか?

 どうでもいいことなら、さっさと済ませて先に進みたいので」

 

「ああ、話がわかるではないか!それでは」

 

 

 リーダー面した騎士が、わざとらしく咳払いをしてから語り始める。

 

 

「この馬車には、〈永久の約束〉という、僅か一月程度で赤金級冒険者となった者が乗っていると聞いた。

 今回の事件の賠償として、その者をこちらに引き渡してもらおう」

 

「騎士を怪我させたことへの治療費とかではなく?」

 

「そうだったな、それも追加だ」

 

 

 ――話にもならんね。

 

 そんな要求が通ると思っていることにびっくりだよ。

 

 

「証拠もないのにそんな話、呑む訳ないじゃないですか。

 さあ、この人たちは頭がアレなんで、無視して先に進みましょう」

 

 

 頭のおかしな騎士たちに背を向け、三人に馬車へ戻るように伝える。

 

 

「証拠ならある!

 我々全員がその瞬間を目撃している!」

 

「はぁ……それなら、こちらも全員見てるんですが」

 

「我々の方が正しいに決まっておろう!何せ、我等は彼のヴァルメリア帝国の騎士団なのだぞ!」

 

 

 ――こんな奴らに法律云々が通じると思った私がバカだった……

 

 

 道を塞いでいる邪魔な騎士たちを退かし、馬車を進ませる。

 

 

「おい、待て!

 我々が証言を国へ持ち帰れば、お前たちは指名手配犯だ!

 それでもいいのか?」

 

 

 その言い分に、温厚な(・・・)トワでも流石に腹が立った。

 

 

「その証言(ウソ)、持ち帰れなければ意味が無いですね」

 

 

 ネジャロを呼び、騎士たちを一纏めにしてもらい、雪で閉ざされた山へと転移(テレポート)する。

 

 

「なッ、おい!ここはどこだ!

 それに、我々の鎧をどこへやった?」

 

「さっさと下山した方がいいですよ。

 ここには食べ物もありませんし、夜になったら凍えちゃいますから」

 

 

 素っ裸で雪山に放り出された騎士たちがどうなるかは興味無い。

 

 生き残ったなら運が良く、死んだならそれまで。

 

 彼のヴァルメリア帝国(・・・・・・・・・・)など聞いて呆れる。

 

 腐った団体というのは、存在するだけで害悪だ。

 

 

 トワの中で、最近はすっかり大人しくなった白い影が、薄く目を開こうとしている。

 

 

 

「トワ、あの騎士たちをどこに飛ばしたの?」

 

 

 馬車へと戻ってきたトワは、すぐさまアランに問い詰められた。

 

 

「あー、グレイス王国近辺の森の中です。

 あそこなら、戻ってくるまでに半年位はかかるでしょうから」

 

 

 心優しいアランに本当のことを言ったら、きっと怒られてしまう。

 

 ベルテとネジャロは、そんな甘い対処なはずが無いと気づいているようだが、何も言わない。

 

 というか顔に、清々した!と書いてあるように見える。

 

 

 

「それにしても、ヴァルメリア帝国のこと、少し気になるね」

 

 

 それは確かに、トワも思ったことだ。

 

 

 アウロ・プラーラへは、基本的にどの国もちょっかいを出さない。

 

 それは、魔法具に欠かせない魔石の産出を、アウロ・プラーラだけが担っているからだ。

 

 そんな国の大切な人員。

 

 それも、現在トップの赤金級冒険者を狙っての犯行だ。

 

 

「軍備の拡張をしているってノゾミさんが言ってましたけど、普通、こんなになりふり構わず来ます?」

 

「んー、軍に入ったことがないから分からないけど、強引だったことは間違いないね」

 

 

 軍備の拡張、赤金級冒険者の強引な引き抜き。

 

 もし、それが戦争の準備だとしたら、相手はどこの国だろうか?

 

 もし、引き抜きが、ただの戦力強化ではなく、アウロ・プラーラの戦力を落とすことを目的としていたら?

 

 

 ヴァルメリア帝国に入ったら、念入りに探ってみる必要がありそうだ。

 

 もしかしたら、またあの変装(・・)が必要になるかもしれない。

 

 

 

 

[ アクセス解析 ]というものを見てみたら、思ったよりも多くの方に読んでもらえていることが分かりました。


皆様、ありがとうございます。


もっと面白い話を投稿できるように精進します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ