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SSアラン&ベルテストーリー2 愛する者

アランとベルテの視点です。

 

 時は、トワとネジャロが第三ダンジョンのボスへと挑戦している頃、ダンジョン組を抜けたアランと、元々待機組のベルテは商店を回っていた。

 

 

「グロウスパイダーの糸で作ったランタンか、便利だな。

 幾つか買っておこうと思うんだけど、どう思う?」

 

「そうですね。馬車に付ければ、暗い夜道でも多少安全になるかと思います」

 

 

 本日、二人が一緒にいることには意味がある。

 

 アランが、トワとベルテの関係が近すぎるのではないかと疑っているのだ。

 

 

 ベルテがトワにべったりになったのは、メラン侯爵の一件と、トワの発情期が原因なのだが、アランは詳しくは知らない。

 

 そのため、トワが部屋に引きこもっていた20日の間に何があったのか探ろうというわけだ。

 

 

 ――さてと、どうやって聞き出そうか……

 

 

「……ねえ、ベルテ。

 最近、トワと随分仲がいいように思えるんだけど、何かあった?」

 

「……いえ、特に何もありませんが。

 奴隷と主人の仲がいいのは良い事ではありませんか?」

 

 

 ――私がお嬢様とお付き合いしていることは、知られてはいけませんよね。

 

 きっと、ご主人様には内緒で、ということなのでしょうから。

 

 

 別に、トワは付き合っているとは微塵も思っていないのだが、勘違いは絶賛進行中である。

 

 

「確かに、仲がいいのは良いことだと、僕も思うよ。

 でも、君たちの距離感が、主従のそれとは違う気がするんだけど」

 

 

 ここ最近のベルテは、人前でトワの手を握ったり、抱きしめたりと、アランから見て普通には見えなかった。

 

 

「いえ、お嬢様の本当の力と優しさを目の当たりにしたので、一生、傍でお仕えすると誓っただけですよ」

 

「そう、なんだ。

 まあ、トワが僕たちに優しいっていうのは間違ってないね。

 ただ、少し怖いところもあるんだよね」

 

 

 怖いところ?と首を傾げるベルテに説明する。

 

 語られるのは、第一ギルドでの出来事。

 

 

「トワを見た茶髪の貴族っぽい男が、僕にいちゃもんをつけて、いきなり斬りかかってきてね。

 一応守りはしたんだけど、突然の事で上手く捌けなくて、腿に剣を受けてしまったんだ。

 それを見たトワが怒って、その男の腕を切り飛ばしたって言う話さ。

 そんなに深い傷じゃなかったから、何もそこまでする必要はなかったんだけど……」

 

「茶髪の貴族っぽい男……」

 

 

 そう呟くベルテには、思い当たる節があった。

 

 ――私を、剣で刺し殺した男。

 

 それは確か、茶髪の貴族服を着た男だった。

 

 

「お嬢様が私の責任と言っていたのはそういう……」

 

「え?」

 

「あ、いえ。なんでもありません。

 ですが、その時のご主人様は、守りの体勢に入っていたから深い傷にならなかっただけで、一歩間違えれば死んでいたかもしれないんです。

 お嬢様の対処は正しかったと思いますよ」

 

 

 その言葉は、アランに言ったものでもあり、トワに言ったものでもあるのだ。

 

 

 私が一度死んだのは、貴方のせいではありません、と。

 

 

「そう、なのかな。

 だとしたら、傷を治してくれたお礼、言いそびれちゃったな」

 

 

 初めは、トワとベルテの関係を問い質そうと思ってのことだったが、いつの間にか、話がズレていた。

 

 そして、ベルテの言葉で、あの時のトワの行動にも納得してしまっている。

 

 

 ただ一つ問題なのは、今のベルテはトワを愛しているが、同時に、狂信している。

 

 まず間違いなく、トワがどんな行いをしようとも、正当性を主張し続けるだろう。

 

 依存しているとも言える。

 

 

 幸い、その事が悟られることも無く、アランが本当に聞こうと思っていたことも有耶無耶になってしまった。

 

 その後は、二人の関係を特に聞かれるわけでもなく、昼食を摂り、幾つか魔物の素材を買い込んで、別行動となった。

 

 

 ベルテは宿へと戻り、服を洗ったり、靴の汚れを落としたりといつもの仕事をこなす。

 

 アランは引き続き商店街を巡り、商材に使えそうなものを探す。

 

 

 そんな時、トワがいきなり転移(テレポート)で現れ、アランは宿へと連れ去られた。

 

 

 そこで、第一ギルドで男を退け、傷を治してくれたことのお礼と、遅くなってしまったことへの謝罪を口にする。

 

 トワは、今更そんなこと気にしなくていいと軽い感じで受け流した。

 

 

 そして、蟠りが無くなった二人の後ろで、ベルテは薄く微笑んでいた。

 

 

 

 

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