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3-16 ドワーフのサンタクロース!?

 

 〈月光の導き〉が挑んで勝てなかった魔物に対し、橙銀級二人で挑みに行ったパーティ。

 

 聞いた容姿は間違うはずがない、すごい勢いでランクアップしているパーティ、〈永久の約束〉だ。

 

 

 それでも、橙銀級になりたてのルーキー。

 

 きっと今頃は、第三ダンジョンの最下層でボロボロになっていると、嫌な想像をしていたのだが……

 

 

「え?君たち、今どこから?

 いきなり現れたように見えたんだけど。

 俺の目、おかしくなったか?」

 

「あ、どうも。ボス前以来ですね。

 まぁそれは、そのうち分かりますよ。それで、私がなにか?」

 

「い、いえ。無事で何よりです。

 ですが、橙銀級になったからといって、実力を過信してはいけませんよ」

 

 

 いきなり怒られたトワは、ネジャロの方を向き、どゆこと?と確認するが、さあ?と返されてしまった。

 

 

「まあいっか。

 えっと、第三のボスを討伐したにはしたんですけど、ちょっと問題がありまして……」

 

「討伐の確認ですね。

 魔石を砕いてしまいましたか?それとも素材を、ん?第三のボス?」

 

「はい。でっかい魔石を出すので、ちょっと人を退けて貰っていいですか?」

 

 

 信じられないと言った顔の受付嬢を説得し、広場に、ブラキティラノの魔石を出せるだけのスペースを確保してもらった。

 

 いきなり交通整理じみたことが始まり、何事かと冒険者たちがわらわらと集まってくる。

 

 

「えっと、トワ様。一体魔石はどこに?」

 

「今から出しますから、離れててください」

 

「え、出すってどう」

 

 

 質問を飛ばしてくる受付嬢がネジャロに連れ去られて行った。

 

 ――めっちゃ見られてるけど、もう隠す必要ないもんね

 

 

 人でドーナツ状になった広場の中央で異空間倉庫(アイテムボックス)を開き、巨大な魔石を取り出した。

 

 その瞬間、どよめきが起こる。

 

 

「なッ、今どっから出した!?」

 

「てか、なんだよ、この巨大な魔石は!」

 

「待ってくれ、何が起きた?俺、瞬きしちまったよ」

 

 

 人々から様々な憶測が飛び交っている中、空間魔法か?という声がかすかに聞こえた。

 

 ――正解だ、どっかの誰かさん。

 

 

「えっと、これはどういうこと、なんでしょうか?」

 

「空間魔法で、異空間にしまっていたものを出したんですよ。もう秘密にする必要がないでしょうから」

 

 

 そう言って、受付嬢に身分証を明かす。

 

 

「空間魔法に、時間魔法まで!?

 え、魔力量の色は?なんで!?」

 

 

 ――はぁー、秘密を明かすのって気持ちいいわー。

 

 やっと肩の荷がおりた感じー……

 

 

「そうそう、第三のボス。

 私とネジャロさんで倒したんですけど、私が魔法を解除すると復活しちゃうんですよね」

 

 

 と、一瞬だけ止めている時間を進めてみる。

 

 

「うわッ、なんだこれ!?」

 

 

 肉が再生され、ギルド内がわーわーと大騒ぎになりかけたので、すぐさま切り落とす。 

 

 

「とまぁ、こんな感じで」

 

 

 管理はギルドに任せると伝え、早速、魔石の鑑定をしてもらった。

 

 

「間違いない。第三のボスじゃ。

 ただ、種族がなんなのか、さっぱりわからん」

 

 

 本職の鑑定士なら分かるかと思ったが、トワと同じように、種族がなんなのかまでは分からなかった。

 

 

「凄いな君たちは。

 あの化け物を倒したこともそうだが、神話の魔法が使えるなんてな。

 ボス前で、この国最強とか言ってしまった自分を殴りたい気分だ」

 

 

 中央ギルドのマスターを呼ぶとのことで待たされている間、〈月光の導き〉の方たちと話をしていた。

 

 剣士、魔術師、拳闘士、治癒術師を四人パーティで、みんないい人たちだ。

 

 

 しばらく談笑をしていると、一目で中央ギルドマスターと分かるような、豪華な服を着た、それでいて強そうな男性がやってきた。

 

 

「あなたがた二人が〈永久の約束〉ですね。

 はじめまして。中央ギルド、マスターのノゾミ・アウルムです。お見知り置きを」

 

 

 ――ノゾミ!?やっぱり元日本人?

 

 

「はじめまして。

 私はトワ・アルヴロット。こっちは仲間のネジャロです。

 つかぬ事をお聞きしますが、この言葉に聞き覚えはありませんか?『ノゾミさん』」

 

 

 最後だけ、日本語で話しかけてみる。

 

 

「その言葉、私の父が話していたものです!

 なぜ、それを」

 

 

 ――日本人はお父さんの方だったか。

 

 てことは、浴場の造りとか、ドライヤーとかを作ったのもお父さんか。

 

 

「もしかしたら、あなたのお父さんと関わりがあるのかもしれません。

 良ければ、ご両親のこと聞かせて貰えませんか?」

 

「え、ええ。構いません」

 

 

 少し長い話だったので要約すると、

 

 ノゾミさんの父親はドワーフ。母親がエルフという、とても珍しい組み合わせのハーフだった。

 

 父親はドワーフにしては若くして死に、母親は現在どこにいるかも、生きているかさえも分からないと言う。

 

 

 ノゾミさんがまだ小さい頃、赤と白の服を着たお父さんが、空飛ぶそりに乗り、世界中の子供たちに贈り物をして回ったらしい。

 

 そして、その行いは〈くりすます〉として、現在も残っているそうだ。

 

 

 ちなみに、浴場とかで見る日本っぽいものを作ったのもお父さんだそうだ。

 

 

 ――ドワーフのサンタクロースか。面白いことをしていたんだなー。

 

 

「ですが、ドワーフとエルフは戦争で殺し合い、既に滅んでいると思われます」

 

 

 ――ファンタジー筆頭種族を見ないのは、戦争で殺しあっちゃったからなのか。

 

 そこまで仲が悪い印象、ないんだけどな。

 

 

 と、ノゾミ・アウルムさんの話は終わり、世界でただ一人かもしれないエルフとドワーフの生き残りだった。

 

 

「だいぶ話が逸れましたね。

 第三ダンジョンのボス討伐の件でここに来たのですが。申し訳ありませんね」

 

 

 話を脱線させた本人が謝られてしまった。

 

 こちらこそ申し訳ない。

 

 

「さて、まずはボス討伐おめでとうございます。

 我が国トップのパーティ、〈月光の導き〉ですら倒しえなかった存在を討伐したとの事で、協議の結果、〈永久の約束〉の御二方を赤金級とさせて頂きます」

 

 

 白月級までは到達せず、少し残念だったが、普通は橙銀級から赤金級までは数年かかるとの事。

 

 異例中の異例のようだ。

 

 

「それと、先程ギルドの職員から報告を受けましたが、どうやら神話の魔法を使える上に、魔力量が測定不能だと。

 さらに、今までは実力を隠していたとも」

 

「はい、その通りです」

 

「ふむ。いくら我が国が中立国家だとしても、他国の介入を完全に止めることは出来ません。

 ですが、赤金級ともなれば、王族であろうとも簡単には手出しできない、と。

 賢明な判断でしたね」

 

「予想通りだったな、お嬢!」

 

 

 ネジャロが言ったように、トワの予想通り、出来れば白月級まで行って王族と対等まで持っていきたがったが、まあいいだろう。

 

 

「では、あの魔石をどうするかなのですが、我々としても対処法が分かりません。

 トワさんの魔法はいつ切れるのでしょうか?」

 

「私が意図的に解除するか、外から破壊されるなどがなければ切れませんよ」

 

「永遠に続くのですか!

 神話の魔法は素晴らしいですね」

 

 

 正確には、トワが永遠に発動し続けているから、なのだが。

 

 

「でしたら、中央ギルドの方で展示したいのですが、正直に言って、価値が計り知れません。

 ですので、白金貨100枚で如何でしょうか?」

 

「100!?すっげぇーな、おい」

 

 

 価値にしてゴブリンキング100体分。

 

 多いのか少ないのか、よく分からないが、一般人が持つお金の量ではないのは確かだろう。

 

 

「私はそれで構いません。ネジャロさんは?」

 

「オレはお嬢の決定に従うぜ」

 

 

 ということで、トワが仮称していた〈ブラキティラノ〉という名前が付けられ、中央ギルドで厳重な警備の元、展示されることになった。

 

 

「最後にですね、今回の件とは関係ないのですが、あなた方から届けていただいた剣とロケット。

 その持ち主から、手紙を預かっています」

 

 

 二枚の封筒が机の上に出される。

 

 一枚は、アウロ・プラーラに来る途中に、盗賊から取り返した剣とロケットに刻まれていた紋章と同じ封蝋が。

 

 もう一枚には封蝋がなく、紐で留められているだけだ。

 

 

 トワは、封蝋が付いている方から開封し、中の手紙を読む。

 

 

 長ったらしい前置きをすっ飛ばし、要件だけ読むと、

 

 主人の形見を取り返してくれたお礼をしたいから、ヴァルメリア帝国によった際は、是非ロセウス子爵家に来てねというものだ。

 

 

 次は、封蝋がなく、紐で留められている方を読む。

 

 こちらは前置きもなく、騎士団に入れてやるからヴァルメリア帝国に来いとの事だ。

 

 

 ヴァルメリア帝国の騎士団。

 

 あれだ、第三ダンジョンで壊滅しかけていたところを助けてやったやつだ。

 

 

 ロセウス子爵家も、めんどくさい騎士団も偶然ヴァルメリア帝国だった。

 

 

「ロセウス子爵家の手紙が私のところに来るのは分かりますが、こっちの封蝋が無い方は、なぜ?」

 

「容姿を伝えて行かれましたから。

 ほら、間違えようがないでしょう」

 

 

 ――……ああー、確かに。

 

 

 次の目的地は決まっていないため、ヴァルメリア帝国を候補に入れたが、騎士団の件で面倒くさそうだ。

 

 とりあえず、アランに決めてもらおう。

 

 

「さて、全ての要件が終わりましたね。

 この後は、中央ギルド主催でお二人の赤金級昇格祝いの宴会を開く予定ですが、如何しますか?」

 

 

 ――宴会!美味しいご飯!

 

 ひとまず面倒ごとは置いとこう!

 

 

「同行者に確認を取ってきます!」

 

 

 アランとベルテを宴会に誘うため、転移(テレポート)で宿へと戻った。

 

 

 

じんぐるべー、じんぐるべー

〇( '-' 〇)スズチャン

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