3-14 巨獣ブラキティラノ?戦 前編
登場する魔物を考えるのが難しいです。
一番初めにファンタジーを考えた人は凄いですね(*゜Д゜艸)
「二人ともおはよう」
「おはようございます。アラン、寝癖ついてますよー。
ネジャロさん、さっさと朝食食べちゃってください。
第三ダンジョンのボス、見に行きますよ!」
ダンジョン組は本日、アウロ・プラーラ最強クラスのボスを偵察しに行くのだ。
「おお!ついに第三のボスか!
どんなやつだろうな。楽しみだ!」
ネジャロは両手にパンと肉を掴み、ガツガツと胃袋に押し込んでいる。
「ネジャロ。落ち着いて食べないと詰まらせるよ」
「大丈夫、大ゴホッ……ゲホッ、ゴホッ……」
「あーあー言わんこちゃちゃない」
先行きが不安だ。
◇◆◇
「よしッ!準備完了だ!」
準備と言っても、ネジャロがシュヴァルツを持つだけなのだが。
「ネジャロ。しっかりお嬢様をお守りするんですよ」
「いや、どっちかてーと、俺が守られる側な気がするんだが……」
「まぁ、いざとなったら転移で逃げてこられるでしょ。大丈夫だと思うよ」
そもそも、魔物たちは触れることさえできないだろうから、無用な心配ではあるのだが、誰からも心配されないよりはよっぽどいい。
「それじゃあ行ってきます」
宿の部屋から、第三ダンジョン内部へと転移した。
到着した先は、トワが到達したことのある中層付近。
ここからは最下層まで、徒歩での移動となる。
相変わらず、第三ダンジョンは高難易度すぎて人がいない。
おかけで、人目を気にせず魔法をぶっぱできるのは楽でいい。
「あと少しで最下層です。初見殺し的なことをされるかもしれないので、先行して見てきます」
「おう、気をつけろよ」
さすがに第一のゴブリンキング戦の時とは、空気が違う。
最下層の広間前に着いたトワは、通路の影からそっと覗き見る。
「え、テント?」
誰もいないと思っていた第三ダンジョンの、それもボス前に人の痕跡があった。
ネジャロを呼び、広間に設置されているテントへと近づく。
「……誰もいない」
――ボス討伐に来て、全滅したのかな?
何か、身元がわかるものでもないかとテント内を探ろうとした時、
「おい、お嬢。人が来たぜ」
ボス部屋へと続くであろう通路から、四人の男女が現れた。
「君たちは、もしかしてボス討伐にきたパーティか?」
先頭を歩く、重鎧を着た剣士が聞いてきた。
兜が外され、剣士の顔が見えるが、疲労の色が濃い。
というか、パーティ全員、とても疲れているように見える。
「そうですけど。もしかして、あなたたちが倒しちゃいましたか?」
――だとしたら、次のボスが生まれるまで、待たなきゃいけないんだけど……
「まさか。あれは倒せないと踏んで、帰るところだよ」
――お!ラッキー!なら、さっさと頂いちゃおうかな
先客のパーティの様子を見るに、大した怪我はしていない。
なら、様子見ではなく、討伐にシフトチェンジだ。
「じゃあ、私たちがそのボス貰いますね」
「聞いていたのか?あれは倒せないよ」
「え?倒せないってなぜです?」
「俺たちは、この国最強だ。
その攻撃力を持ってしても、魔石に傷をつけるくらいしかできなかった。
その傷も一瞬で再生されたがな」
「それは、あなたたちが弱かっただけでは?ってそれは……」
剣士の男が、ネックレスのようなものを取り出して見せた。
その先には、プレートが付いていて、赤色をしている。
「赤のプレートってことは、〈月光の導き〉の方たちですか?」
「ああ、だから言っただろ。この国最強だとな。
俺たちは、一ヶ月も前からボスと戦ってきた。
それで無理だと判断したから帰るんだ。どうだ、ヤバそうだろ」
――街にいないと思ってたけど、一ヶ月間もこんなところにいたら、見つけられるわけないね。
「そうですねー。じゃあ、ギルドにはこう報告してください。
第三のボスは、俺たちでも無理だった。あれを倒せるのは、赤金級以上の実力者だけだって」
「……まあ、元々そんな感じで報告するつもりだが、まさか挑む気か?
だとしたら、様子見だけにしておけ。
幸い奴の動きは遅い。だが、一発でもまともに喰らえば間違いなく即死だ」
「分かりました。忠告はしっかり受け取りました」
「ああ、それじゃあ俺たちは帰るよ。
君たちも気をつけて」
「可愛いお嬢ちゃん、またね〜」
誰がどう見ても強そうに見えないトワだが、一言も侮辱的なことは言われなかった。
胸に付けている橙銀級のプレートがあるからだろうが、見た目だけで決めつけるような性格ではないようだ。
「なかなかいい人たちでしたね。仲良くなれるかもしれません」
「ああ。それに、あの剣士は強いな。
力は俺の方が強いだろうが、あんな重鎧を着ていて、全然隙がなかった」
隙とか言われても、トワがしているのは蹂躙で、近接戦闘に慣れていないから全く分からなかった。
「とりあえず、行きましょうか」
〈月光の導き〉たちが出てきた通路へと進む。
段々と広くなってゆく通路は十分程で終わり、壁が見えないほど広い空間に出た。
「とんでもなく広いな」
「ボスは、間違いなくあれですね」
二人の視線の先に、四本足の巨大という言葉では生ぬるい程の魔物がいた。
――なにあれ?種族が分からない。
トワの空間魔法は、見たものの詳しい情報まで分かる。
ダンジョンの最下層は、外から見ることは出来ないが、内部に入り、直接見さえすれば、ゴブリンキングの情報も読み取れた。
直視してもなんの情報も得られないのは、今回が初めてのことだ。
「ネジャロさん。気をつけてください。
あいつ、私が見てもなんにも分かりません」
「まじか。まあ何にせよ、攻撃を食らえば終わりなのは間違いない。
行くぞ!お嬢!」
二人は戦闘態勢に入る。
敵は、未だかつて無いほどの巨体。
全長100メートルはあるかという体に、まるでティラノサウルスのような頭を持つ魔物。
一言で表すなら、馬鹿でかいブラキオサウルスとティラノサウルスのキメラ。
ネジャロに時間加速をかけ、トワ自身も目視転移で、攻撃魔法の射程距離まで詰める。
「まずは首!」
こちらを敵とも見ていない仮称ブラキティラノの首を、空間切断で切り飛ばす。
ブラキティラノは、地震のような悲鳴を上げ、しっぽを振るってくる。
だが、いくら巨体だろうと、異界の護りは突破できず、空を切る。
「硬すぎ!」
空間切断は首の骨を完全に切断するには至らず、その傷も徐々に修復され始めている。
ネジャロも、四本ある足の筋をシュヴァルツで切りつけるが、剣のリーチが足りず、巨体にとって浅い傷にしかならなかった。
「ハッハ、ヤベーなこりゃ。
さっきの剣士が言ってたことは本当らしい」
さすがアウロ・プラーラ最強格のボス。
とんでもなく強くなり、シュヴァルツを持ったネジャロの一撃を軽傷で済ませてくるのは、なかなか予想外だ。
でも、
「もう一度、首を切れば終わり!」
先程空間切断を放った部位を、もう一度切り裂き、首を落とす。
首が落ちた衝撃で地面が揺れ、天井からパラパラとホコリが落ちてくる。
「ま!最強だろうとなんだろうと、私にかかればこんなもんですよ!」
デカすぎて持ち運べないため、魔石を抜き取り、体は異空間倉庫に保管しようと近寄る。
「お嬢、落とした首がねぇぞ!」
――え……本当だ。さっきまであそこにあったのに。
ズズズ……と嫌な予感がして、倒したはずのブラキティラノに向き直る。
トワの頭上に巨大な影が落ち、まさに踏みつけようとする瞬間だ。
――ヤバッ!
急いで目視転移を発動させるが、大きすぎて、一回では踏みつけの範囲から出られない。
そのまま逃れることはできず、巨大な足はトワを踏み潰す。
瞬間に空間が歪み、着くはずの地面が無くなったことで、ブラキティラノは体勢を崩し、横転する。
「今のは、ホントに、死ぬかと思った!」
踏みつけは、明らかにトワの体積を超えていたが、そんなことはお構い無しに異界の護りに呑まれた。
「あんま油断しないでくれよ。
ご主人とベルテに怒られちまう」
「気をつけます……」
が、どうやらもう踏みつけはできなそうだ。
首は半分ほどまで再生されたが、まだ頭はなく、起き上がろうにも、今まで倒れたことがなかったのか、モゾモゾではなくドガガガと暴れているだけだ。
ネジャロに首を再生できないように攻撃し続けてもらい、トワは体を爆散させ切り刻み、とにかくボロボロにしてゆく。
しばらく攻撃し続けていると、胸?の辺りに、十メートルはあるかという、これまた巨大な魔石を発見した。
トワは魔石に触れ、異空間倉庫に回収する。
すると、無尽蔵に再生を続けていた巨体は、溶けるようにして無くなり、第三ダンジョンのボス、仮称ブラキティラノは消え去った。
「あー、終わりか?
素材も何も残っちゃいねぇが……」
「いえ、魔石を見つけたので、抜き取りました。
ただ、素材は貰えないみたいですね」
さっきまで響いていた地響きのような音は無くなり、今は、シーンとした静寂に包まれている。
「……帰りましょうか」
「……そうだな」
なんだか釈然としないが、倒したことに変わりないのだ。
どんな報酬が貰えるか楽しみにギルドへ帰ろうとする。
だが、ふとある考えがよぎった。
「ねぇ、ネジャロさん。
こういう、再生する系の敵って核から再生しますよね?」
「そうなのか?オレはよく知らんが」
日本で色々な作品に触れてきたトワだからか、なんとなく嫌な予感がしたので、異空間倉庫からブラキティラノの魔石を出してみる。
途端、一瞬で内臓、骨、筋肉と生成され始め、五秒もかからないうちに傷一つ無い、完全な状態で蘇ってしまった。
「おおう、まじか」
「どうするよ、こりゃ」
第二ラウンド開始だ。