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4-1 異常な気候

第四章スタートです!

この章は、三章ほど長くなる予定はありませんが、どうなるかまだ未定です(ง •̀ω•́)ง✧

 

 アウロ・プラーラを出発した一行は、次なる目的地、ヴァルメリア帝国へと馬車を進めている。

 

 そんな旅が一月ほど続いた頃。

 

 

「ねぇみんな、これ、おかしくないかい?」

 

「そうですね。どんどん気温が下がっています」

 

 

 アウロ・プラーラ周辺の気候は冷涼だ。

 

 だが、それは近辺の山に住む氷龍がいるからであって、本来の気候では無い。

 

 

 一月ほど南下したことで、緯度としては、グレイス王国と同じような場所にいる。

 

 それならば、グレイス王国と同じくらいの温暖な気候でなければおかしい。

 

 それなのに、辺りは薄らと雪に覆われている。

 

 

「魔物も動物も殆どいませんね」

 

 

 一行には、トワの異空間倉庫(アイテムボックス)があるため、食料が尽きるのは当分先だが、普通(・・)であれば餓死してしまうだろう。

 

 たまに見る動物も、長い毛に覆われていて、肉はほんの少ししか付いていない。

 

 

 そんな気味の悪さが漂う地域を、馬車は進んでゆく。

 

 しかし、とうとう馬車では進めないほど雪が深くなった。

 

 

「仕方ないね。ここからは歩こうか」

 

 

 四人は馬車から降りて、異空間倉庫(アイテムボックス)にしまう。

 

 

「みんなも入りますか?

 私だけなら目視転移(ショートテレポート)で雪の上でも関係ないので」

 

「いや、トワにだけ面倒な役目は負わせたくないから。

 全員で行こう」

 

 

 というわけで、今や膝まである雪を掻き分けながら、ゆっくりと進んでゆく。

 

 夜、寝る時だけ転移(テレポート)でアウロ・プラーラの宿を借り、日中は雪道へと戻る。

 

 

 そんな生活がまた一月ほど経った頃。

 

 もはや、まともな道はなくなった。

 

 

 人の背よりも遥かに高く雪が降り積もり、吹雪で視界も最悪。

 

 おまけに、ひび割れた雪面、クレバスが深い闇を覗かせている。

 

 

 こんな中を歩く訳にもいかず、三人に異空間倉庫(アイテムボックス)に入ってもらい、目視転移(ショートテレポート)で進んでゆく。

 

 

 歩くよりかは大分速いが、吹雪のせいで目視できる範囲が五メートル程しかない。

 

 異界の護り(アナザーバリア)を展開し、凍てつくような寒さから身を守り、一面の雪原を進む。

 

 

 数日ほど経ち、雪の深さの規模も検討がつかなくなってきた頃、トワの空間把握(マップサーチ)で雪に閉ざされた洞窟を感じ取った。

 

 入口は辛うじて空いているものの、中の人々の状態は、衰弱や瀕死、既に死亡している者もいる。

 

 

 急ぎ、洞窟へと向かう。

 

 子供が這うことでようやく通り抜けられるような隙間を抜けると、人の生活の痕跡が見て取れる。

 

 

 洞窟内部は外ほどの寒さはないので、アランたちを外に出し、死にかけの人々の元へと向かった。

 

 

「これは、酷いな……」

 

 

 洞窟内の人々は痩せこけ、手足なんかは木の枝のように細くなっている。

 

 アランの回復魔法では助けられない状態と人数なため、一度全員をアウロ・プラーラへと連れてゆく。

 

 

 借りていた宿の一室へと戻り、受け入れの手続きのため、中央ギルドのマスター、ノゾミ・アウルムの元へと転移(テレポート)した。

 

 

「ノゾミさん、急患が大勢います。

 治癒術師と食事の手配をお願いします!」

 

「トワさん!?

 分かりました。中央ギルドの医務室へとお願いします」

 

 

 ノゾミの対処は早く、事情も聞かずに動き出してくれた。

 

 トワも、患者たちを医務室へと運び、ベルテと共に食事の準備をする。

 

 

「治癒術師、連れてきました。

 全員、患者たちの治療を!」

 

 

 アウロ・プラーラへと到着してから数分で、ベッドに並んだ患者たちが治療を受けるところまで持っていけた。

 

 ひとまずは安心だと、患者一人一人の情報を見る。

 

 

 50人ほどいる患者たちの状態は徐々に回復してゆく。

 

 そして種族は、一人を除き人族だ。

 

 その一人は、既に滅んだはずの種族だった。

 

 

 ――エルフ!?でも、耳は長くないけど……あっ

 

 

 人族の中のたった一人の異種族。

 

 滅んだはずのエルフの女性の耳は、傷は疾うに塞がってはいるものの、途中で切り取られていた。

 

 ――これは、種族を隠して生きてきたのかな?

 

 だとしたら、まだ言わない方がいいか。

 

 

 エルフとドワーフの唯一の生き残りだった、ノゾミにだけは話しておくべきかと考えたが、それも辞めておいた。

 

 本人が起きてから確認すればいいと思ったからだ。

 

 

 患者たちの容態を確認し終えたところで、ギルドマスター室へと呼ばれた。

 

 あとの治療はみんなに任せ、ノゾミの元へと行く。

 

 

「患者たちの受け入れと治療、本当にありがとうございます」

 

「いえ、それは構いませんよ。

 貴方に恩も売れましたからね」

 

 

 ――あ……そんなことまで考えてなかった。

 

 

 トワは、外交だとか、人と人との付き合いというものはあまり得意では無い。

 

 あること(・・・・)への対処のために選んだ道だが、失敗だったかもしれない。

 

 

「ですが、トワさんなら時間魔法で彼らを救えたでしょうに」

 

 

 そう。トワが懸念したあること(・・・・)というのは時間の巻き戻しだ。

 

 確かに、アウロ・プラーラや一部のグレイス王国民には、トワの魔法が知られている。

 

 ただし、具体的にどんなことが出来るのかまでは、多くの人には教えていない。

 

 時間の巻き戻しもそのうちの一つだ。

 

 

「そうですね。巻き戻してしまえば簡単に助けられたでしょう。

 でも、それは人の域から外れすぎているんです。

 何でもかんでも頼られるのは困りますから」

 

「なるほど。寿命や死までも克服できる力ですからね。

 確かに人の域ではない。

 まるで神の御業だ。

 理由は分かりました。では原因の方です。

 彼らは何ですか?」

 

 

 それについてはトワもよく分かっていない。

 

 行きがけでたまたま倒れている人を見つけたようなものなのだから。

 

 

「分かりません。

 洞窟の中で倒れていたとしか……」

 

「洞窟……たしか、ヴァルメリア帝国へと向かっていましたよね?

 その辺りの街道に、人が住めるような洞窟などなかったはずですが……」

 

「そうなんですか?

 でも、そもそも街道がどこかなんて、分からないほど深い雪でしたけど」

 

「え?そんなに深い雪が積もっているはずはないのですが……

 酷くても、手が埋まるほどのはずです」

 

 

 ――ん?それはどこの話をしてるんだ?

 

 

「えっと、私たちが向かったのはヴァルメリア帝国方面へ南下した道ですよ?

 あの規模は数年か、それ以上のものだと思うんですけど」

 

「はい、それは存じていますよ。

 ですが、二月ほど前に来た商人がそう言っておりましたので」

 

 

 ――二月?それじゃあ、あの雪は二ヶ月の間で降り積もった雪ってことなの?

 

 クレバスとかできてたんだけど……そんなにすぐできるものなのかな?

 

 

 その後も、ヴァルメリア帝国への街道について話し合ったが、今まで、一度たりともそんなに深い雪が積もったことは無いらしい。

 

 結局、原因について分かることはなく、助けた患者が目を覚ますのを待つことになった。

 

 

 

 

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