SS 生き別れた親子の再会
中央ギルド、マスターのノゾミ・アウルムと、トワが助けた内の一人、エルフのエルフィエンドの会話回です。(*´꒳`*)
「ノゾミ、本当に、本当にごめんね」
「もういいんですよ、母さん。
きちんと生きていますから」
数百年の時を経て、再開した親子。
そんな二人の邪魔はすまいと、トワたちはその場にいない。
「ねぇ、ノゾミ。
あの時、何があった?」
「魔物に襲われていたと言われましたが、よく覚えていないんです……」
「そうか……」
ノゾミがまだ産まれたばかりの頃、エルフィエンドとの逃亡生活のさなか、彼女は動物を狩るために、少しだけ目を離した。
その時間はわずか数秒のことだったが、戻ってきた時には、ノゾミの姿はなかった。
「その後は、ここアウロ・プラーラの冒険者に助けられて、私自身も冒険者になったんです。
それで、今やこの国の長ですよ、長」
我が子の成長に、エルフィエンドは嬉しそうに頷く。
「父さんも、しばらくはこの国にいて、色々なものを作っていたんですよ。
その間、母さんは何を?」
「私の方は、貴方を探し回っていたよ。
結局見つけられずに、戦争で故郷を失った人々の集落を作って、そこで暮らしていたけどね。
この耳は、そんな大罪を犯したことへの戒めだ」
「ッ……」
エルフィエンドは横髪を持ち上げ、人族のように短くなった耳を見せる。
「私は覚えていませんが、そんなに酷い戦争だったんですね……」
「ああ。あれは最悪だよ。
何が原因で起きたのか、それすらも分からないというのに、憎しみ合い続け、殺して殺される。
それの最後は、周りを巻き込んだ上に、こうしてほぼ絶滅という訳だ。実にくだらない……」
エルフとドワーフの戦争は、人々の生活領域にも広がり、罪なき者の命までも奪っていた。
エルフィエンドは、そんな人々のために住む場所を作り、奪ってしまった親の代わりに子を育て、罪滅ぼしをしてきたのだ。
「でもまさか、馬でほんの二月のところにいたなんてね。
外界と離れすぎてて全然気が付かなかったよ」
「そうですね。こちらも、そんな山に人が住んでいるなんて報告は、受けたことがありませんでした」
お互い見つめ合い、フッと笑う。
「さぁ、こんなしみったれた話は終わりにして、これからの事を話し合いましょう。
母さんとほかの人々は、これからどうするつもりですか?」
「その前に、私たちを助けてくれたのは、あの真っ白な女の子、トワさん?なんだろう?
だったら、改めてお礼を言いたいんだけど、もしかして女神様だったりする?」
アランが、空間魔法がどうとか言っていたことを思い出し、その事も告げる。
「フッフフ、女神様ですか。
まぁ、あながち間違ってはいないかもしれませんね」
思わず笑ってしまったノゾミは、トワたちの赤金級昇格祝いの時のことを思い出していた。
「私が知っている限りでは、トワさんの種族は人族。
ですが、神話の魔法を使いこなし、魔力は無尽蔵らしいです。
どう考えても、人族の器ではないですね」
「なんだ、それは。
ファルマ様が人の姿に化けているとかではないのか?」
「それはないと思いますよ。
ファルマ様は創造神。
空間を操ることは出来ても、時間を操ることまでは出来ないはずですから」
再会を喜びあった親子の話は、トワの正体に移り、そして、トワたちのパーティ〈永久の約束〉の活躍へと移っていった。
再会当初は、目に涙を浮かべていたエルフィエンドだったが、今は〈永久の約束〉の冒険譚に目を輝かせている。
「冒険者か。楽しそうだな。
もし許されるのなら、私もそんな生活をしてみたいものだ」
「それもこれも、皆でこれから決めていきましょう。
もうその戦争を覚えている人は、ほとんど生きていない。
母さんが育てたあの方々だって、知らないんですから」
何百年も前の戦争。
その罪滅ぼしとして、人々を育ててきた。
だが、それも終わりでいいのかもしれない。
そう言われ、エルフィエンドの心は少し軽くなる。
「私は、トワさんと少し話してきますね。
今回のことのお礼を、きちんとしておきたいので」
「なら、私も行こう」
エルフィエンドはベッドから起き上がろうとするが、少し前までほとんど瀕死だったのだ。
上手く力が入らず、立ち上がれない。
「こっちに来てもらいますから、母さんは寝ててください」
「そうさせてもらおうかな。
情けない姿でごめんね」
ノゾミは首を横に振り、エルフィエンドに毛布をかけ直す。
そして、トワたちの元へ向かって行った。