表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/101

4-3 異形との出会い

 

 エルフィエンドが目覚めてから三日が経った。

 

 初めは上手く力が入らないようで、立ち上がったりすることは出来なかったが、回復魔法をかけ、リハビリを続けているとすぐに良くなった。

 

 

 これで、彼女たちが倒れていた洞窟を調べることができる。

 

 調査隊のメンバーは、トワたち四人にエルフィエンドを加えた五人だ。

 

 

「それじゃ、皆さん行きますよー」

 

 

 五人で輪を作り、洞窟内部へ転移(テレポート)する。

 

 

「すごいな、ホントに着いた……変な感じだ」

 

 

 いつものメンバーは、慣れてしまって声一つ上げないが、エルフィエンドが起きて体験するのは初めてだ。

 

 キョロキョロと辺りを見回している。

 

 

「やはり、ここには魔力がありませんね」

 

「では、手分けして調べてみましょうか。

 皆は洞窟の中をお願いします。

 私は外を見てきます」

 

 

 洞窟の中は比較的マシだが、外は極寒だ。

 

 トワは異界の護り(アナザーバリア)で無効化できるが、他の者は数分も持たないだろう。

 

 

「大丈夫だと思うけど、気をつけてね。

 何かあったら、すぐに声を上げるか転移(テレポート)してね」

 

「はい、了解です。

 そちらも、何かあったら何でもいいので合図してください。

 全員観ておくので、すぐに戻れます」

 

 

 全員が頷き、各々散らばってゆく。

 

 

 洞窟の外は一面の銀世界だ。

 

 何かあるかと調べても、雪、雪、雪。

 

 

 それならば、空から見てみようと、連続目視転移(ショートテレポート)で雲の上まで上がるが、特に変わった様子は無い。

 

 雲の内部も普通の雪雲だ。

 

 

 ではでは、雪の中はどうだと、辺りの雪を手当り次第異空間倉庫(アイテムボックス)へ放り込んでゆく。

 

 とんでもない量の雪が消え地面が見えたが、特に何も出てこない。

 

 

 ――外はハズレかな?っと

 

 

 洞窟内でベルテが手を振っているのが分かったので、一旦戻る。

 

 

「何かありましたか?」

 

「いえ、何もないんです。

 なので、外はどうかと思ったのですが……」

 

 

 こちらも何も無かったと、首を横に振る。

 

 

「でしたら、私も外に行こうと思います。

 そこで魔力の流れを感じてみようかと」

 

「外は極寒ですよ。

 どんなに着込んでも、数分もいられません」

 

「では、少しだけでいいのでお願いします。

 それに、私なら何か分かるかもしれません!」

 

 

 随分と乗り気なベルテに押され、数秒間だけ許可することにした。

 

 ベルテと手を繋ぎ、先程雪を消しまくった場所へと転移(テレポート)する。

 

 

 二人で外に降り立った瞬間、ベルテだけ、足に力が入らなくなったように膝から崩れ落ちた。

 

 

「ベルテさん!?」

 

 

 いきなり倒れたベルテは、寒さでやられた訳ではなく、魔力欠乏という状態になっていた。

 

 

 ひとまず、アウロ・プラーラの医務室へと連れ帰る。

 

 カーテンで仕切られ、他の患者たちに見られていないため、ベルテの状態を巻き戻す。

 

 

「申し訳ございません。

 結局ご迷惑を……

 ですが、地面に魔力を吸われる感覚がありました」

 

「無事ならそれでいいんですよ。

 でも、地面ですか……調べてみましょう。

 洞窟に戻りますけど、大丈夫ですか?」

 

「はい、問題ありません」

 

 

 手を繋ぎ直し、洞窟へ戻る。

 

 

「何か分かったかい?」

 

「はい、ベルテさんが地面に魔力を吸われたと。

 なので、地面を掘って調べてみます」

 

 

 ベルテをアランに預け、外に出る。

 

 

 ――地中までは、見えないよね……

 

 

 それなりの距離があろうと、建物の中だろうと観ることができる空間把握(マップサーチ)だが、入口のない地中を観ることは出来ない。

 

 

「被害が凄いことになるから、あんまりやりたくないんだけど……」

 

 

 原因調査のため仕方ないと腹を括り、足元に空間破壊(リージョンブレイク)をかける。

 

 できるだけ狭い範囲を指定したが、地面には境界線がないため調整が難しく、数十メートルの範囲が砕け散った。

 

 

「うわぁ……」

 

 

 元は地雷原だったのかと言われても否定できないほど、ボコボコになってしまった地面を探すが何も無い。

 

 仕方ないので、何度か繰り返す。

 

 

 三回ほど繰り返した時点で、地面の材質が変わった。

 

 

「これ、溶岩かな?」

 

 

 先程までの土とは違い、手に取った黒い塊は、ザラザラとした石だ。

 

 

 エルフィエンドの話だと、ここは死んだ火山との事だったので、活火山だった頃まで掘り進んだということだろう。

 

 詳しい年代は分からないが、数百年前に起きた戦争よりも前の地表という事だ。

 

 

 さらに何度も空間破壊(リージョンブレイク)をかけ、何キロ掘り進んだかも分からなくなった頃、やっとそれらしい何かを見つけた。

 

 

「あー、長かったー!

 もう異空間倉庫(アイテムボックス)土だらけになっちゃったよ……」

 

 

 火山の底から見つかった何かには、冷えた溶岩がこびり付き、大きな岩のように見えるが、

 

 

「うそ、これ生きてるんだけど……」

 

 

 とりあえず、こびりついた岩石を剥がそうと掴んで引っ張ってみるが、小さな欠片がポロッと砕けるだけだ。

 

 非力な腕力ではどれだけかかるか分からない。

 

 

「ネジャロさんなら大丈夫かな?」

 

 

 ベルテは魔力が吸われた結果、魔力欠乏に陥った。

 

 それなら、元々魔力を持たないネジャロであれば、吸われることはないのではないか。

 

 そう考え、ネジャロを呼びに、洞窟へと戻る。

 

 

「すごい音が響いてきたんだけど、一体何をしてたんだ!?」

 

 

 洞窟に戻った瞬間、エルフィエンドに詰め寄られた。

 

 洞窟の入口は雪で塞がれているため、外の様子を見ることは出来ない。

 

 確かに、これでは不安にもなるか。

 

 

「地面を掘り進んでたんです。

 そしたら、地下深くにそれっぽいのを見つけまして。

 ただ、岩に埋まっちゃってるので、ネジャロさんを呼びに来たんです」

 

「ん、オレの出番か!」

 

「あ、でも!少しでも辛くなったら言ってくださいね。

 魔力欠乏が起きるかもしれないので」

 

「おお、分かった!」

 

 

 ネジャロを連れて、火山の底に戻るが、手は繋いだままだ。

 

 

「何ともないですか?」

 

「ああ、何ともないな」

 

 

 どうやら予想は当たったようだ。

 

 

「で、あれをどうにかすればいいわけか」

 

「そうなんですけど、あれ、中で何かが生きてるんですよ。

 異形種だということしか分からないので、十分に警戒してください」

 

 

 ネジャロは、任せろ!と頼もしい笑顔を見せ、岩の塊を剥がしてゆく。

 

 

 どこまで体があるのか分からないため、トワは下手に魔法が使えない。

 

 そのため、ただ見ていることしか出来ない。

 

 

 ネジャロの剛腕により、巨大な岩石はバリバリと剥がされてゆき、異形種の姿が見えてくる。

 

 

 四本の足が見え、長いしっぽが見え。

 

 片翼と大きな棘が生えた歪な背が見え。

 

 ついに顔が見える。

 

 

 その姿は、くすんだ白っぽい色をした、巨大な龍だった。

 

 

「何だァ、これは?」

 

 

 その龍の状態は睡眠となっており、触っても、ちょっと殴ってみても反応がない。

 

 

「ネジャロさん、思いっきり顔を叩いてみてください」

 

「お、おう」

 

 

 大きな顔に、平手打ちが炸裂する。

 

 

 すると、さすがに痛かったのか、龍に動きがあった。

 

 ゆっくりと、額の中央の大きな一つ目(・・・・・・)が開かれる。

 

 

「……いきなり何をする、小さき者よ」

 

 

 その言葉は、いつもトワたちが話している言葉とは違うものだった。

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ